・ラットはヒトに聞こえない超音波で鳴きます。本研究では、ラットがチョコレートを食べている最中に現れる、特別な鳴き声のパターンを発見しました。
・機械学習(AI)を用いて鳴き声を自動分類したところ、「チョコを待っている間の声」と「食べている最中の声」を高い精度で区別できました。
・さらに鳴き声の特徴を詳しく調べたところ、チョコを食べている最中に現れる新しいタイプの鳴き声(40 kHz帯・逆U字型)を発見しました。
・この鳴き声は、報酬感や快感に関わるオピオイドの働きを妨げる薬を投与すると減少しました。単なる咀嚼に伴う音ではなく、「おいしい」という体験と結びついた声である可能性を示しています。
チョコレートを一口食べたとき、思わず「おいしい」と声が出てしまうことがあります。この「おいしい」という感覚は、ヒトだけのものでしょうか。
名古屋大学大学院生命農学研究科の塩谷和基助教、福井大学医学部の村田航志助教、池戸優希学部生(研究当時)、深澤有吾教授らの研究チームは、ラットが好物のチョコレートを食べている最中に、ヒトには聞こえない超音波の鳴き声を出していること、そしてその鳴き声には、食べている最中にだけ現れる特別なパターンがあることを発見しました。
ラットは仲間との遊びやおいしい食べ物を期待するときに、50 kHz帯(ヒトの可聴域の2倍以上の高さ)の超音波で鳴くことが知られています。しかし、実際においしいものを食べている最中の鳴き声については、ほとんど調べられていませんでした。研究チームは、ラットにチョコレートを与え、その前後の鳴き声を録音しました。機械学習(AI)を用いて分類したところ、チョコを待っている間の声と、食べている最中の声を、高い精度で区別できました。食べている最中の鳴き声は、声の高さが低めで(40 kHz帯)、鳴いている間にいったん上がってから下がる「逆U字型」の変化を示す特徴を持っていました。
さらに、この声が「おいしさ」と関係するのかを確かめるため、報酬感や快感に関わるオピオイドの働きを妨げる薬をラットに投与しました。すると、「40 kHz帯・逆U字型」の鳴き声が減少しました。これは、この声がチョコレートを食べた時の「おいしい」という快の体験と結びついている可能性を示しています。
動物が「おいしい」と感じているかどうかを客観的に測ることは、これまで簡単ではありませんでした。本研究の手法は、動物の食の満足感を、声から読み取る新しい方法につながると期待されます。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
〈論文タイトル〉
“A Subtype of Ultrasonic Vocalizations during Palatable Food Consumption in Rats Identified by Machine Learning-Assisted Classification”
(日本語タイトル:「機械学習による分類で同定されたラットの嗜好性食物摂食時に生じる超音波発声サブタイプ」)
〈著者〉
Koshi Murata, Yuki Ikedo, Takashi Ryoke, Kazuki Shiotani, Hiroyuki Manabe,
Kazuki Kuroda, Hitoshi Yoshimura, and Yugo Fukazawa
村田 航志
(福井大学 医学系部門 医学領域 形態機能医科学講座 脳形態機能学 助教)
池戸 優希
(福井大学 医学部医学科 学部生(研究当時))
領家 崇
(福井大学 医学系部門 医学領域 感覚運動医学講座 歯科口腔外科学 助教)
塩谷 和基
(名古屋大学 大学院生命農学研究科応用生命科学専攻 食理神経科学研究室 助教)
眞部 寛之
(奈良県立医科大学 生理学第一講座 准教授)
黒田 一樹
(福井大学 医学系部門 医学領域 形態機能医科学講座 脳形態機能学 准教授)
吉村 仁志
(福井大学 医学系部門 医学領域 感覚運動医学講座 歯科口腔外科学 教授)
深澤 有吾
(福井大学 医学系部門 医学領域 形態機能医科学講座 脳形態機能学 教授)
〈発表雑誌〉
「eNeuro」(イーニューロ)
(2026年7月17日にオンライン掲載)
DOI番号:10.1523/ENEURO.0356-25.2026