みなさんこんにちは!名古屋大学理学部化学科3年の大石です。
化学科では3年生から学生実験が始まります。記念すべき最初の実験は「ガラス工作」です!
「化学科たる者、実験器具くらい自分で作れるようになれ」ってことでしょうか。それにしては敷居が高い気がしますけど笑
この実験の最終目標はY字管を作ること!!そのためにはいくつかの基礎をマスターしなくてはなりません。
まずはその手順を順に追っていきましょう。
1.切断
各自に与えられたガラス管を切ります。初期状態では2mくらいあって、とてもとても扱える長さじゃないからです。
最初にヤスリで鋭い傷をつけ、「引っ張りが7、折るが3」の気持ちで力をいれると......パキッ!綺麗に折れちゃいます。
ミスったら手を切っちゃうかも...なんて心配しちゃいますが、意外と楽なもの。でも毎年けがをする人が続出するそうなので気を緩めてはいけません。
ここで切断して短くしたガラス管をこれから使っていきます。
2.伸ばし
まずはしっかり溶かしていきます。このときまんべんなく溶かさないと、あとできれいに伸びてくれなくて困ったことになるので、溶かすときはずっと指先でクルクル回さなきゃです。
溶けてきたなって思ったら外に出して真っ直ぐ伸ばすとこの通り!
細くなっても案外切れないもので、炎から出した後もクルクルするのを忘れないことがポイントです。ここでだいたい手のひら2本分くらいの長さにします。
細くなった部分の中心を炎で焼き切って終了です。
この工程を繰り返し練習することで炎の良い大きさやガラス管のまわし方など、基本的な動作を習得します。なにごともやはり反復練習が大切ですね。
3.仮止め
先っぽが変な形になっちゃったガラス管を有効活用する術です。
右手にその変なガラス管、左手に普通のガラス管を持ち、バーナーの火を大きくして中に入れます。
しっかり溶かしこんで、火から出していい感じにこねこね。
繋がったら、『伸ばし』に再利用です。さっきの写真で右手側をよく見てみてください。仮止めのあとがりますよね。こんな感じで利用します。
この仮止めの難しいところは、重心を保ったまま繋げないとクルクル回す時に満遍なく加熱されなくて後の工程に影響が出ちゃうことです。
4.焼き玉作り
焼き玉って聞くと、たこ焼きみたいで美味しそうな響きがしますけど、それとは全く違って加熱した部分を膨らませる術です。
膨らませたいところを炎で炙り、『伸ばし』で細くした先っぽからふっと息を吹き込むと、ぷぅっと膨れてくれます。シャボン玉みたい。
この膨れた部分は凄く薄くなっているので、簡単に割れてしまいます。ここで作った穴は後の工程で利用しますよ!覚えておいてください。
5.焼き切り
ガラス管を切りたいとき、最初に書いた『切断』では難しいこともあります。そんな時に役立つやり方です!
まずは切りたい部分にヤスリで鋭い切れ込みを入れ、熱したガラス棒の先っぽを押し付けると...ピキッ!!
簡単に切れちゃいます。
マジックみたいですが原理はとってもシンプルです。熱したガラスを押し当てたらその部分が熱で温まって膨張しますよね。それによって傷が広がりうまく切れるという寸法です。こんな感じで言葉で説明すると、「そんなもんかぁ」って思っちゃいますけど、実際に切るところをみるとテンション上がりますよ笑
6.ゴム止め
ガラス管にゴムホースを通しただけだと滑って取れやすいですよね。それを止めるためのゴム止め。ガラス管に太い部分・細い部分と、交互に山と谷を作ります。
まずは谷。ガスバーナーから出る炎をできるだけ細くして、軽く溶かしガラス管を左右に引っ張り作ります。
次は山。同じように軽く溶かして左右から軽く押します。
これだけの手順なので、聞く分にはとても簡単そうなのですけど、やって見るとこれが凄く難しいのです...。引っ張り過ぎてしまったり押しすぎてしまったり。
失敗作を量産してしまいました(´・ω・`)
7.動径管繋ぎ
最初に練習した『切断』で二つに別れたガラス管を繋ぎます。「じゃあ最初から切らなきゃいいじゃん!」なんて突っ込みが聞こえてきますが、この練習にもちゃんと意味があるんです。後で分かるのでしばしお待ちを。
さて、繋ぎ方に話を戻します。
繋げるガラス管を左右の手で持ち、ふち同士だけを炎で炙りとかし、トロトロしてきたら二つを繋げ合わせます!
イメージはP〇APで脳内補完して下さればほぼ間違いないかと。
つながったらあとはつなぎ目を見えなくしていきます。集中的に炎を当て、とけて来たらその部分を上にむけ、軽く息を吹き込みます。この作業を接着面全面でやればきれいにつながったガラス管の出来上がりです。
いよいよY字管
これらが出来るようになると、いよいよY字管の作成に移ります。あとひと踏ん張り!!
まずはY字管の上部分から。
左右を伸ばしたガラス管を用意。
(ここまで来ると慣れたもので簡単に作れるようになってたりして嬉しいものです笑)
このガラス管の中心を溶かしこんで、炎から出し......一気に曲げます!!!
(ぐにゃっ)
いい感じに曲がりました。
(写真を撮っていれば伝わるんですけど。許して下さい(´・ω・`;))
さてこの曲がった部分を集中的に溶かして焼玉を作ります!まずはぷぅっと膨らませ、そこを割るともう1本のガラス管と繋げるための穴が出来ますね!
写真はふくらませてる途中でシャボン玉部分が割れちゃったやつです。でもでも、よく見るとチューリップみたいに綺麗じゃないですか?笑
さて、出来た穴とガラス管の『動径管繋ぎ』です。ここのガラス管は『ゴム止め』を既にしてあるものを使います。
切断面をしっかりくっつけ、ひたすら溶かし調整していきます。ここまで来ると慣れたものですね♪
くっついたら後は余分なところを切り落として、完成です!!
以上でガラス工作は終わりです。
大学では専門的なことばっかりやっているかと思われがちですが、こんな手先の器用さがものをいう場面もあったりします。学科のみんなの新たな一面が見られたりととても楽しいです。
次回から本格的に"化学チック"な実験が始まります。といっても高校生の教科書に載っている反応なんかも出てくるので、また面白い実験があれば記事に書きますね!それではこのあたりで。
Profile
所属:理学部3年生
出身地:和歌山県