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総長のことば

平成30年度学部入学式祝辞

 

新入生の皆さん、名古屋大学への入学、おめでとうございます。皆さんは、大学受験という厳しい試練を乗り越えて、名古屋大学の一員となりました。本日ここに、新学部生2,183名を、新しい仲間として迎えられたことを、名古屋大学総長として、心から嬉しく思います。

 

皆さんは今日から、未来への希望に燃えて、この名古屋大学での生活を始めます。大学での生活は皆さんが過ごしてきた高校までの生活の単純な延長ではありません。名古屋大学は、皆さんが勉学や様々な活動を通して、多くの人に出会い、成長し、最終的には名古屋大学の教育目標である「勇気ある知識人」に脱皮するために、チャンスをつかむ場であり、チャレンジする場であります。

 

名古屋大学でのキャンパスライフが、皆さんにとって実り多いものとなるよう、総長として、また、先輩として、皆さんに歓迎と激励の言葉を贈りたいと思います。

 

皆さんは、これまでの学校生活の中で熱心に勉学に励み、すでに多くの知識を身に着けてきたことと思います。現代は、インターネットが発達し、その気になればどんな情報も瞬時にして手に入る時代です。これまでとは比べ物にならないくらいの情報があふれている時代であるといえます。しかし、これらの情報はあくまで情報であり、実態を伴った現実世界、リアル・ワールドではありません。情報それ自体は、現実とは離れた仮想の存在であるといえます。

 

私が皆さんに名古屋大学で学んで欲しいと思うことは、「自分の目で見、耳で聞き、身体で体験し、多様な人達と議論をしながら、社会の様々な課題を自分自身の頭で考えて理解し、課題解決の道筋を明確にしようと努力すること、そして、また、そのような習慣を身に着けること」です。名古屋大学のキャンパスでは、皆さん一人ひとりが自律的に成長していくための様々な環境が整っています。

 

多彩で独創的な教授陣、恵まれた施設や設備に加えて、名古屋大学には何よりも多様性に富むキャンパスがあります。皆さんがこれからの人生を歩んでいくうえで大切な、人との出会いの場として、多様性、ダイバーシティを特に重視しています。グローバリゼーションが急速に進む現代世界においては、皆さんが今後どのような分野に進もうと、世界的な視野、多様性の許容と連携は、未来社会を創り支えていく人材として期待されている皆さんには、欠かせない要素です。

 

キャンパスの多様化の柱は、ずばり、世界やアジアと結ぶ国際化と、女性の活躍促進です。名古屋大学は早い時期から、欧米の大学はもとより、アジア諸国との交流に力を注いでおり、留学生の受け入れを積極的に行ってきました。キャンパスの学生の8人に1人は外国からの留学生です。また、女性の活躍促進のための様々な取り組みや、社会や産業界との連携も着実に進めています。名古屋大学から海外に留学する学生も年々増加し、昨年度は短期長期合わせて1,000名を超える学生が海外で学ぶ機会を得ています。

 

名古屋大学の学生は、ややもすればおとなしいと言われがちでしたが、近年の学生の活動性や積極性は高まっており、キャンパスの雰囲気が明らかに変わっています。留学先も欧米だけではなく、広くアジア諸国に及んでいます。学生の時にこのような経験をすることは、皆さん一人ひとりが将来の自分の人生を考えるうえで、大きな影響を与えることになると思います。私は、名大生がもう一段ギアチェンジして、学修に、研究に、課外活動に、そして国際交流に、思う存分活躍してもらいたいと心から望んでいます。

 

さてここで、名古屋大学の歴史と未来を語ってみたいと思います。名古屋大学の源流は、1871年(明治4年)に創設された仮医学校・仮病院にさかのぼります。この年を名古屋大学の創基としています。この年は、明治維新で開国した日本が欧米先進国から学ぶために、ヨーロッパに一大使節団を派遣した年でもあります。日本の近代化のために、がむしゃらに学び、そして、海外の諸制度や技術を輸入し、それを日本的なものに変換し、近代化を成し遂げたわけです。来る2021年に名古屋大学は、創基150周年を迎えます。


 名古屋大学は1939年に最後の帝国大学になり、総合大学への歩みを始めましたが、間もなく終戦を迎え、極めて厳しい状況におかれました。建物や設備、人材、資金、何もかも足りない中で、多くの先輩たちの努力と、地元政財界の強力な支援の下、名古屋大学を、地方大学から国の拠点大学へ、そして、世界有数の大学へと大きく成長させるべく、実に多くの人たちが献身的に活動し、高い誇りを持って名古屋大学を盛り立ててきました。
 その結果、今日では、名古屋大学は日本を代表する大学の一つになっています。名古屋大学の研究力は特に21世紀に入り、大きく花開きました。皆さんが、よくご存じのように、学術研究の面では、21世紀に入ってから名古屋大学関連の6人の研究者がノーベル賞を受賞されました。これは世界的に見ても特筆すべき事実です。このような系譜を受け継いだ中堅若手の研究者が、これらの研究を一層飛躍させようとしています。また、新たな領域で、独創的で世界的な研究が生まれつつあります。

 

戦後の歴史の中で、名古屋大学は産業界に幾多の素晴らしい指導者を輩出してきました。その中には、本日ご来賓としてお招きしておりますトヨタ自動車株式会社名誉会長で名古屋大学全学同窓会会長の豊田章一郎様をはじめ、現代日本の経済と社会を牽引しておられるリーダーを、きら星のごとく輩出しています。これらの先達は、名古屋大学の自由闊達な環境の中で切磋琢磨する皆さんにとって、良い目標であり、ロールモデルとなるでしょう。

 

世界は今、多様な価値観や異文化が交錯し、21世紀に入ってからは、これまでの常識では想像できなかった世界を揺るがす出来事が次々に起こっています。

 

また、我が国では、世界でも類をみない超高齢社会がすでに到来しており、国の将来に対する不安が広がっています。国の内外で、解決すべき課題は山積しています。このような時代に大学で学ぶことの意味をもう一度考えてみませんか。

 

名古屋大学は3月20日に、文部科学大臣から指定国立大学法人の指定を受けました。これまで、本学を含む5大学が指定を受けています。指定国立大学法人は、いわば日本を代表する大学として、国際競争性を備え、大学改革を推進し、社会の持続的発展に貢献していくトップランナーとして期待されています。名古屋大学が指定国立大学法人に応募した際に提案した内容は、まさに、このような時代の課題解決を目指す大きなチャレンジそのものです。実現のためには大きな壁が立ちはだかっていますが、勇気を持って、皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思っています。

 

皆さんが、名古屋大学でのキャンパス生活を通じて、それぞれの領域の勉学に励み、専門性を高めるとともに、高い志と幅広い視野を持ち、多様性を理解して受け入れる広い心、そして、物事を動かしてゆくリーダーシップを身に着け、人類的な課題と向き合い、果敢に挑む人材、すなわち「勇気ある知識人」に成長することを、切に願っています。皆さんが名古屋大学で過ごすこれからの時間は、まさに自分を鍛えて大きくする絶好のチャンスです。ぜひとも、勇気と希望を持って前に進んでください。

 

名古屋大学での学生生活が皆さんにとって、実り多く充実したものになるよう、強い願いを込めて、私からの祝辞といたします。本日は本当におめでとうございます。