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工学

2026.08.18

高齢者の血清で筋細胞の加齢変化を培養下で再現、機能性成分の評価利用へ~ケルセチンが加齢による筋力低下を軽減する可能性~

【ポイント】

・健康な高齢者の血清注1)をヒト骨格筋細胞に加え、筋管面積の減少と筋組織の収縮力低下を同時に示すin vitro注2)加齢性筋萎縮モデルを構築した。
・高齢者血清ではNF-κB注3)を中心とした炎症反応が活性化し、ステロイド性筋萎縮モデルとは異なる仕組みが示された。
・ケルセチン注4)はNF-κB活性化を抑え、筋萎縮と筋収縮力の低下を軽減した。
・本モデルは筋肉の加齢変化を予防・抑制する機能性成分の探索への活用が期待される。

 

名古屋大学大学院工学研究科の清水 一憲 准教授の研究グループは、サントリーウエルネス株式会社生命科学研究所との共同研究で、健康な高齢者の血清を初代ヒト骨格筋細胞に添加し、加齢に伴う筋萎縮と収縮力低下をin vitroで再現しました
高齢者由来の血清は、筋管面積の低下を示し、独自のマイクロデバイス注5)を用いた三次元培養では筋収縮力が低下することを見出しました。また、遺伝子・タンパク質解析から高齢者由来の血清は、炎症反応を調節するNF-κB経路の活性化を促進することを示しました。さらに、玉ねぎやブロッコリーなどに含まれ、多様な生理活性が報告されているケルセチンはNF-κB活性化を抑え、これらの低下を軽減しました。
本成果は、ヒト細胞で加齢に伴う筋機能低下を評価し、予防・抑制に役立つ成分を探索する新たな研究基盤となることが期待されます。さらに、食経験豊富なケルセチンが高齢者由来の血清で誘導される筋萎縮を抑制したことから、ケルセチンがサルコペニア注6)をはじめとする筋肉の機能低下の抑制に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2026年8月12日付で国際学術誌『npj Aging』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)血清:
血液を凝固させた後に得られる液体成分。ホルモン、成長因子、サイトカイン、代謝物など、多様な成分を含む。
注 2)in vitro:
「試験管内で」という意味。生体から取り出した細胞や組織を、培養皿やデバイス上で調べる実験を指す。
注3)NF-κB:
炎症や免疫応答に関わる遺伝子の働きを調節する転写因子。骨格筋では、過度な活性化が筋タンパク質の分解や筋萎縮に関与することが報告されている。
注4)ケルセチン:
玉ねぎやブロッコリー、りんごなどに含まれるポリフェノールの一種。抗酸化作用や抗炎症作用など、さまざまな生理作用が研究されている。
注5)マイクロデバイス:
微細加工技術を用いて細胞や組織の機能を再現・測定する装置。本研究の3D骨格筋モデルでは、筋組織を2本の支柱の間に形成し、電気刺激による支柱の変位から収縮力を算出する。

注6)サルコペニア:
加齢などに伴って筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態。

 

【論文情報】

雑誌名:npj Aging
論文タイトル:Human in vitro Skeletal Muscle Models Recapitulate Age-Related Atrophy and Contractile Decline Induced by Aged Serum
著者:永井 研迅1,2、得田 久敬1、金田 喜久1、出雲 貴幸1、中尾 嘉宏1、秋山 裕和2、本多 裕之2、清水 一憲2*
1 サントリーウエルネス株式会社 生命科学研究所、2 名古屋大学大学院 工学研究科
DOI: 10.1038/s41514-026-00472-9
URL: https://doi.org/10.1038/s41514-026-00472-9

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 清水 一憲 准教授
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