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工学

2025.06.24

超伝導線材製造効率化に向けて 製造現場の"ものづくり"効率化へ大きく前進

【研究概要】

・超伝導注1)線材のデータ・モデル注2)駆動型製造に向けて、作製プロセスのモデル化に成功した。
・実験室での理想的な状況でなく、製造装置が変わる実際の製造現場でも対応可能な製造AI化手法を構築した。

 

名古屋大学大学院工学研究科の堀出 朋哉 准教授、吉田 隆 教授らの研究グループは、超伝導線材製造の効率化に向けて、製造装置が変わっても対応可能な現場指向型製造AIモデルを開発しました。
次世代エネルギーとして注目される核融合や、電動航空機、さらに医療現場で使われるMRIなどの開発に欠かせないのが、超伝導線材と呼ばれる材料です。こうした技術が広く実用化されるためには、この超伝導線材を大量に、安く作れるかが重要な課題となっています。しかし、超伝導線材に限らず材料の制御は非常に繊細で、長年にわたり製造現場では、熟練した技術者の「経験」や「勘」に頼って最適化したプロセスで生産が行われてきました。近年、こうしたスキルを人工知能(AI)に学ばせ、製造の効率を上げようという取り組みが進められています。ところが、同じ材料を作っていても、使っている製造装置や細かな調整の仕方が異なるため、AIによる一律の対応が難しいという課題がありました。
そこで本研究では、「製造装置は違っても、プロセスの現象は共通している」という点に着目しました。さまざまな製造装置から得られたデータを分析し、共通するプロセスの特徴を見つけ出すことに成功しました。
この成果をもとに、AIを活用した製造管理やプロセスの最適化がさらに進めば、超伝導線材だけでなく、さまざまな材料の製造がより効率的になり、日本のものづくりの競争力向上にもつながると期待されます。
 本研究成果は、2025年6月23日18時(日本時間)付でSpringer Nature社の国際科学誌『Communications Engineering』に掲載(オンライン)されます。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)超伝導: 
物質を冷却していくと突然電気抵抗がゼロになる現象。
注2)モデル:
入力データに対して出力データを求める計算やアルゴリズム。AIではデータを使って(学習して)モデルを作成するため、データが重要である。

 

【論文情報】

雑誌名:Communications Engineering
論文タイトル:Integrated Process-Property Modeling of YBa2Cu3O7 Superconducting Film for Data and Model Driven Process Design
著者:Tomoya Horide, Shin Okumura, Shunta Ito, Yutaka Yoshida
DOI: 10.1038/s44172-025-00434-1
URL: https://www.nature.com/articles/s44172-025-00434-1

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 堀出 朋哉 准教授

https://www.nuee.nagoya-u.ac.jp/index.html