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生物学

2022.04.20

植物の細胞を培養し、経時的な観察を可能にするマイクロデバイスの開発に成功!

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の清水 一憲 准教授、大学院生命農学研究科の田畑 亮 特任講師、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの川勝 弥一 研究員、黒谷 賢一 特任講師、および野田口 理孝 准教授らの研究グループは、持続可能な農業へ向けた接木革新ユニット(B3ユニット:若手新分野創成研究ユニット)の研究成果として、植物の細胞を微細流路内で培養し、経過観察を可能とするマイクロデバイスの開発に成功しました。
植物細胞の多くは不透明なため、細胞を生きたまま連続して光学的に観察することが難しいとされます。タバコBY-2細胞は、培養液中で紐状につながって増殖し、ほぼ透明であることから、生きたままの観察に適していますが、培養液中に懸濁された状態で、個々の細胞を経時的にトレースすることはこれまで困難でした。
今回、MEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用した、微細加工により形成する流路デバイスを開発し、そこにBY-2細胞をトラップすることで、個々の細胞を生きたまま経時的に観察することを可能としました。このマイクロデバイスとBY-2細胞を用いることで、植物のシングルセルからの細胞分裂の系譜や、細胞間の物質の移動などをリアルタイムにトレースすることができるようになりました。本技術の活用により、農薬等の化合物評価や植物培養系の開発を効率化できます。
本研究成果は、2022年4月14日付科学雑誌「PLOS ONE」オンライン版に掲載されました。
本研究は、科学研究費助成事業(18K05373、20H05501、18KT0040、18H03950、21H00368、20H03273)、科学技術振興機構(JPMJPR18K4)、新学術領域研究(20H05358)、公益財団法人キヤノン財団(R17-0070)の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

・タバコBY-2細胞をトラップして培養する微細流路デバイスを設計し、MEMS技術を応用したチップを開発した。
・タバコBY-2細胞を効率よく流路デバイスに導入するプロトコールを確立。
・通常の振盪培養と同等の細胞分裂活性を微細流路内で実現。
・細胞間の原形質連絡を介したタンパク質の移動をモニターすることに成功。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:PLOS ONE
論文タイトル:Development of Microfluidic Chip for Entrapping Tobacco BY-2 Cells(タバコBY-2細胞をトラップする微細流路チップデバイスの開発)
著者:Kazunori Shimizu, Yaichi Kawakatsu, Ken-ichi Kurotani, Masahiro Kikkawa, Ryo Tabata, Daisuke Kurihara, Hiroyuki Honda, Michitaka Notaguchi
(清水 一憲、川勝 弥一、黒谷 賢一、吉川 真広、田畑 亮、栗原 大輔、本多 裕之、野田口 理孝)
DOI: 10.1371/journal.pone.0266982
URL: https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0266982

 

【研究代表者】

http://bbc.agr.nagoya-u.ac.jp/~graft/