・ナノグラフェンの次世代合成法「縮環π拡張(APEX)反応」の最新版反応。
・原料は官能基化されていない多環芳香族炭化水素注1)。
・これまで不可能だったL領域でのπ拡張反応。
名古屋大学大学院理学研究科の中田 奏未 氏(研究当時:博士前期課程学生)、伊藤 英人 准教授、理化学研究所の伊丹 健一郎 主任研究員(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM※)主任研究員 兼任)らは、多環芳香族炭化水素(PAH)の「L領域」と呼ばれる部位で選択的にベンゼン環注2)を拡張する新しい合成手法の開発に世界で初めて成功しました。本研究は、芳香族分子の特定部位を選択的に拡張する「APEX反応(Annulative π-Extension)」の未踏領域を切り拓くものであり、ナノグラフェンの精密合成における重要なブレークスルーとなります。
本研究成果は、2026年1月19 日に英国王立化学会誌「Chemical Science」のオンライン速報版に掲載され、また同誌の内部表紙を飾りました。
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注1)多環芳香族炭化水素
ナノグラフェン。ベンゼンやナフタレンよりも多くの芳香環をもつ芳香族炭化水素の総称であり、比較的小さな分子にはアントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、コロネンなどの慣用名がある。
注2)ベンゼン環:
炭素原子 6 個からなる正六角形の分子構造。そのベンゼン環に水素原子が 6 個ついた 化合物をベンゼンと呼ぶ。
雑誌名:Chemical Science
論文タイトル:L-region-selective annulative π-extension through dearomative activation of polycyclic aromatic hydrocarbons
(脱芳香族化を経た多環芳香族炭化水素のL領域選択的縮環π拡張反応)
著者:Kanami Nakata, Wataru Matsuoka, Hideto Ito*, Kenichiro Itami (中田 奏未・松岡 和・伊藤 英人*・伊丹 健一郎*)
下線は本学関係者、*は責任著者
DOI:10.1039/D5SC09309K
URL:https://doi.org/10.1039/D5SC09309K
※【WPI-ITbMについて】(http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp)
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、2012年に文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の1つとして採択されました。
ITbMでは、精緻にデザインされた機能をもつ分子(化合物)を用いて、これまで明らかにされていなかった生命機能の解明を目指すと共に、化学者と生物学者が隣り合わせになって融合研究をおこなうミックス・ラボ、ミックス・オフィスで化学と生物学の融合領域研究を展開しています。「ミックス」をキーワードに、人々の思考、生活、行動を劇的に変えるトランスフォーマティブ分子の発見と開発をおこない、社会が直面する環境問題、食料問題、医療技術の発展といったさまざまな課題に取り組んでいます。これまで10年間の取り組みが高く評価され、世界トップレベルの極めて高い研究水準と優れた研究環境にある研究拠点「WPIアカデミー」のメンバーに認定されました。
大学院理学研究科/トランスフォーマティブ生命分子研究所 伊藤 英人 准教授
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