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数物系科学

2026.04.22

世界初、スターバースト銀河の高温ガスの運動を直接測定!~XRISMが解明する超新星爆発エネルギーのゆくえ~

【ポイント】

・X線分光撮像衛星(XRISM:クリズム)注1)の高分解能X線分光観測により、スターバースト銀河注2)M82の中心領域に存在する高温ガスの速度の広がりを、世界で初めて直接測定した。
・その結果、この速度の広がりは従来の予測よりも大きく、超新星爆発注3)のエネルギーの大部分が高温ガスとして熱化している可能性が示された。
・さらに、この高温ガスは周囲の物質を巻き込みながら高速で運動し、その一部は銀河の重力を振り切って銀河外へ到達する可能性が示された。
・これにより、スターバースト銀河において物質が銀河内にとどまる過程と銀河外へ流出する過程の両方が明らかになり、銀河進化および宇宙の物質循環注4)の理解の進展につながることが期待される。

 

名古屋大学大学院理学研究科の三石 郁之 講師が参加するXRISM国際共同研究グループ(XRISM Collaboration)と、笹俣 聖也 博士前期課程学生、安福 千貴 博士後期課程学生からなる研究グループ(以下「研究グループ」)は、スターバースト銀河M82中心領域に存在する高温ガスの速度の広がりを精密に測定しました。スターバースト銀河では、大量の星形成に伴う多数の超新星爆発によって銀河中心部のガスが高温に加熱され、X線を放射します。この高温ガスが駆動源となり、周囲の物質を巻き込みながら銀河スケールの高速の流れが形成されると考えられています。このような流れは銀河風注5)と呼ばれ、さまざまな温度や状態の物質から構成されます。この流れは銀河内にとどまる成分を含むとともに、一部が銀河外へ流出する場合があり、銀河内外を結ぶ物質の輸送過程として重要な役割を果たします。
今回の観測により、この高温ガスは従来の予測を上回る大きな運動を持つことが明らかとなり、超新星爆発のエネルギーの大部分が高温ガスとして蓄えられている可能性が示されました。さらに、この高温ガスが周囲の物質を加速して流れを駆動するとともに、その一部は銀河外へ流出しうることが示されました。本研究成果は、「A fast starburst wind consumes most of the energy from supernovae」として2026年3月25日に『Nature』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)X 線分光撮像衛星(XRISM:クリズム):
宇宙X線観測衛星。2023年9月に打ち上げられ、同年12月から運用を開始した。高いエネルギー分解能を持つX線分光装置「Resolve(リゾルブ)」と、広い視野を持つX線撮像装置「Xtend(エクステンド)」を搭載する。高温ガスから放射されるX線を高精度で測定することで、物質やエネルギーの流れを明らかにし、天体の進化の理解に貢献する。

 

注2)スターバースト銀河:
爆発的に高い星形成活動を示す銀河。短い時間の間に大量の大質量星が形成され、それに伴って多くの超新星爆発が発生する。

 

注3)超新星爆発:
重い星がその一生の最期に起こす大規模な爆発現象。星の内部で作られた重元素を宇宙空間へ放出するとともに、周囲の物質に大きなエネルギーを与える。

 

注4)物質循環:
銀河内外にわたって物質が移動する過程を含む物質の流れ。銀河進化および宇宙全体の物質循環に影響を与える。

 

注5)銀河風:
多数の超新星爆発によって生じた高温ガスが駆動源となり、周囲の物質を巻き込みながら銀河内外へと広がる、さまざまな温度や状態の物質からなる銀河スケールの高速の流れ。

 

【関連リンク】

◆JAXAのM82 XRISM観測のプレスリリース :
(日本語) https://www.isas.jaxa.jp/topics/004246.html
(英語) https://www.isas.jaxa.jp/en/topics/004247.html

 

◆NASAのM82 XRISM観測のプレスリリース (英語):
https://science.nasa.gov/missions/xrism/nasa-jaxas-xrism-telescope-clocks-hot-wind-of-galaxy-m82/

 

【論文情報】

雑誌名:Nature
論文タイトル:A fast starburst wind consumes most of the energy from supernovae
著者:XRISM Collaboration      
DOI: 10.1038/s41586-026-10231-1
URL: https://www.nature.com/articles/s41586-026-10231-1

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 三石 郁之 講師
https://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/www/index.html