・2020年6~7月に発生した西之島の噴火で放出された火山灰が海流によって約130 km離れた小笠原諸島・聟島(むこじま)周辺に運ばれ、植物プランクトン増加につながった可能性を、衛星データの時系列解析と粒子追跡シミュレーションで示しました。
・貧栄養な小笠原諸島周辺海域でも、噴火由来の栄養が遠隔海域まで届き、生態系と海の生産力を広域的に押し上げ得ることを示唆します。
火山灰は鉄などの栄養物質を含んでおり、これが海に供給されると植物プランクトンの成長を促す可能性があります。
東北大学、名古屋大学、明治大学らの研究グループは、2020年6~7月に活発化した小笠原諸島・西之島の噴火が、約130 km離れた小笠原諸島・聟島周辺における植物プランクトンの増加に寄与した可能性を示しました。衛星データ(Aqua/MODIS・ひまわり8号)の時系列解析と、海流に基づく粒子追跡シミュレーションを組み合わせた結果、噴火で放出された火山灰が海流で北東側へ運ばれ、約6日後に聟島周辺へ到達したことが示唆されました。さらに、衛星クロロフィルa濃度(注1)(以下、Chl-a)のデータ等を解析した結果、この火山灰が海の栄養源としてはたらき、同海域で植物プランクトンが一時的に増加した可能性が判明しました。
本成果は、栄養が乏しい海域でも、噴火由来の栄養が遠隔海域の生産力に作用し得ることを示唆するもので、海洋生態系変動の理解に資する知見です。
研究成果は、2025年9月30日付で、国際誌Progress in Earth and Planetary Scienceにオンライン掲載されました。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
注1.衛星クロロフィルa濃度:海の色(可視光の反射)を人工衛星で観測し、植物プランクトンに含まれる色素クロロフィルaの濃度を推定した指標。一般に、値が高いほど植物プランクトン量が多い目安になる。
タイトル:Relation Between Eruption at Nishinoshima and Chlorophyll-a Concentration at Ogasawara Islands in 2020
著者: Rimpei Katada1, Shima Ariyoshi2, Hayate Ayuzawa3, Koseki Saito4*, Joji Ishizaka5 & Hironobu Iwabuchi4
1明治大学大学院農学研究科農学専攻、2早稲田大学大学院基幹理工学研究科機械科学・航空宇宙専攻、3名古屋大学大学院工学研究科機械システム工学専攻、4東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻、5名古屋大学宇宙地球環境研究所
*責任著者 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻 特任研究員 齋藤幸碩
掲載誌:Progress in Earth and Planetary Science
DOI:10.1186/s40645-025-00761-z
URL:https://doi.org/10.1186/s40645-025-00761-z
宇宙地球環境研究所 石坂 丞二 特任教授, 大学院工学研究科 鮎澤 颯 (研究当時:博士前期課程学生)
https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/