・DNA修飾金ナノ粒子結晶は次世代光学材料への応用が期待されていますが、結晶サイズの制御が困難でした。
・熱制御型液滴マイクロ流体システムを構築し、微小液滴を結晶化環境として利用することで、均一なDNA修飾金ナノ粒子結晶の作製に成功しました。
・従来法と比較して結晶サイズのばらつきを約9分の1に低減し、新たな光学材料や機能性ナノデバイスの開発への応用が期待されます。
DNA修飾ナノ粒子(DNA-NP)(※1)が自己集合化(※2)して形成する超格子(※3)は、高機能な光学材料やナノデバイスへの応用が期待されている一方で、これまで結晶サイズのばらつきが大きく、均一な結晶を作製することが困難でした。そのため、結晶サイズや品質を精密に制御する新たな製造技術の開発が求められていました。
本研究では、微小液滴を利用して結晶化環境を精密に制御することにより、DNA修飾金ナノ粒子(DNA-AuNP)超格子を高い均一性で作製可能とする新技術を開発しました。
九州大学大学院工学研究院の鳥取直友助教、佐久間臣耶准教授、山西陽子教授、名古屋大学未来材料・システム研究所の田川美穂教授らの研究グループは、熱制御型液滴マイクロ流体システムを構築し、DNA修飾金ナノ粒子を均一な微小液滴内で結晶化させることで、結晶サイズのばらつきを大幅に低減することに成功しました。本手法では、高温条件下のマイクロ流路内で均一サイズの液滴を生成した後、超低速で冷却することでDNA修飾金ナノ粒子の結晶化を制御します。液滴サイズによる結晶化への影響を評価した結果、液滴サイズが小さくなるほど単一結晶体(※4)が形成されやすくなることが明らかになり、特に液滴径23 µm以下の条件では主に単一結晶体が形成されることを確認しました。さらに、従来のバッチ法(※5)と比較して結晶サイズのばらつきを約9分の1に低減することに成功しました。
本研究成果は、均一サイズのナノ粒子超格子の製造技術として、新たな光学材料や機能性ナノデバイスの開発への応用が期待されます。また、他種のナノ粒子材料への展開など、ナノ材料製造技術の高度化にも貢献すると考えられます。
本研究成果は、2026年8月10日(月)午後5時(日本時間)に Wiley 発行の国際学術誌 Smallに掲載されました。
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(※1) DNA修飾ナノ粒子(DNA-NP)
ナノ粒子の表面にDNAを結合させたナノ粒子。DNA配列を設計することで、粒子同士を特定の位置関係で結合させることができ、規則的な構造体の形成が可能となる。
(※2) 自己集合化
外部から複雑な操作を加えなくても、構成要素同士の相互作用によって自発的に秩序構造が形成される現象。本研究ではDNA修飾金ナノ粒子が自己集合化することで規則的な構造体を形成する。
(※3) 超格子
ナノ粒子が規則的に並ぶことによって形成される結晶構造のこと。原子が規則的に配列した通常の結晶に対し、超格子ではナノ粒子が構成要素となる。粒子の配列に由来した特異な光学特性や機能の発現が期待されている。
(※4) 単一結晶体
本研究における単一結晶体とは、液滴内で一つの結晶粒子が形成された超格子構造を指す。これは厳密な完全単結晶を意味するものではない。
(※5) バッチ法
反応溶液を一つの容器内でまとめて混合し、反応や結晶化を行う従来の結晶生成手法。本研究で用いた液滴法とは異なり、反応環境を個別に制御することが難しいため、生成される結晶のサイズや構造にばらつきが生じやすい。
掲載誌: Small
タイトル: Thermally regulated droplet microfluidics enables uniform, size‑controllable DNA-nanoparticle superlattices
著者名: Naotomo Tottori, Miho Tagawa, Azusa Takao, Lidong Zhang, Maasa Yokomori, Shinya Sakuma, and Yoko Yamanishi
DOI:10.1002/smll.74787
URL:https://doi.org/10.1002/smll.74787
未来材料・システム研究所 田川 美穂 教授
https://tagawa.material.nagoya-u.ac.jp/