・蛍光波長(色)が極めて類似している複数の蛍光タンパク質注1)を、蛍光が減衰する速さ(蛍光寿命注2))」の違いに基づいて明瞭に識別できることを示した。
・生きた植物細胞の中でも、複数種類の同系色蛍光タンパク質を同時に識別でき、赤色・緑色のいずれの蛍光タンパク質にも適用できることを示した。
・蛍光の「色」と「寿命」という異なる二つの情報を組み合わせることで、植物細胞で同時に観察できる対象を増やせる可能性を示した。
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)の青山 剛士 研究員、杉本 渚 技術員、佐藤 良勝 特任准教授の研究グループは、蛍光寿命顕微鏡(FLIM注3))を用いて、生きた植物細胞内で蛍光波長が極めて類似する蛍光タンパク質を識別できることを実証しました。
蛍光タンパク質は、細胞内のタンパク質の位置や動きを可視化する、ライフサイエンス研究に欠かせないツールです。従来、複数の蛍光タンパク質を同時に観察するには、蛍光波長(色)が異なるタンパク質を組み合わせることが一般的でした。しかし、蛍光タンパク質は同じ色に光る場合でも、蛍光が減衰するまでの時間(蛍光寿命)は種類によって異なります。そこで研究グループは、蛍光寿命を測定できるFLIMを用い、同じ色の蛍光タンパク質を蛍光寿命の違いに基づいて識別できることを示しました。さらに、生きた植物細胞(コケ植物ヒメツリガネゴケ)でも識別に成功し、この技術が植物細胞における多重イメージングに有用であることを示しました。今後、蛍光の色と寿命を組み合わせることで、より多くのタンパク質を同時に見分けられるようになり、植物細胞内で起こる様々な現象を詳しく調べる手段として、幅広い活用が期待されます。
本研究成果は、2026年7月30日に国際学術雑誌『Plant Physiology』に掲載されました。
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注1)蛍光タンパク質:
光を当てると特定の色に光る性質を持つタンパク質。遺伝子操作によって観察したいタンパク質と融合させることで、生きた細胞の中でその位置や動きを可視化できる。代表的なものにGFP(緑色蛍光タンパク質)などがあり、生命科学研究に広く利用されている。
注2)蛍光寿命:
蛍光分子が光を吸収して励起状態になってから、元の状態(基底状態)に戻るまでの平均時間。通常はナノ秒単位で表される。蛍光分子の種類によってこの時間の長さは異なる。
注3)蛍光寿命顕微鏡(FLIM):
蛍光分子の蛍光寿命の違いを画像として捉えることができる顕微鏡技術。Fluorescence Lifetime Imaging Microscopyの略。
【論文情報】
雑誌名: Plant Physiology
論文タイトル: Fluorescence lifetime-based multiplex imaging in living plant cells
著者: Tsuyoshi Aoyama*, Nagisa Sugimoto*, Yoshikatsu Sato*(*本学関係者)
DOI:10.1093/plphys/kiag475
URL:https://doi.org/10.1093/plphys/kiag475
※【WPI-ITbMについて】(http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp)
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、2012年に文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の1つとして採択されました。
ITbMでは、精緻にデザインされた機能をもつ分子(化合物)を用いて、これまで明らかにされていなかった生命機能の解明を目指すと共に、化学者と生物学者が隣り合わせになって融合研究をおこなうミックス・ラボ、ミックス・オフィスで化学と生物学の融合領域研究を展開しています。「ミックス」をキーワードに、人々の思考、生活、行動を劇的に変えるトランスフォーマティブ分子の発見と開発をおこない、社会が直面する環境問題、食料問題、医療技術の発展といったさまざまな課題に取り組んでいます。これまで10年間の取り組みが高く評価され、世界トップレベルの極めて高い研究水準と優れた研究環境にある研究拠点「WPIアカデミー」のメンバーに認定されました。
トランスフォーマティブ生命分子研究所 佐藤 良勝 特任准教授, 主著者:青山 剛士(研究員)
https://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/liveimagingcenter/index.html