・45年以上にわたって、太陽型と反太陽型の自転を持つ恒星が存在することが理論的に示唆されてきた。
・これまでの観測では、太陽程度の質量、年齢の恒星では反太陽型の差動回転注1)は見つかってこなかった。
・スーパーコンピュータ「富岳」注2)による世界最大規模の数値シミュレーション注3)により、理論的にも反太陽型の自転は存在しない可能性が明らかになった。
・太陽のような恒星は、年齢とともに単調に磁気活動が弱くなっていくことが示唆される。
名古屋大学宇宙地球環境研究所の堀田 英之 教授と八田 良樹 研究員は、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた世界最大規模の恒星内部数値シミュレーションによって、太陽型の恒星では「反太陽型」差動回転、つまり極が速く赤道が遅い自転分布が実現しないことを発見しました。
太陽は緯度ごとに異なる周期をもつ自転、差動回転をしています。100億年にわたる太陽進化のある時点で赤道が速く極が遅い「太陽型」から「反太陽型」への差動回転分布の遷移があることが、これまでの数値シミュレーション研究により予想されていました。その一方で、観測的にはこの理論予想と整合しない結果もあり、課題となっていました。
研究グループは、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、恒星を54億点以上で分解した超大規模・超精密シミュレーションを実行しました。このシミュレーションでは、反太陽型差動回転は実現せず、これまで45年以上にわたって信じられてきた太陽型から反太陽型への遷移という予想が否定されました。新しいシミュレーションによって実現した小スケールの流れ場が、磁場と相互作用することによって、年老いた恒星のパラメタでも太陽型差動回転を維持することが分かりました。
恒星の差動回転分布は、フレアや太陽/恒星風などの恒星の磁気活動に直結します。太陽型の自転分布のまま太陽やその他の恒星が年老いていくことは、年齢とともに磁気活動が弱くなっていくことを示唆します。今後の太陽系外の惑星への恒星からの影響を考える上で重要なピースになることが期待されます。
本研究成果は、2026年2月25日19時(日本時間)付英国科学誌『Nature Astronomy』に掲載されました。
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注1)差動回転:
地球のように全ての緯度で同じ角速度を持つ剛体回転と違い、緯度ごとに違う角速度を持つ自転のことを表す。太陽は、プラズマから成り立っているために、このような現象が発生しうる。
注2)スーパーコンピュータ「富岳」:
2021年より共用を開始した我が国のフラグシップスーパーコンピュータ。2026年1月現在、日本では第1位の計算性能を保持している。
注3)数値シミュレーション:
紙と鉛筆では解けないような方程式を、数値的に解く手法。現象を支配する方程式を適切に見つけることができれば、観測が困難な恒星内部などの詳細な状況を理解することができる。太陽内部の複雑な乱流を計算する場合は、富岳などの大規模なスーパーコンピュータが必須となる。
雑誌名:Nature Astronomy
論文タイトル:The prevalence of solar-like differential rotation in slowly rotating solar-type stars
著者:H. Hotta and Y. Hatta
DOI: 10.1038/s41550-026-02793-x
URL: https://doi.org/10.1038/s41550-026-02793-x