国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学生物機能開発利用研究センターの 川勝 弥一 研究員と野田口 理孝 准教授の研究グループは、接木の接着力を簡易に定量する手法を開発しました。植物の接木は古くから行われてきた農業技術であり、果物や野菜の栽培に広く利用されています。私たちの研究グループでは、本年2020年8月にScience誌に接木の接着の鍵となるβ-1,4-グルカナーゼ(セルラーゼ)注1)が細胞の外に分泌されて植物で機能することを示しました。今回、このセルラーゼを外的投与することでも接木を促進させる効果があることを示すことができ、科学的研究成果を農業へ技術利用する道筋が示されました。
本研究では、接木を簡易に解析するため、タバコ植物を用いたin vitro graftingシステム注2)を開発しました。培地上で接木を成立させたタバコの茎に対して、フォースゲージ注3)を用いた引っ張り試験を行うことで、接木の接着力を定量することに成功しました。この方法を用いて、接木を促進する植物ホルモンであるオーキシンを添加した培地上でin vitro graftingを行うと、接着力が増加しました。また、タバコの接木に重要な役割を果たすセルラーゼを添加した培地でも、接着力が増加することがわかりました。さらに、オーキシンとセルラーゼを同時に添加することで、接着力が相乗的に増加することも示されました。このことから、タバコの接木はセルラーゼを外的に投与することで促進されることが示されました。
この研究成果は、2020年12月11日付で科学雑誌「Plant Biotechnology」にオンライン掲載されました。
・スループット性の高い接木手法が開発された。
・接木の接着力を定量化することに成功した。
・接木部位へのセルラーゼの外的投与による接着促進が認められた。
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(注1)セルラーゼ:植物細胞などの細胞壁を分解する酵素。
(注2)in vitro grafting (IVG):試験管内などの無菌条件で接木を行う手法。
(注3)フォースゲージ:接触の際に発生する力を測定する装置。
雑誌名:PLANT BIOTECHNOLOGY
論文タイトル:An in vitro grafting method to quantify mechanical forces of adhering tissues
(接木における組織の機械的な接着力を定量化するインビトロ接木法の開発)
著者:Yaichi Kawakatsu, Yu Sawai, Ken-ichi Kurotani, Katsuhiro Shiratake, Michitaka Notaguchi*
*Corresponding author
DOI:10.5511/plantbiotechnology.20.0925a
【著者所属】
名古屋大学生物機能開発利用研究センター 川勝 弥一、澤井 優、黒谷 賢一、野田口 理孝
名古屋大学大学院生命農学研究科 白武 勝裕
【研究費】
・科学研究費助成事業(18KT0040, 18H03950, 19H05361)
・公益財団法人キヤノン財団(R17-0070)
・農研機構生研支援センター(28001A, 28001AB)
http://bbc.agr.nagoya-u.ac.jp/~graft/