名古屋大学大学院理学研究科の 中野 覚矢 博士後期課程学生、立原 研悟 准教授、玉城 磨生 博士前期課程学生(当時)の研究グループは、小マゼラン銀河の大質量星が銀河を引き裂くように動くことを発見しました。
小マゼラン銀河は大マゼラン銀河とともに天の川銀河の隣に存在する小さな銀河です。地球から最も近い銀河の一つなので、銀河全体の星を一つ一つ、その動きまで詳細に観測できます。本研究では、小マゼラン銀河の数百万個の星の色と明るさの情報を用いて約 7,000 個の大質量星を発見し、その分布を世界で初めて明らかにしました。
さらに、大質量星は小マゼラン銀河の左右で逆向きに動いていることが分かりました。これは、大マゼラン銀河に近づく星と遠ざかる星がいることを示し、小マゼラン銀河が大マゼラン銀河によって破壊されている描像に一致します。また、小マゼラン銀河の内部で、大質量星は回転(公転)していません。星が銀河を回っていないとすると、これまで推定されていた小マゼラン銀河の質量が間違っている可能性があります。銀河の質量は、運動の推定にも影響を与えるため、小マゼラン銀河、大マゼラン銀河、天の川銀河の3銀河は、これまで考えられていた運動とは異なる動きをしていたかもしれません。
本研究成果は、米国の学術雑誌 『The Astrophysical Journal Supplement Series』 に2025年4月11日午前0時(日本時間)付で掲載されます。
本研究の3分間の動画紹介 (Youtube):
・ 天の川銀河の隣にある小マゼラン銀河で、太陽より8倍以上重い大質量星注1)の一覧表を作成し、大質量星の分布を世界で初めて明らかにした。
・ 大質量星は銀河を引き裂くように動いており、隣り合う大マゼラン銀河によって小マゼラン銀河が破壊される過程を描写している。
・ この結果は小マゼラン銀河における銀河回転の不在を意味し、回転を仮定して計算された小マゼラン銀河の質量や、質量から推定される銀河の動きに修正を迫るもの。
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注1) 大質量星:
太陽の8倍以上の質量を持つ星。死に際に超新星爆発と呼ばれる爆発を起こし、周辺の環境に大きな影響を与える。大質量星は個数が少なく、その形成メカニズムにも謎が多い。全世界の多くの研究者が大質量星の形成メカニズムを明らかにしようと研究を進めている。
雑誌名: The Astrophysical Journal Supplement Series
論文タイトル: Evidence of Galactic Interaction in the Small Magellanic Cloud Probed by Gaia Selected Massive Star Candidates
著者: NAKANO Satoya, TACHIHARA Kengo, TAMASHIRO Mao
DOI: 10.3847/1538-4365/adb8de
大学院理学研究科 立原 研悟 准教授,主著者:中野 覚矢(博士後期課程学生)