名古屋大学大学院理学研究科の黄爍(ファン・ショウ)研究員 (兼 国立天文台研究員)、 梅畑 豪紀 特任助教(高等研究院 YLC教員)、田村 陽一 教授らの研究グループは、ALMA望遠鏡を用いて、111億年前の宇宙で見つかった棒渦巻(ぼううずまき)構造を持つモンスター銀河について、その星形成の元となるガスの分布と運動を詳細に捉えることに成功しました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡による観測から、初期の宇宙に存在したこの銀河が、現在の宇宙に存在する棒渦巻銀河と似通った姿でありながらも、実はその銀河の中ではガスが激しく吹き荒れ、一部のガスが銀河の中心に落ち込んで猛烈な星形成を起こしていることを明らかにしました。本研究結果は、天の川銀河に代表される棒渦巻銀河の成長と進化の歴史に新たな知見を与えてくれます。
本研究成果は、『Nature』に2025年5月22日付で掲載されました。
・111億年前の棒渦巻銀河について、アルマ望遠鏡注1)を用いてガスの分布と運動を詳細に観測した。
・棒構造の存在により、ガスが銀河の中心に供給されていることが示された。
・現在の宇宙に至る棒渦巻銀河の形成と進化を理解する手がかりとなる。
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注1):アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA)は、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設です。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾国家科学及技術委員会(NSTC)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宇宙科学研究院(KASI)によって分担されます。 アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同アルマ観測所(JAO)は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。
雑誌名:Nature
論文タイトル:Large gas inflow driven by a matured galactic bar in the early Universe
著者:Shuo Huang (黄爍、国立天文台/名古屋大学)、Ryohei Kawabe (川邊良平、国立天文台)、Hideki Umehata (梅畑豪紀、名古屋大学)、Kotaro Kohno (河野孝太郎、東京大学)、Yoichi Tamura (田村陽一、名古屋大学)、Toshiki Saito (斉藤俊貴、静岡大学)
DOI:10.1038/s41586-025-08914-2
大学院理学研究科 梅畑 豪紀 特任助教/田村 陽一 教授,主著者名:HUANG Shuo 研究員
https://www.a.phys.nagoya-u.ac.jp/jp/