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工学

2026.08.18

薄いp型GaNとの低抵抗接触を実現する形成技術を開発 ~多様な電子・光デバイスへの応用に期待~

【ポイント】

・厚さ10 nm未満のMg膜を用いた低ダメージ熱処理(ソフトアニール注1))により、薄いp型GaN注2)の表面を平坦なまま保ちながら、表面近傍に高濃度Mgアクセプター層を形成した。
・プラズマ加工の有無にかかわらず、(1~3)×10⁻⁴ Ω·cm²の低い比接触抵抗注3)を実現し、薄膜p型GaNに対する高い汎用性を示した。
・従来の厚膜Mgアニールで報告されている反応生成相は確認されず、材料品質の維持を確認した。
・膜厚50 nmの薄膜p型GaNでも高い正孔移動度を維持し、p-i-nダイオードで800 V超の高耐圧特性と低漏れ電流を維持した。
・実用的なプロセスによって、GaN電子・光デバイスの高性能化と実用化の加速に貢献。

 

名古屋大学未来材料・システム研究所の王 海涛 研究員、王 嘉 特任助教、天野 浩 教授らによるASPIRE国際共同研究グループ(※)は、キャップ層を設けることなく、厚さ10 nm未満の金属マグネシウム(Mg)膜を用いて、600℃で5分間のソフトアニール(低ダメージ熱処理)を行うことで、薄いp型窒化ガリウム膜(薄膜p-GaN)の平坦な表面を維持しながら、低抵抗なオーミック接触注4)を形成する技術を開発しました。
p-GaNへの低抵抗接触を実現するには、表面近傍に超高濃度Mgを導入した極めて薄いドーピング層を形成する必要があります。しかし、従来の厚いMg膜を用いる方法では、熱処理によって表面が粗くなりやすく、薄膜p-GaNへ適用することが困難でした。
本研究では、Mgの供給量と熱処理量を大幅に抑えることで、p-GaN表面を粗化させることなく、表面近傍のわずか数nmに極浅い超高濃度Mgドーピング層を形成しました。高分解能透過電子顕微鏡観察では、従来の厚膜Mgアニールで報告されてきた反応生成結晶相の形成は認められませんでした。
形成されたMgドーピング層により、金属/p-GaN界面のバンド曲がりと空乏層幅注5)が制御され、プラズマ加工による表面損傷の有無にかかわらず、ゼロバイアスにおいて(1~3)×10⁻⁴ Ω·cm²という極めて低い比接触抵抗が得られました。
さらに、膜厚わずか50 nmの薄いp-GaN層にソフトアニールを施した試料においても、高い正孔移動度が維持されました。また、同処理を施したp–i–nダイオードでは、800 Vを超える逆方向耐圧と低い逆方向漏れ電流が維持されました。本成果は、薄いp-GaN層の表面形状、輸送特性および高耐圧特性を損なうことなく適用できる新たな接触形成技術を示すものです。LED注6)、micro-LED注7)、p-GaNゲートHEMT注8)、HBT注9)、縦型GaNパワーデバイス注10)など、薄いp-GaN層を用いる幅広い電子・光デバイスへの応用が期待されます
本研究成果は、2026年8月11日付で国際学術誌「Applied Physics Letters」に掲載されました。

 

※ASPIRE国際共同研究グループ:
JST(科学技術振興機構)が実施する「先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)」に採択された研究プロジェクトに参加する国内外の研究者チームのこと

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)ソフトアニール:
従来よりも低い温度かつ短い時間で行う、熱負荷を抑えた低ダメージ熱処理。本研究では、厚さ10 nm未満のMg膜に対して600℃で5分間のアニールを行い、p-GaN表面の粗化を抑えながら、表面近傍に極浅いMg高濃度領域を形成する。
注2)GaN(窒化ガリウム):
ガリウムと窒素からなるワイドバンドギャップ半導体。LED、高周波デバイス、パワーデバイスなどに利用される。
注3)比接触抵抗:
金属/半導体界面の接触性能を表す指標。値が小さいほど、界面における電流の流れやすさが高いことを示す。
注4)オーミック接触:
金属と半導体の界面で電流が双方向に流れ、電圧と電流がほぼ比例する低抵抗接触。
注5)空乏層幅:
半導体の金属との接触面付近に形成される、電流を運ぶ正孔や電子が少ない領域の厚さ。空乏層が薄いほど、正孔が界面を通過しやすくなり、接触抵抗が低下する。
注6)LED(発光ダイオード):
電流を流すと光を発する半導体デバイス。照明、ディスプレイ、通信などに広く利用
される。
注7)micro-LED(マイクロ発光ダイオード):
一辺が数十µm以下の微小なLEDを画素として用いる表示デバイス。高輝度、低消
費電力、高速応答などの特長を持つ。
注8)p-GaNゲートHEMT:
p型GaNをゲート層に用いた高電子移動度トランジスタ。ゲート電圧によって
GaN/AlGaN界面の電子を制御し、電源回路などに適したノーマリーオフ動作を実
現する。
注9)HBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ):
異なる半導体材料の接合を利用して電流を増幅するトランジスタ。高速・高周波・高
出力動作に適しており、薄いp型GaN層がベース層として用いられる。
注10)縦型GaNパワーデバイス:
電流を半導体基板の表面から裏面方向へ流す構造のGaNデバイス。高い耐圧と
大電流動作を両立しやすく、電力変換装置への応用が期待される。

 

【論文情報】

雑誌名:Applied Physics Letters
論文タイトル:Enabling thin p-GaN Ohmic contacts through ultrathin magnesium deposition and brief thermal annealing
著者:Haitao Wang, Shumeng Yan, Zhiyu Xu, Yingying Lin, Peirong Yu, Joshua Jaehyung Park, Joseph E. Dill, Hei Wong, Qingyuan Han, Xigen Li, Qian Sun, Tomás Palacios, Debdeep Jena, Huili Grace Xing, Jia Wang, Hiroshi Amano
DOI:10.1063/5.0339815
URL:https://doi.org/10.1063/5.0339815

 

【研究代表者】

未来材料・システム研究所/高等研究院 王 嘉(ワン ジャア)特任助教
http://www.semicond.nuee.nagoya-u.ac.jp/index.html