TOP   >   医歯薬学   >   記事詳細

医歯薬学

2022.04.15

日本人小児における除草剤グリホサートの曝露実態を初めて観察 -バイオモニタリングを用いたリスク評価の発展に期待-

名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻の上山 純准教授と野村 洸司大学院生らの研究グループは、日本人小児の尿から除草剤グリホサートを検出し(バイオモニタリング 注 1))、日本人小児のグリホサート曝露を初めて明らかにしました。
グリホサートおよびその塩類は、1970 年代から販売が開始され、世界中で最も使用されている除草剤です。日本国内ではグリホサートは、一般的なホームセンター等で容易に入手可能で、農業分野、公園や道路などの公共の場、家の庭といった一般生活環境下で多く使用されています。諸外国では、グリホサートのヒトへのリスクを評価するため、生体試料中からグリホサートやその代謝物を測定することで、グリホサートの曝露レベルを理解する試みが進行中ですが、曝露レベルの経年変化や季節さなどは明らかにされていませんでした。本研究では、化学物質の影響を比較的受けやすいとされている小児を対象に、尿中のグリホサートを測定し、グリホサートの曝露レベルやその特徴を観察しました。結果、日本人小児の尿からグリホサートを検出し、その検出率は年々上昇傾向にあり、日本におけるグリホサートの国内出荷量の増加と相関があることが示されました。また尿中から検出されたグリホサート濃度は、これまでに諸外国から報告された値と同等または低いレベルでした。尿中グリホサート濃度から算出したグリホサートの推定 1 日摂取量は、日本食品安全委員会の定める一日摂取許容量 注 2) と比較して、非常に少ない量であったことから、グリホサート曝露レベルは、人体に影響を及ぼす程度の量ではないことが示されました。
本研究成果は、国際科学誌「International Journal of Hygiene and Environmental Health」電子版に掲載されました(2022 年 3 月 29 日付)。

 

【ポイント】

○ 世界中で使用されている除草剤グリホサートの日本人小児への曝露を初めて明らかにした。
○ その曝露量は増加傾向にあり、グリホサートの日本国内出荷量の増加と相関があることが示された。
○ 観察した最大曝露量であっても、現在のリスク評価の枠組みの範囲では人体に影響を及ぼす程度の量ではないと推察された。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注 1)バイオモニタリング:生物学的曝露モニタリング
注 2)一日摂取許容量:一生涯毎日摂取しても健康へ悪影響がないとされる一日あたりの摂取量

 

【論文情報】

掲雑誌名:International Journal of Hygiene and Environmental Health
論文タイトル:Temporal trend and cross-sectional characterization of urinary concentrations of glyphosate in Japanese children from 2006 to 2015
著者:
Hiroshi Nomuraa, Risa Hamadaa, Keiko Wadab, Isao Saitoa, Nanami Nishiharaa, Yugo Kitahara a, Satoru Watanabe a, Kunihiko Nakanec , Chisato Nagatab, Takaaki Kondod, Michihiro Kamijimae , Jun Ueyama a
所属名:
aDepartment of Biomolecular Sciences, Field of Omics Health Sciences, Nagoya University Graduate School of Medicine
b Department of Epidemiology and Preventive Medi cine, Gifu University Graduate School of Medicine
c Okazaki City Public Health Center,
d Division of Interactive Medical and Healthcare Systems, Field of Healthcare Informatics,
Nagoya University Graduate School of Medicine
e Department of Occupational and Environmental Health, Nagoya City University Graduate
School of Medical Sciences
DOI:10.1016/j.ijheh.2022.113963

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科総合保健学 上山 純 准教授
https://nagoya-u-hbm-laboratory.jimdofree.com/

 

【関連情報】

20241022ueyama_R.jpg ~Researchers' VOICE~No.29 上山 純 准教授に一問一答!