農学
2025.09.29
葉や花をつくる細胞を可視化する免疫染色法を開発 3Dイメージングによる植物組織の理解、農業応用へ期待
・植物地上部の幹細胞組織である「茎頂メリステム」注1)におけるヒストン修飾注2)の空間的な分布を可視化できる手法を開発した。
・遺伝子発現の抑制に関与するヒストン修飾は、茎頂メリステムにおいて細胞ごとにパッチ状に存在していた。茎頂メリステムが葉をつくる状態から花をつくる状態へ転換すると、この抑制的なヒストン修飾の量がメリステム全体で増加することを明らかにした。
・これらのタンパク質等の修飾状態や、農業的に重要なタンパク質の立体的な分布の理解に基づいた植物を改良する技術の開発につながる。
名古屋大学大学院生命農学研究科の森下 友梨香 博士前期課程学生と生物機能開発利用研究センターの辻 寛之 教授らの研究グループは、横浜市立大学との共同研究で、植物の葉と花を分化させる幹細胞組織「茎頂メリステム」を対象に、組織構造を維持したまま、1細胞解像度で3Dイメージングする免疫染色法注3)を新たに開発しました。
このことにより、 これまでイメージングが困難だったタンパク質の修飾状態等の立体的な位置情報の取得が可能になりました。この手法を用い、茎頂メリステムにおけるヒストン修飾の組織空間的な分布を初めて解明しました。
本研究成果は、2025年9月14日付英国の科学雑誌「The Plant Journal」に掲載されました。
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注1)茎頂メリステム:植物地上部の全器官の起源となる幹細胞組織。葉をつくる状態から、花成ホルモンのフロリゲンによって花をつくる状態へ転換する。
注2)ヒストン修飾:核内のDNAが巻き付いているヒストンタンパク質に付加される化学修飾。メチル化やアセチル化、リン酸化などがあり、遺伝子発現の制御に関与している。
注3)免疫染色法:抗体を用いて、タンパク質やタンパク質の修飾状態などの局在を検出する手法。
雑誌名:The Plant Journal
論文タイトル:Whole-tissue 3D immunostaining of shoot apical meristems in rice at single-cell resolution
著者:Yurika Morishita, Ryosuke Takata, Asuka Higo, Aya Yoshida, Hiroyuki Tsuji
DOI:doi.org/10.1111/tpj.70470
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tpj.70470
生物機能開発利用研究センター 辻 寛之 教授, 主著者:森下 友梨香 (生命農学研究科 博士後期課程学生)