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農学

2026.05.29

ニホンザルの絶滅が植物の"兄弟"の過度な集中を引き起こす~種子島と屋久島における比較研究から解明~

【ポイント】

・ニホンザルが絶滅した種子島では、今でもニホンザルが生息する屋久島よりも、ヤマモモの種子が運ばれる距離が短く、近くに生育する実生(みしょう)注1)個体同士の近縁度が高かった。
・屋久島の実生は、種子島よりも尾根に集中していたにも関わらず、個体間の近縁度は種子島より低く、ニホンザルがいろいろな場所から種子を運んでいることが明らかになった。
・主要な種子散布者注2)の喪失は、植物の実生更新に負の影響を与えている可能性がある。

 

名古屋大学大学院生命農学研究科の渡邉 彩音 博士後期課程学生、および中川 弥智子 准教授、戸丸 信弘 教授、京都大学大学院理学研究科の半谷 吾郎 准教授、東京大学大学院医学系研究科の富田 晋介 客員研究員の研究グループは、ニホンザルが絶滅した種子島と、現在も生息している屋久島の野外調査データの比較から、ヤマモモの種子散布距離や実生の分布に違いがあることを明らかにしました
植物は自ら移動できないため、果実を食べて種子を運ぶ種子散布者は、植物の分布拡大や分布パターンの決定に重要な役割を果たしています。しかし、日本を含む温帯地域では、熱帯地域と比較して種子散布に関する研究が少なく、また、種子散布動物の喪失の影響をモデル推定やシミュレーションではなく、野外データの比較から検証した研究はほとんどありませんでした。
そこで本研究では、隣接していながら動物相の異なる種子島と屋久島において、ヤマモモの種子散布距離、個体間の近縁度、および分布パターンを比較しました。その結果、主要な種子散布者であるニホンザルがいない種子島では、種子散布距離が短く、近くに近縁な個体が集中していました。こうした状態は、光や水、養分をめぐる競争や病虫害の影響を受けやすくし、植物の世代更新に不利になる可能性があります。本研究は、種子散布者が森林の維持に重要な役割を果たしていることを示しており、植物と動物の相互作用を踏まえた森林保全の重要性を示す成果といえます。
本研究成果は、2026年5月12日付で国際科学雑誌『Forest Ecology and Management』にオンライン公開されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)実生(みしょう):
種子から発芽した苗。芽生え。
注2)種子散布者:
果実を食べたり、体に種子をくっつけたりなどして植物の種子を別の場所へ運搬する動物。

 

【論文情報】

雑誌名:Forest Ecology and Management
論文タイトル:Defaunation affects the fine-scale spatial genetic structures, seed dispersal distances, and spatial distribution patterns of Morella rubra in warm-temperate forests of Japan
著者:Ayane Watanabe(渡邉 彩音:名古屋大学大学院生命農学研究科),
Nobuhiro Tomaru(戸丸 信弘:名古屋大学大学院生命農学研究科),
Goro Hanya(半谷 吾郎:京都大学大学院理学研究科),
Shinsuke Tomita(富田 晋介:東京大学大学院医学系研究科),
Michiko Nakagawa(中川 弥智子:名古屋大学大学院生命農学研究科)
DOI: 10.1016/j.foreco.2026.123858
URL: https://doi.org/10.1016/j.foreco.2026.123858

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 中川 弥智子 准教授, 主著者 渡邉 彩音(博士後期課程学生)
https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~seitai/