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生物学

2023.01.11

グーデア科胎生魚の胎仔は栄養リボン(胎盤)からだけでなく、消化管からも栄養を吸収できる ~魚類の胎生の"これまで"と"これから"を予想する~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の野村 隼平 博士前期課程学生、飯田 敦夫 助教、本道 栄一 教授らの研究グループは、東北大学との共同研究で、グーデア科胎生魚注2)の胎仔が母体由来の栄養分を吸収するための、新たな経路と分子機構を発見しました。
本研究では、グーデア科魚類の胎盤様構造として知られる栄養リボンが、胎仔における唯一の母体栄養吸収の経路ではなく、出生後の仔魚や成魚と同じく消化管でも栄養吸収できることを示しました。これは、栄養リボンを持たないグーデア科胎生魚の祖先が、どのように胎生形質を構築して現在に至ったかの解明に大きく貢献します。また、一旦獲得した栄養リボンを再び失った、唯一のグーデア科胎生魚だとされるAtaeniobius toweriの解析にも繋がります。グーデア科魚類は、脊椎動物での繁殖様式の変遷(卵生→胎生)を理解する上での有用なモデルになると考えられます。
本研究成果は、2023年1月5日付学術雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。

 

【ポイント】

・胎生魚の胎仔が体内の消化管でタンパク質を吸収できることを示した。
・吸収に関わる遺伝子発現は、消化管と栄養リボン(胎盤注1))で共通点があった。
・この成果は、グーデア科魚類における胎生形質獲得の理解に貢献する。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)胎盤:
「母体と胎児を連絡する器官」と定義されている。哺乳類の場合は、母体由来の脱落膜と胎児由来の絨毛膜で構成される。消化管に由来すると考えられているグーデア科の栄養リボンも、機能的な定義付けによれば“胎盤”に位置付けられる。

 

注2)グーデア科胎生魚:
カダヤシ目グーデア科グーデア亜科に分類される、およそ40種から成る胎生硬骨魚のグループ。近縁のEmpetrichthyinae亜科は卵生種で構成されており、卵生の共通祖先から胎生種が生じたと考えられている。メキシコ原産の淡水魚で、ハイランドカープのように観賞魚として世界中で流通している種もいる。

 

参考URL

*a サカナは消化管から胎盤を作った? ~グーデア科胎生魚で母子間物質運搬の仕組みを探る~(2021年6月30日)
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2021/06/post-16.html
*b 胎生魚類の赤ちゃんは、どのようにお母さんの栄養を吸収するのか ~胎盤の飲食作用で取り込んで分解することを解明~(2022年6月6日)
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2022/06/post-270.html

 

【論文情報】

雑誌名:Biochemical and Biophysical Research Communications
論文タイトル:Vitellogenin uptake activity in the intestinal ducts of intraovarian embryos in a viviparous teleost Xenotoca eiseni
著者:野村 隼平(生命農学研究科・博士前期課程)、横井 勇人(東北大学)、本道 栄一(生命農学研究科・教授)、飯田 敦夫(生命農学研究科・助教)
DOI: 10.1016/j.bbrc.2023.01.009
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X23000219

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 飯田 敦夫 助教
https://sites.google.com/view/animal-morphology