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化学

2026.09.07

温室効果ガスから医薬品の合成へ ~フルオロホルムの光触媒的活性化~

【ポイント】

・テフロン製造時に副生されるフルオロホルムガスから、有用化学種の調製に成功。
・計算化学から裏付けられた新しい分子活性化様式を実現。
・サステイナブルな分子合成技術の創出に貢献。

 

北海道大学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の周 順博士研究員(研究当時。現・名古屋⼤学物質科学国際研究センター博士研究員)と林 裕樹特任准教授(研究当時。現・名古屋⼤学物質科学国際研究センター准教授)及び同大学大学院総合化学院博士後期課程の宋 艶氏らの研究グループは、テフロン製造時に副生されるフルオロホルムガスから、有機合成化学で有用な化学種であるトリフルオロメチル(CF3)ラジカル*1を調製可能な、新しい分子活性化手法の開発に成功しました。
CF3基は、有機分子に導入することで、その代謝安定性や膜透過性などを向上させることができるため、創薬研究で幅広く利用されています。この導入には、CF3ラジカルを利用するラジカルCF3化反応が有用ですが、既存の有機合成手法では、高価で爆発性や腐食性のあるCF3化試薬を用いる必要がありました。今回の研究では、テフロン製造時の副産物であり、安価・低毒性・取り扱いやすいフルオロホルムガスから、光エネルギーとカルボニル化合物を活用した新しい触媒的活性化手法によって、CF3ラジカルを調製することに成功しました。この活性化様式は、ICReDDの計算技術「AFIR法*2」から導出され、実験的な試行を通じて実現しました。この新しい活性化手法を用いて、フルオロホルムからCF3ラジカルを調製して、様々な有機分子に対するラジカルCF3化に成功し、中でも、安価な原料から付加価値の高い医薬品合成中間体の合成を達成できました。本研究は、近年深刻化される資源やエネルギー問題に対して、地球温暖化係数が二酸化炭素の約15,000倍のフルオロホルムガスを、光エネルギーを活用してその有効利用を可能とする次世代の有機合成技術であり、創薬研究や持続可能な社会の実現に大きく貢献することが期待されます。
なお、本研究成果は、2026年8月4日(火)公開のJournal of the American Chemical Society誌にオンライン掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

*1 ラジカル … 高反応性化学種の一つで、様々な有機合成で活用されている。不安定であるため、前駆体分子からin situで調製する。
*2 AFIR法 … WPI-ICReDD の計算技術。量⼦化学計算による反応経路の⾃動探索を可能とし、反応機構の解析や未知反応の予測に活⽤されている。

 

【論文情報】

論文名 Photocatalytic Activation of Fluoroform for Radical Trifluoromethylation(フルオロホルムの光触媒的活性化によるラジカルトリフルオロメチル化反応)
著者名 周 順1、2、3、宋 艶4、原渕 祐1、2、神名 航4、勝山 瞳1、2、Simon J. Cooper1、田中耕作三世1、2、美多 剛1、2、前田 理1、2、5、林 裕樹1、2、31北海道⼤学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)、2JST-ERATO前田化学反応創成知能プロジェクト、3名古屋大学物質科学国際研究センター、4北海道大学大学院総合化学院、5北海道大学大学院理学研究院)
雑誌名 Journal of the American Chemical Society(化学の総合学術雑誌)
DOI 10.1021/jacs.6c10939

URL https://doi.org/10.1021/jacs.6c10939
公表日 2026年8月4日(火)(オンライン公開)

 

【研究代表者】

物質科学国際研究センター 林 裕樹 准教授
https://yagilabnagoya.jp/members/hirokihayashi/