工学
2026.06.01
コンピュータでナノの凹凸を自在に操るディスプレイ 微小物体を動かすナノマシンで医療・ものづくりへの応用に期待
・ナノの表面凹凸形状をコンピュータ制御で動的に書き換えることができる世界初のディスプレイを開発した。
・コンピュータから制御した電場で、ナノ薄膜を隆起させ自在に表面凹凸をつくることができる。
・動く凹凸で微小物体を動かすことに成功し、形状や力の書き換えができるナノマシンへつながる可能性がある。
名古屋大学大学院工学研究科の佐々木 建 博士後期課程学生・日本学術振興会特別研究員DC1 (研究当時)と星野 隆行 教授らの研究グループは、酸化グラフェン注1)とピレン注2)から構成されるナノ薄膜の凹凸形状をコンピュータ制御により動的に形成/書き換えられるディスプレイを開発しました。また、形成した動く表面凹凸を用いて微小物体を推進操作することに成功しました。
近年、マイクロ・ナノ構造体表面の凹凸形状を瞬時に形成/変化させる技術は、物体間の接触状態や摩擦の制御を用いたナノロボティクスへの応用、あるいはエネルギー変換の高効率化につながる技術として注目されています。 しかし、従来の手法は、マイクロからナノの広い空間スケールにわたって表面の凹凸形状を瞬時に形成/変化させることは困難でした。
本研究グループは、これまでSiN基板に集束電子線(EB)注3)を走査することで、電場パターンを呈示するバーチャル電極(VC)ディスプレイを開発してきました。本研究ではこれを用いて、静電気力によりピレン結合型の酸化グラフェン(pyGO)薄膜を変形させ、ナノスケールの凹凸形状を形成することに成功しました。 静電気力による圧力がpyGO薄膜に加えられると、pyGO薄膜が押し上げられ、ナノスケールの隆起形状が瞬時に形成されます。 加える電場パターンの形や時間をコンピュータから制御することで、生成した凹凸形状を書き換え動かすことができました。この動くナノ凹凸形状を駆動力とすることで、微小物体を推進操作できることを明らかにしました。
今回の成果は、物体の表面形状や摩擦状態を自在に制御/駆動できる技術であり、コンピュータから物理的実体を生成する「バーチャル ナノマシン」の開発へつながることが期待できます。
本研究成果は、2026年4月28日付で米国の学術雑誌『ACS Applied Materials & Interfaces』 オンライン版に掲載されました。
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注1)酸化グラフェン:
原子1層分の厚さを持つ二次元的な炭素材料。高い導電性や熱伝導性をもつグラフェンを酸化処理することで合成され、表面にはさまざまな酸素官能基を持っている。溶液への分散性が改善されたことによる細胞への分子送達や、光学特性を利用したバイオセンサなどに用いられている。
注2)ピレン:
4つのベンゼン環から成る多環芳香族炭化水素(PAH)の一種。平坦な分子構造を持つことで、二次元材料の炭素骨格と容易にπ結合するため、分子間の非共有結合的な架橋剤として広く用いられている。
注3)電子線(EB):
負の電荷を持つ電子を高電圧によって加速し、ナノレベルまで集束させて照射する荷電粒子ビーム。微細構造の観察や加工に用いられている。
雑誌名: ACS Applied Materials & Interfaces
論文タイトル: Electric Field-Driven Dynamic Surface Topography of Pyrene-Linked Graphene Oxide Multilayer Film
著者: Ken Sasaki(名古屋大学), Hisataka Maruyama(名古屋大学), Takayuki Hoshino(名古屋大学)
DOI: 10.1021/acsami.5c22563
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.5c22563
【関連するプレスリリース情報】
●2025年1月23日リリース
「リアルなナノ粒子を自在に操作できる世界最小TVゲーム 情報空間と物理空間をつなぐ複合現実ディスプレイを開発」:
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2025/01/tv.html
●2025年5月15日リリース
「リアル空間に「ナノ機械」を出現させるインタフェース --デバイス作製不要で分子やナノ材料の移動、サイズ分別が可能に--」:
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2025/05/------2.html
大学院工学研究科 星野 隆行 教授, 主著者;佐々木 建(博士後期課程学生)
https://sites.google.com/view/hoshino-lab/top