・リボソームタンパク質注1)の中で最も小さいタンパク質RPL41の機能は不明であった。
・RPL41を欠損してもヒト培養細胞とマウスは生存可能であることが分かった。
・RPL41はリボソームの構造ダイナミクスの安定化や翻訳エラーの抑制、アミノ酸配列の長いタンパク質の恒常性維持に重要であることが分かった。
名古屋大学大学院理学研究科および環境医学研究所の松本 有樹修 教授と同大学大学院理学研究科の市原 知哉 助教、平田 実奈 博士後期課程学生、北海道大学大学院水産科学研究院(研究当時:東北大学)の横山 武司 准教授、東北大学大学院生命科学研究科の藤野 真帆 修士課程学生、国立遺伝学研究所の豊田 敦 特任教授らの研究グループは、哺乳類のリボソームタンパク質RPL41が、リボソームの構造ダイナミクスの安定化と、長いタンパク質の恒常性維持に重要な役割を果たすことを発見しました。
リボソームは、約80種類のリボソームタンパク質とリボソームRNAから構成されています。一般的に、リボソームタンパク質は1種類でも欠損するとリボソーム機能が破綻し、細胞やマウスにとって致命的であると考えられています。本研究グループは、「欠損しても生存できるリボソームタンパク質が存在するのではないか」という逆転の発想から探索を行い、RPL41を欠損した細胞とマウスが生存可能であることを見出しました。
本研究では、細胞およびマウスにおいてRPL41を欠損させ、その機能を詳しく解析しました。クライオ電子顕微鏡法注2)(Cryo-EM)による構造解析と翻訳動態解析の結果、RPL41はリボソームの構造ダイナミクスを安定化し、翻訳エラーを抑制することが明らかになりました。さらに、RPL41の欠損によって、特に長いタンパク質の発現量が減少するとともに不溶化が増加し、マウスでは成長遅延が認められました。これらの結果から、RPL41は正確で効率的な翻訳を支え、長いタンパク質の恒常性を維持するうえで重要であることが示されました。
RPL41はヒトの全身で発現しています。リボソーム機能や翻訳の異常はさまざまな疾患と関連することから、本研究で明らかになったRPL41の機能は、リボソーム異常が細胞や個体に与える影響を理解するための新たな手掛かりになることが期待されます。
本研究成果は、2026年8月19日午前9時01分(日本時間)付国際学術雑誌「Nucleic Acids Research」に掲載されました。
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注1)リボソームタンパク質:
リボソームRNA(rRNA)とともに、タンパク質合成を担うリボソームを構成するタンパク質。ヒトを含む真核生物のリボソームには約80種類が含まれ、リボソームの形成や構造の維持、翻訳の調節などに関与する。
注2)クライオ電子顕微鏡法:
生体試料を急速凍結し、透過型電子顕微鏡を用いて観察する手法。タンパク質や、リボソームなどの巨大複合体の立体構造解析に広く使われている。
雑誌名:Nucleic Acids Research
論文タイトル:RPL41 stabilizes ribosome dynamics and supports long-protein homeostasis in mammals
著者:平田 実奈(名古屋大学)、藤野真帆(東北大学)、市原 知哉(名古屋大学)、唐 宏浩(清華大学)、成田 桃子(東京大学)、岩崎 わかな(理化学研究所)、白石 千瑳(名古屋大学)、白石 大智(名古屋大学)、幡野 敦(新潟大学)、鈴木 亨(東京大学)、阿部 藤吉郎(新潟大学)、高見 知代(新潟大学)、三城(佐藤) 恵美(名古屋大学)、豊田 敦(国立遺伝学研究所)、松本 雅記(新潟大学)、田中 良和(東北大学)、伊藤 拓宏(理化学研究所)、稲田 利文(東京大学)、中山 敬一(東京科学大学)、横山 武司(東北大学、現北海道大学)、松本 有樹修(名古屋大学)
DOI: 10.1093/nar/gkag797
URL: https://doi.org/10.1093/nar/gkag797