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数物系科学

2024.04.10

太陽系最大の爆発現象の謎に迫る ~4月打ち上げ太陽フレア観測ロケット搭載 国産高解像度X線望遠鏡初めて宇宙へ~

名古屋大学大学院理学研究科の三石 郁之 講師、作田 皓基 博士後期課程学生、安福 千貴 博士後期課程学生、藤井 隆登 博士前期課程学生、吉田 有佑 博士前期課程学生らの研究グループは、東京大学先端科学技術研究センターの三村 秀和 教授らと共同で、2024年4月に打ち上げ予定の日米共同太陽フレア観測ロケット実験Focusing Optics X-ray Solar Imager注4) 4 号機 (FOXSI-4) 搭載高解像度宇宙X線望遠鏡の製作を完了しました。
本望遠鏡は国産、かつ過去のFOXSIシリーズ搭載品を上回る高い解像度を達成しており、すでに検出器との組み合わせ、観測ロケットに組み込んでの総合試験を終え、射場にて打ち上げを待っています。
FOXSI-4は、世界で初めてX線集光撮像分光観測という新手法にて太陽フレアを観測するため、大規模な太陽フレア発生時に生じるプラズマの時間・空間・エネルギー情報を同時に取得することができます。これにより、フレア時の粒子の加熱・加速メカニズムの解明を目指します。
本成果は、太陽地球圏の宇宙天気予報や地球外生命探索にも大きな進展をもたらすことが期待されています。また、高解像度宇宙X線望遠鏡開発で得られた基盤技術は、X線天文学はもちろん、太陽物理学、太陽地球系物理学、プラズマ物理学分野等への応用・展開が待望されています。

 

【ポイント】

・2024年4月に打ち上げが予定されている日米共同観測ロケット実験FOXSI-4は、世界で初めてX線集光撮像分光観測注1)という新手法にて太陽フレアを観測する。
・名古屋大学からは、理学研究科が主要観測装置である2台の宇宙X線望遠鏡注2)の開発を担当した。
・FOXSI-4は大規模な太陽フレア時に生じるプラズマの時間・空間・エネルギー情報を世界で初めて同時に取得し、粒子の加熱・加速メカニズムの解明を目指す。
・本成果は、太陽地球圏の宇宙天気注3)予報や地球外生命探索にも大きな進展をもたらすことが期待されている。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)X線集光撮像分光観測:
望遠鏡と検出器を組み合わせ、光を集めて (集光) 画像を撮り (撮像)、光をエネルギーごとに分ける (分光) 作業を同時に行う観測のことを指す。X線天文学分野ではこれまでも多くの観測実績がありますが、非常に明るい太陽を対象にした場合、観測装置への要求が厳しくなり、実現が困難だった。
注2)宇宙X線望遠鏡:
宇宙X線を観測するための特別仕様の望遠鏡を指す。宇宙X線望遠鏡の性能を表す指標には、主に集光力と解像度が挙げられる。前者は限られた観測時間においてより多くのX線を効率良く集めるため、後者はより細かな天体の構造を調べるために必要となる。X線天文学において、国産の宇宙X線望遠鏡の飛翔体搭載実績は決して多くはなく、特に高解像度の宇宙X線望遠鏡は欧米の独壇場となっている。
注3)宇宙天気:
電磁波、高エネルギー粒子やプラズマ噴出等、太陽活動で引き起こされる地球近傍の宇宙環境変化のことを指す。宇宙天気において太陽は変動源となり、その影響を予想することを宇宙天気予報と言う。
注4)日米共同太陽観測ロケット実験Focusing Optics X-ray Solar Imager:
これまで2012、 2014、2018年に打ち上げられた日本と米国による太陽観測ロケット実験を指す。過去のFOXSIシリーズは比較的太陽活動が穏やかなタイミングにて打ち上げられ、太陽X線に対し世界で初めての集光撮像分光観測を実施してきた。この中では従来の観測では見つけることが難しかった、規模の非常に小さなフレア現象の検出に成功するなど、重要な科学成果を挙げている。

 

【関連リンク】

◆高解像度反射鏡開発のプレスリリース:
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/upload_images/20231214_sci.pdf
◆FOXSI-3打ち上げ成功のwebリリース:
https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/wp-content/uploads/2018/09/20180911_isee.pdf
◆ミネソタ大学のFOXSIのウェブサイト (英語):
http://foxsi.umn.edu

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 三石 郁之 講師
https://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/uxgj.html