・母親の持続性産後うつ注1)(産後にうつ傾向が長引くこと)は、子どもの短時間睡眠や長時間のスマホ利用などの望ましくない生活行動や多動様症状などに関連していた。
・遅発性産後うつ注2)(出産から数年経過後に起こるうつ傾向)は、母親の睡眠時間やネット利用時間、支援サービスの利用状況などに関連していた。
・産後女性のメンタルヘルスを継続的に支援することは、幼児の健全な行動を促進し得る。
名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻の西谷 直子 教授と田村 晴香 博士後期課程学生らの研究グループは、産後うつが長引く「持続性産後うつ」や出産数年後に出現する「遅発性産後うつ」には、それぞれに関連するライフスタイルがあることを新たに発見しました。
本研究は、日本の産後女性を対象に、産後から1年半にわたって2回調査し、食事・運動・睡眠などのライフスタイルやインターネット利用行動、育児感情などの項目から抑うつ傾向との関連などを解析したものです。解析の結果、産後のうつ傾向は出産後すぐだけではなく、約2年長引く人が24.1%存在していたこと、また、産後すぐは気にならなかったが、数カ月~数年経ち不調を来たす人が12.7%存在していたことが明らかになりました。
それらは母親自身の生活習慣だけでなく、子どもの生活行動や発達特性にも関連していました。持続性産後うつ状態の母親に育児されている子どもは、食生活が不規則であり、睡眠時間が短く、寝つきが悪く、スマホ利用時間が長くなっている傾向があること、さらに多動と思われる様子が見られることなどが明らかになりました。
産後女性への支援は、産後女性自身の健康において非常に重要です。それに加えて期間を限定しない継続的な支援やニーズに応じたよりオーダーメイドな支援がなされることは、望ましい育児行動に繋がり、それらは、幼児の健全な行動をも促進し得る可能性があります。
本研究成果は、国際学術誌『Maternal and Child Health Journal』(2025年1月20日)および『Nagoya Journal of Medical Science』(2025年8月26日)に掲載されました。
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注1)持続性産後うつ:
産後うつ状態が産後数週間から数カ月以内と比較的早く回復する状態ではなく、その後数年にわたって続くうつ傾向のことを指す。
本研究では、出産後5~8カ月時点で第1回調査を、その後1年半後に第2回調査を実施し、その両調査で日本語版エジンバラ産後うつ病自己評価表(EPDS)を用いて産後うつ傾向を調べた。両調査でEPDSスコアが9点未満の母親を “持続性産後うつ傾向無し”、9点以上の母親を “持続性産後うつ傾向有り”と定義した。
注2)遅発性産後うつ:
産後うつ状態が産後数週間から数カ月以内と比較的早く出現する状態ではなく、その後数年後に出現するうつ傾向のことを指す。
本研究では、第1回調査で産後うつ無しであった人のうち、産後2年経過時点の第2回調査でEPDSスコアが9点以上の産後女性を”遅発性産後うつ傾向有り“と定義した。
①雑誌名:Maternal and Child Health Journal
論文タイトル:Association Between Persistent Maternal Depression among Japanese New Mothers and their Toddlers’ Behaviors
著者:Haruka Tamura, Naoko Nishitani
DOI:10.1007/s10995-025-04049-y
URL: https://link.springer.com/article/10.1007/s10995-025-04049-y
②雑誌名:Nagoya Journal of Medical Science
論文タイトル:Association between maternal depression and smartphone use: a 1.5-year follow-up cohort study of Japanese mothers
著者:Haruka Tamura, Naoko Nishitani
DOI: 10.18999/nagjms.87.3.498
大学院医学系研究科 西谷 直子 教授, 主著者名:田村 晴香(博士後期課程学生)