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化学

2023.03.08

インドール誘導体の超高速・簡便合成法を開発 ~医薬品候補化合物の創出、医薬品生産の効率化に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院創薬科学研究科の増井 悠 助教、神田 瀬奈 博士前期課程学生、布施 新一郎 教授らの研究グループは、医薬品候補として重要なインドール誘導体の超高速かつ簡便な合成法の開発に成功しました。インドールは医薬品に最も多く含まれる構造の一つです。また、創薬の現場で最も多く使用される反応は、ヘテロ原子注2)のアルキル化反応注3)であることが報告されており、この反応をインドール環に隣接する炭素上で進行させれば、多様なインドール誘導体を自在に合成できると期待されます。しかしながら、競合する副反応が極めて速く進行することが問題となっていました。本研究では、微小な流路を反応場とするマイクロフロー合成法注4)を駆使し、反応の過程で生じる不安定な中間体の存在時間をわずか0.1秒程度に制御することで、副反応を抑制しつつ目的物を高収率で得ることに成功しました。なお、本反応は、フラスコを用いて行うと全く目的物は得られませんでした。
開発した手法は様々なインドール誘導体の合成に利用可能であるため、医薬品候補化合物の創出、および医薬品生産の効率化が期待されます。
本研究成果は、2023年3月4日付Springer Nature社の国際的学術雑誌「Communications Chemistry」に掲載されました。

 

【ポイント】

・医薬品候補として重要なインドール誘導体注1)の迅速、かつ簡便な合成法を開発。
・不安定な中間体に由来する副反応をマイクロフロー合成法により抑制。
・安価な反応剤を用い、短時間(120ミリ秒)でのインドール誘導体の合成を達成。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)インドール誘導体:
本原稿中ではインドール環を構造中に含む原料から誘導される、インドール環構造をもつ有機化合物のこと。

 

注2)ヘテロ原子:
窒素、酸素、硫黄原子などの、炭素と水素以外の原子のこと。

 

注3)ヘテロ原子のアルキル化反応:
炭素-炭素単結合を構成する炭素上でヘテロ原子が連結する反応のこと。

 

注4)マイクロフロー合成法:
微小な流路(通常内径1 mm以内)に溶液を流通させながら合成する手法。フラスコを用いる合成法と異なり、数ミリ秒で溶液を混合することが可能なため、短い反応時間を精密に制御できる。

 

【論文情報】

雑誌名:Communications Chemistry
論文タイトル:Verification of preparations of (1H-indol-3-yl)methyl electrophiles and development of their microflow rapid generation and substitution
著者:Hisashi Masui,* Sena Kanda, Shinichiro Fuse*
DOI: 10.1038/s42004-023-00837-1
URL: https://www.nature.com/articles/s42004-023-00837-1

 
【研究代表者】

大学院創薬科学研究科 増井 悠 助教布施 新一郎 教授
http://www.ps.nagoya-u.ac.jp/lab_pages/chemprocess/