名大生ボイス

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大学生活全般

2018.11.22

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小川くんから見た授業-平和を作る「農学」

受験生のみなさん、こんにちは。小川高広です。

 

二学期も後半になり、高校三年生・受験生の皆さんは、大学や専門学校などの受験を控え、勉強で忙しいかもしれません。名古屋大学を目指す方は、センター試験や二次試験がこれからあり、もっと忙しくなると思います。体に気を付けて、前に進んでいきましょう。

 

ところで、高校二年生や一年生の皆さんは、卒業後の進路について、どうするか明確な目標を決めましたか。もしかすると、この夏に名古屋大学のオープンキャンパスに参加された方もいるのではないでしょうか。名古屋大学以外の大学でも、夏休み期間中にはオープンキャンパスが開催されていましたので、様々な大学を巡った方もいるのではないでしょうか。進学するか就職するか、進学するということは決めたけど、どの大学にしようかな???夏休み前にはいろいろな悩みがあり、高校の先生や保護者の方を交えて、進路について面談をしたかもしれません。夏休みや二学期を過ごし、少しはその悩みは解消されましたでしょうか。オープンキャンパスが開催された時はとても暑かったですが、季節は変わり、冬の到来です。時の流れは早いです。どのような進路へ進むのか、明確な目標を立て、それに向かって頑張ってください。もし、まだ目標がないならば、先生や保護者の方などとしっかり話し、また、高校の進路指導室や図書室などに置いてある進路に関する本をいろいろ読み、しっかり考えてみましょう。大学に行きたいけど、どのような学部に行くのか、まだ決めていないという受験生の方は、今回書いた農学の話をぜひ参考にしてください。あまり農学はなじみがないかもしれませんが、農学に興味を持ってもらえると嬉しいです。

 

農学と聞き、いろいろなイメージがあるかもしれません。そのような中、農学は「平和」を作る学問といわれることがあります。私はこの言葉を農学部の先生から聞いたときに、どのようなことなのかあまりわかりませんでした。皆さんはわかりますか。

 

今、世界中で紛争が起こっています。宗教や人種間、政治対立など原因は様々ですが、その理由の一つに、食料を巡る争いがあるといわれることがあります。食べ物そのものが火種になることもありますが、それよりも、食べ物を生産する土地が火種になるわけです。なぜなら、土地がなくては、食料生産ができないからです。ちょっと世界に目を向けて考えてみると、内戦など紛争が起こっている地域は、途上国といわれる経済や国の統治がしっかりしていない国々が多いように思います。

 

日本などの先進国は少子化や高齢化で人口は減少しています。しかし、途上国は人口がどんどん増加しています。日本のような先進国には食料生産を効率的に行う技術やノウハウ、肥料や機械があります。そのために、限られた土地でも効率的に食料を生産することができます。例えば、食料生産のために農薬が使われています。農薬によって、病害虫発生が抑制され、作物はその被害を受けにくくなっています。日本などでは農薬の管理が法律でしっかりと決められ、適切に使われています。そのため、安全性は高く、健康への被害を生むことはそうありません。また、機械化が進んでいます。田植えをするにしても、稲刈りをするにしても、日本では機械を使います。しかし、途上国では今も原始的な農業が行われています。例えば、田植えや稲刈りは人力です。以前、東南アジアへ行きましたが、多くの場合、機械を使っていませんでした。高価で買えないのです。農薬については適切に使われず、農薬の使い過ぎで作物を枯らすことがあります。また、農業にとって重要な農地を汚染し、場合によっては人への健康被害を生じていることもあります。なぜ、農薬を適切に使わないか、その理由はいろいろありますが、農家への正しい知識の普及が進んでいないことがあります。たくさん使えばいいという風に考える人も多いようです。

 

これに関連し、農業家や農業家を希望する人たちへの教育も十分ではありません。日本にある農業大学や農業高校のような農業を学べる学校は少なく、農業家のスキルアップは容易ではありません。また、農業家の方々は生計を立てるため農作業で忙しく、学校に行く時間がありません。教育は重要とはわかっていても、子供に対し、学校で学んでいる時間があったら、農作業を手伝って欲しいというのが親の考えのようです。また、その土地に適した作物について、研究も十分に行われていません。農業は地域性が高い分野です。日本には日本に適した作物があります。日本でちゃんと育っていても、暑い東南アジアで育つとは限りません。もちろん、日本国内でも同じです。東北や信州でりんごが作られていますが、気候が違う沖縄では、同じ品種を使っても、うまく育たないのと同じです。だから、その土地に合わせた作物が必要で、そのためには研究が必要です。品種改良を進め、その土地に適した作物を作る必要があります。しかし途上国では、農業のことを研究する大学や研究機関は限られていますし、研究には莫大な予算と時間がかかります。一つの品種を作るのに10年ぐらいかかるという話もあります。また、研究を進められる人材も必要です。途上国では教育システムが整っていないこともあるので、人材がしっかり育成されていない問題もあります。このような様々な要因が重なり、原始的な農業が行われています。人口が少なければ、原始的な農業でもうまく回っていくこともあります。しかし、生産性が低いために、人口の増加に食料生産が追いついていないのが現状です。そのため、生産性を上げようと、広い土地を求めるのです。それが過熱し、民族同士など土地をめぐる争いが起こるということになるのです。

 

もし、生産性が上がるのならば、争いは減るかもしれません。「農学」で生み出された研究成果によって、新しい品種が生まれ、土地を有効的に使えるようになるかもしれません。農業の生産性が改善され、最終的には人口が増加しても十分な食料を生産できることにつながります。もし、十分な食料生産ができるようになれば、生産性を向上させるための土地を巡る争いはなくなるかもしれない、、、その意味で、農学は「平和」に貢献し、食料を生産するだけではなく「平和」を作る学問といえます。農学が世界の平和に貢献できる可能性があるのです。もちろん、紛争にはいろいろな問題が複雑に絡み合っています。そのため、争いの解決はそう簡単ではなく、非常に難しいのですが、農学が平和に貢献する可能性を秘めていることを、知っておいても損はないと思います。

 

農学は、ただ単に食料生産を考えるだけの学問ではありません。農学の可能性について、農学部でしっかり学び、今後のキャリアに生かしてみませんか。もし、受験生の皆さんの中に、どのような学部に行こうか迷っている人がいるならば、農学部をお勧めします。

(写真の説明 東山キャンパスにある農学部の実験用水田、三重県で見た水田、ドイツを訪問した際に見た畑)

 

Profile

所属:農学部科目履修生

出身地:兵庫県