・EBV が特定の人だけにがんを起こす仕組みを明らかにしました。
・たった1 種類のウイルスが多様ながんを発生させる理由を解明しました。
・このウイルスががんを起こす仕組みの理解が深まり、予防・治療法開発に貢献します。
名古屋市立大学大学院医学研究科ウイルス学分野の奥野友介(おくの ゆうすけ)教授、濱田太立(はまだ もとはる)講師、名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学の木村宏(きむら ひろし)教授、佐藤好隆(さとう よしたか)准教授らの国際共同研究グループは、世界各地から集めたEBV の遺伝情報(ゲノム)を解析し、このウイルスががんを引き起こす新たな仕組みを解明しました。本研究成果は、米国血液学会の科学誌『Blood』に掲載されます(米国時間2025 年6 月26 日付の電子版)。
EB ウイルス(EBV)は世界中のほとんどの人に生涯潜伏感染しているありふれたウイルスですが、ごく一部の感染者には様々ながんを引き起こします。本研究では、世界中の人から取得したEBV のゲノムを解析し、このウイルスが特定の人にだけがんを発症させる仕組みや、1 種類のウイルスが20 種類以上のがんに関わる仕組みなどを解明しました。本成果は、EBV が引き起こすがんの予防や治療法開発に役立ちます。
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EB ウイルス(EBV):エプスタイン・バーウイルスの略称。感染した人に風邪、あるいは伝染性単核球症(2 週間以上にわたって発熱等の症状が持続する感染症)などを引き起こす。一部の人にはがんを発生させる。慢性活動性EBV 病や多発性硬化症といった難病にも関与する。
ゲノム:生物やウイルスの遺伝情報。4 種類の塩基が連なって構成される。生物のゲノムはデオキシリボ核酸(DNA)からなるが、一部のウイルスのリボ核酸(RNA)をゲノムとして用いる。
Association of Epstein–Barr viral genomic alterations to human pathologies- EBV genomic variations contribute to human cancers -
(EB ウイルスのゲノム変異とヒト疾患の関連性:ウイルスゲノムの変異がヒトのがんに関与する)
DOI:https://doi.org/10.1182/blood.2024028055