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工学

2023.09.06

分光分析の高速化を実現する解析プログラムを開発 ~X線光電子分光測定の測定時間を従来の約1/5に~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学未来材料・システム研究所の原田俊太准教授の研究グループは、分光データの解像度を向上させる独自のアルゴリズムにより、分光測定の時間を短縮できる解析プログラム「スペクトル超解像」を開発しました。
分光測定は、半導体、バイオ、医療、化学などの幅広い分野で、研究開発や製品検査に活用されています。しかしX線光電子分光法(XPS)などの従来の分光測定では、S/N比(信号・雑音比)を高めるために長時間の測定が必要でした。今回開発した「スペクトル超解像」は、XPSの測定時間を従来の約1/5へと大幅に短くできることが確認されました。さらに約1/20まで短縮できる可能性もあり、XPSを用いた研究開発の加速が期待されます。また、原田俊太准教授はスペクトル超解像技術を実用化し普及させるために、名古屋大学発のベンチャー「SSR株式会社」を創業しました。
本研究成果は、2023年10月22日に第59回X線分析討論会において発表されます。

 

【ポイント】

・分光分析の高速化を実現する解析プログラム「スペクトル超解像注1)」を開発。
・X線光電子分光法(XPS)注2)の時間を従来の約1/5に短縮、最大で約1/20まで短縮できる可能性も示唆。
・ベンチャーを設立し、スペクトル超解像技術の実用化と普及を推進。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 
【用語説明】

注1)超解像:
低解像度のデータから高解像度のデータを得る方法。スペクトル超解像では、複数の低解像度のデータから、高解像度のデータを再構築する。

 

注2)X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy: XPS)法:
X線照射により放出される光電子の運動エネルギー分布を測定し、試料表面(数nm程度の深さ)に存在する元素の種類・存在量・化学結合状態に関する知見を得る手法。

 

【論文情報】

雑誌名:Journal of Electronic Materials
論文タイトル:Application of Bayesian Super-Resolution to Spectroscopic Data for Precise Characterization of Spectral Peak Shape
著者:Kota Tsujimori, Jun Hirotani and Shunta Harada
DOI: https://doi.org/10.1007/s11664-021-09326-4
※下線は本学関係者

 

【研究代表者】

未来材料システム研究所 原田 俊太 准教授