・2012年から継続する現地観測でグリーンランド北西部カナック氷河の変動を解明。
・13年間で厚さにして5.4 mの氷が失われたことが判明。
・今後気温が1℃上昇すれば、氷の損失速度が2倍加速することを予測。
名古屋大学大学院環境学研究科の近藤研助教をはじめ、北海道大学大学院環境科学院博士後期課程の今津拓郎氏と同大学低温科学研究所・北極域研究センターの杉山 慎教授らの研究グループは、グリーンランド北西部カナック氷河において、2012年から現在まで継続して氷河変動の測定を続けています。急速に氷河の融解が進むグリーンランドにあって、その北西部における唯一の長期的な氷河観測であり、気候変動が氷河に与える影響を正確に理解する上で重要な観測活動です。
13年間におよぶ長期観測の結果、期間中に厚さ5.4 m(1年あたり0.4 m)の氷が失われたことが明らかになりました。氷の損失量と気象データの関係から、今後気温が1℃上昇すると、現在より2倍速く氷が失われることが分かりました。さらにカナック氷河の変動は降雪よりも融解により強く影響を受けており、グリーンランド他地域の氷河とは異なる特徴が明らかになりました。従って、グリーンランドの氷河変動を正確に予測するために、観測を継続する重要性が示されました。
グリーンランド北西部で唯一の長期観測データから氷河の変動を明らかにした本研究は、地球平均の3~4倍の速度で温暖化が進む北極域の氷河変動を理解する上で重要です。グリーンランドにおける氷河融解と今後の海水準上昇を正確に予測するための基盤データとなります。また。今後のさらなる継続的な現地観測は、カナック氷河から流出する河川の洪水被害を受ける現地社会への貢献にも繋がることが期待されます。
本研究成果は、2026年6月18日(木)公開のJournal of Glaciology誌にオンライン掲載されました。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
〈論文名〉
Surface mass balance and ice dynamics of Qaanaaq Ice Cap, northwestern Greenland (Kalaallit Nunaat), from 2012 to 2025(2012年から2025年におけるグリーンランド北西部カナック氷帽の表面質量収支と氷流動)
〈著者名〉
今津拓郎1,2、杉山 慎1,3、渡邊果歩1,2、近藤 研4、津滝 俊5,6(1北海道大学低温科学研究所、2北海道大学院大学環境科学院、3北海道大学北極域研究センター、4名古屋大学大学院環境学研究科、5国立極地研究所、6総合研究大学院大学)
〈雑誌名〉
Journal of Glaciology(雪氷学の専門誌)
DOI:10.1017/jog.2026.10178
URL:https://doi.org/10.1017/jog.2026.10178
公表日:2026年6月18日(木)(オンライン公開)
大学院環境学研究科 近藤 研 助教
https://cryoscience.net/