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生物学

2025.09.30

サカナもヒトの手足同様に鰭を支配する脊髄領域が太い ~魚類から四肢動物への進化の道筋に新たな視点~

【ポイント】

・四肢動物は四肢を支配している脊髄領域が太くなっている(脊髄膨大部)。

・サカナには脊髄膨大部はなく、四肢がないからだと思われてきた。

・詳細に調べた結果、サカナも鰭(ひれ)を支配する脊髄領域が太いことが明らかになった。


名古屋大学大学院生命農学研究科の山本 直之 教授、高岡 涼 博士前期課程学生(研究当時)、萩尾 華子 助教らの研究グループは、四肢動物(四つ足の動物)の前肢と後肢を支配している脊髄の領域が他よりも太くなっているのと同じように、魚の脊髄でも鰭を支配している領域が太くなっていることを新たに発見しました。

四肢動物には前肢と後肢があり、体幹と比べると筋肉の種類が多く皮膚感覚も鋭敏です。そのため、四肢の運動と感覚をつかさどる脊髄領域は他の脊髄領域より太くなっていて、頚膨大(前肢の支配)と腰膨大(後肢の支配)と呼ばれています。

一方、サカナには膨大部はなく、一般的にこれは四肢がないからだと思われてきました。しかし、左右対になっている胸鰭と腹鰭は四肢に相当する(相同)ので、詳しく調べることで膨大部の存在が明らかになる可能性があると考えました。

そこで、ゼブラフィッシュを対象に、鰭を支配している脊髄領域を明らかにした上で、太さの変動を脊髄全長にわたって組織切片を作成して調べました。その結果、前肢と後肢と相同の胸鰭と腹鰭を支配する脊髄領域が太くなっていることが明らかとなりました。さらに、対になっていない背鰭、臀鰭(しりびれ)、尾鰭を支配する脊髄領域も太くなっていることも明らかとなりました。

脊髄はもともとすべての鰭を支配する領域が太くなっていたのが、四肢動物では胸鰭と背鰭に相同な前肢と後肢だけしかないため、膨大部も2カ所のみ存在するようになったと考えられます。この発見は脊髄膨大部の存在意義とその進化に関して、これまでにない考え方を提供した点で画期的といえます。

本研究成果は、2025年9月29日付国際学術雑誌『Brain, Behavior and Evolution』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:Brain, Behavior and Evolution

論文タイトル:Identification of “spinal enlargements” correlating with paired and unpaired fins in zebrafish

著者:Ryo Takaoka, Hanako Hagio, Naoyuki Yamamoto*

*責任著者

DOI:10.1159/000548184                                     

URL:https://doi.org/10.1159/000548184

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 山本 直之 教授
https://fish-biology-nu.wixsite.com/fish-biology-nu