・人々が心的能力注1)の発達をどのように捉えているのかを調査した。
・6カ国の成人を対象に調査した結果、人々は一貫して心的能力を「知覚」と「内省」注2)という二つの次元から捉えていることが明らかになり、この傾向はすべての国で確認された。
・人々は、「知覚」次元の能力を比較的生まれつきのものとして、「内省」次元の能力を比較的経験によって育まれるものとして捉える傾向があった。
・心の概念構造は固定的ではなく、どのような文脈で判断されるかによって変化することも明らかになった。
・本研究は、人々が「心の成長」を理解する際に共有している直感的な枠組みを明らかにし、発達や教育に関する人々の日常的な考え方を理解する手がかりを提供する。
名古屋大学大学院情報学研究科の孟 憲巍(もう けんい)准教授らの共同研究グループ(就実大学心理学部の小國 龍治 講師、昭和女子大学総合情報学部の仁科 国之 講師、常葉大学保育学部の村上 太郎 准教授、名古屋大学大学院情報学研究科の水野 佑佳 博士前期課程学生、米ラトガース大学心理学部のJenny Wang助教)は、人々が心の発達をどのように直感的に捉えているのかを、6カ国の成人を対象に検討しました。参加者は、「見る」「痛みを感じる」「推論する」「善悪を判断する」など40種類の心的能力について、それぞれ人生のどの時期に現れると思うかを複数の質問形式を通して回答しました。その結果、人々の心の発達に関する捉え方には一定の構造がみられ、比較的生まれつきの能力と捉えられる「知覚」次元と、比較的経験によって育まれる能力と捉えられる「内省」次元という二つの次元から構成されることが明らかになりました。この傾向は、日本だけでなく、オーストラリア、メキシコ、南アフリカ、英国、米国でも一貫して確認されました。
人々がある能力の起源や性質をどのように捉えるかによって、子どもへの期待や支援のあり方は変わり得ます。本研究は、親や教育者、研究者が子どもの能力をどのように理解し評価するのか、また社会が人間の成長の可能性をどのように捉えるのかを考える上で、新たな手がかりを提供します。
本研究成果は、国際査読誌『Psychological Science』に2026年6月26日付で掲載されました。また、査読済み著者最終稿は、無料公開されています。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
注1)心的能力:
見る、聞く、痛みを感じる、推論する、信念をもつ、自制するなど、知覚・感情・思考・判断に関わる心の働きや能力の総称。
注2)「知覚」次元と「内省」次元:
論文では、それぞれ「知覚・経験」次元(Perceptual–Experiential Dimension)および「内省・評価」次元(Reflective–Evaluative Dimension)と呼んでいます。本プレスリリースでは、一般読者に分かりやすく伝えるため、「知覚」次元、「内省」次元と簡略化して表記しています。
雑誌名:Psychological Science
論文タイトル:How Does the Mind Grow? Cross-Cultural Intuitive Theories of Mental Development
著者:Xianwei Meng, Ryuji Oguni, Kuniyuki Nishina, Taro Murakami, Yuka Mizuno, Jinjing (Jenny) Wang
DOI: 10.1177/09567976261453926
URL: https://doi.org/10.1177/09567976261453926
査読済み著者最終稿(出版社による組版前の原稿、無料公開):
https://osf.io/preprints/psyarxiv/xyt6f_v1