・バイオものづくりへの応用が期待されるアシネトバクター属細菌が乾燥ストレスに対して顕著に高い耐性を示すことを発見。
・乾燥ストレスに対抗するために応答する多様な遺伝子を明らかにした。
・ガスバイオプロセス注1)によるバイオ物質変換を加速し、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーの実現に貢献することが期待される。
名古屋大学大学院工学研究科の堀 克敏 教授、吉本 将悟 助教らの研究グループは、アシネトバクター属細菌 Tol 5注2) が低湿度環境でも高い生存性と細胞内エネルギーを2週間以上維持し、乾燥・再水和後もトルエン分解活性を示すことを明らかにしました。さらに、乾燥ストレスに対して多様な遺伝子が応答し、その応答は乾燥ストレスの強度によっても異なることを明らかにしました。
微生物を担体表面などに高密度で固定し、気体から基質を供給するガスバイオプロセスは、揮発性有機化合物(VOC)注3)の分解や、気体原料を使った物質生産に有望な技術です。一方で、このような系では菌体が薄い水膜や微小液滴の中で働くため、通常の液体培養よりも乾燥ストレスを受けやすく生存性や触媒活性が低下するおそれがありますが、こうした低水分環境で物質生産に使われる微生物がどこまで機能を保てるかは十分に分かっていませんでした。本成果は、揮発性有機化合物の除去や低水分環境での物質生産に利用できる、より頑健なガスバイオプロセスの開発に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年3月23日付国際学術雑誌「Journal of Biological Engineering」に掲載されました。
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注1)ガスバイオプロセス:
ガス相(気相)バイオプロセスとも呼ばれる。微生物を触媒として用いて、工業排ガスや廃棄物由来のガスから、化学品や燃料、素材原料をつくる生産技術。未利用ガスの有効活用を通じて、資源循環の促進、脱炭素社会の実現、環境負荷の低減に貢献することが期待される。
注2)アシネトバクター属細菌 Tol 5:
トルエン分解細菌として堀教授のグループが単離した細菌。多様な芳香族化合物を分解できる高い代謝能力を示す。また、材料表面に対する非特異的な高い付着性を示すため、細菌細胞を多孔性の担体に簡便に固定化することができ、効率的にバイオプロセスに用いることができる。本研究ではこれらの特徴に加えて、高い乾燥耐性を示すことが明らかになった。
注3)揮発性有機化合物(VOC):
常温常圧で揮発しやすい有機化合物の総称で、トルエンなどの芳香族化合物や各種溶剤成分が含まれる。工場や廃棄物などから排出されることがあり、大気環境や健康への影響が懸念されるため、低減や適切な処理が求められている。
雑誌名:Journal of Biological Engineering
論文タイトル:Desiccation-tolerant Acinetobacter as a robust chassis candidate for gas-phase bioprocesses
著者:Shogo Yoshimoto, Hayata Yamada, Shori Inoue, Katsutoshi Hori
Department of Biomolecular Engineering, Graduate School of Engineering, Nagoya University, Nagoya, Japan
DOI: 10.1186/s13036-026-00668-3
URL: https://link.springer.com/article/10.1186/s13036-026-00668-3
大学院工学研究科 堀 克敏 教授, 主著者:吉本 将悟 助教
https://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/life3/index.html