名大生ボイス

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大学生活全般

2020.04.08

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猿山さんから見た授業-文学部の授業って?1年生編-

みなさんこんにちは。文学部人文学科言語学専攻2年の猿山綾乃です。今回は私から見た文学部の授業について紹介します。と言いましても文学部は1年次、他学部と比較して専門の授業があまり多くはないので、あまり専門について詳しい話はできませんが、1年生で受けることができる専門科目についてお話します。

 

文学部の専門科目とは

皆さんの中で文学部の専門科目というと、いわゆる純文学、古典であったり、英米文学であったりを想像される方が多いと思います。しかし、名大の文学部で学ぶことができるのは、そういった狭義の文学だけではなく、もっと幅広く、"人文学"について学ぶことができます。詳しくは以下のコラムをご覧ください。

 

コラム ~名大文学部でいう人文学とは~

名大文学部に入学してから、学部のガイダンスや文学部の専門科目などでよく言われるのは、文学・部ではなく、文・学部であるということです。つまり、文学部は文学を学ぶだけのところではなく、文、つまり人間に関することすべてを学ぶ学部である、学部の名称としては文学部ですが実際の中身としては学科名である人文学をやっているということです。人、文に関することであれば何でもできるので、とても幅広い学びが可能なのが文学部の特徴です。

名大内でも「文学部です」というとよく聞かれるのは「文学部で何を学んでいますか?」、「そもそも文学部って何が学べるのですか?」ということです。はっきり言ってしまえば、何でもできます。文系の学問のうち、教育学部で扱う教育学でも、法学部で扱う法学でも、経済学部で扱う経済学でもないものは大体文学部で学べるといわれます。このような観点から見れば、文学部は大学で何を学びたいかまだわからない、迷っているという人におすすめの学部かもしれないですね。

 

文学部の1年生では、前期に人文学入門Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、後期に日本文化事情と異文化理解を受講することができます。学部学科によっては、1年生の段階から専門科目をしっかり学べるところもありますが、文学部では1年次は専攻がきちんと分かれていないため、あまり専門を深く学ぶということはしません。しかし、逆に言えば、文学部で学ぶ上で基礎となる人文学全般を幅広く学ぶことができます。その分2年次以降は専攻に分かれるので、専門を極めることができます。1年次は幅広く学び、2年次以降は専門を深く学ぶのが名大文学部の特徴です。

また、さまざまな専攻がある分、どの角度から研究をするかによって専攻を考える必要があります。例えば、アメリカについて研究するとしても、英語の言語学的立場から研究するのか、アメリカ文学的立場から研究するのか、それともアメリカ史的な立場から研究するのか、はてまたアメリカにおける社会学について研究するのかなどさまざまな立場から研究できます。自分の一番興味があるのは何なのか、どの視点から研究したいのかをきちんと見極めてから専攻に進む必要があります。その見極めの際に役立つのが次に紹介する「人文学入門」です。

 

人文学入門

人文学入門はⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳに分かれていて、文学部で学ぶことができるすべての専攻の概論や、教授陣の研究している分野について学ぶことができる授業です。オムニバス形式の授業なので、毎回先生と授業で取り扱う内容が変わります。この人文学入門で実際に授業を受けてみて、2年次に分かれる専攻を決める人も多いです。授業の内容だけでなく、それぞれの専攻ではどのような研究ができるのか、研究室の雰囲気、その研究室の魅力、どんな学生に来てほしいかなども教えてもらえます。授業と専攻紹介が合体したようなもの、と考えていただけるとイメージ通りだと思います。また人文学入門は文学部の進級・卒業条件にかかわる科目なので、必ず人文学入門のⅠからⅣのうち、どれか1つは受けなくてはなりません。行きたい専攻が入学段階で決まっている人や特定の分野にしか興味のない人など1つ2つしか授業を取らない学生は多少いますが、多くの学生が人文学入門ⅠからⅣの4つ全てを受講し、どの専攻に進むのかを考えたり、専攻が決まっている人でも知見を深めたり、他分野の知識を得たりするために受講しています。人文学入門はどの科目も論述式のテストと出席で評価されます。人文学入門ⅠからⅣ、どれでもテストの形式は講義の中で特に興味を持った2つの授業・テーマに関する論述なので、自分の興味がある内容についてもっと深く学ぶことのできる機会となります。たとえ自分の興味のある専攻でなくても、実際に授業を受けてみたら面白くて興味がわき、その専攻に進んだ、という友人もいます。

 

コラム ~文学部の分属について~

文学部には専攻があり、2年生の前期から各専攻に分かれます。そのための分属希望調査が1年生の10月下旬から11月上旬にあるので、それまでにはどの専攻に進むのかを決める必要があります。専攻を決める際、人文学入門や文学部1年生の全体や各研究室で開かれる研究室紹介、個別で研究室を訪問するなどをして選ぶことができます。例年は、ほとんどの学生が希望通りの研究室に配属されます。希望人数が各専攻の受け入れ定員を上回った場合、面接やレポート、試験などによる選考が行われることもありますが、おおよそ、希望通りに配属されると言われています。私の学年では、英語学専攻のみ面接試験を行いましたが、希望した学生全員が選考試験に合格したらしいです。

 

コラム ~文学部の専攻について~

4つのコース(文芸言語学コース、哲学倫理学コース、歴史学・人類学コース、環境行動学コース)、21個の専攻(研究室)(言語学、日本語学、日本文学、英語学、英米文学、フランス語フランス文学、ドイツ語ドイツ文学、中国語中国文学、哲学、西洋古典学、中国哲学、インド哲学、日本史学、東洋史学、西洋史学、美学美術史学、考古学、文化人類学、社会学、心理学、地理学)があります。

分属に分かれても他専攻の授業を履修することは可能です。(というか卒業に必要な単位数に他専攻の授業が含まれていますので受講することになります。)

 

人文学入門Ⅰ

人文学入門Ⅰは、主に言語や文学について学ぶ文芸言語学コースについての授業です。文芸言語学コースには、言語学、日本語学、日本文学、英語学、英米文学、ドイツ語ドイツ文学、フランス語フランス文学第1、フランス語フランス文学第2、中国語中国文学の専攻があります。(注:学部の場合です。大学院(人文学研究科)まで含めると、日本語教育学、英語教育学、応用日本語学もあります。しかし学部生が所属できる研究室はこれら3つを除いた9つの専攻です。)言語や文学、それを取り巻く文化についての学びができます。今年度は皆さんが知っている『不思議の国のアリス』や、フランスの恋愛小説、音声学、生成文法などの講義がありました。特に私の印象に残っているのは、日本語の変化の授業です。日本語という身近な言語についての話だったので、自分の普段の体験と結びつけて考えることができ、興味深かったです。若者言葉やネットスラングなどこのようなことも研究対象になるのだと気づかされた授業でした。

 

人文学入門Ⅱ

人文学入門Ⅱは、哲学系の科目を学ぶ哲学倫理学コースの授業です。哲学倫理学コースには、哲学、西洋古典学、中国哲学、インド哲学があります。同じ哲学を扱う中でも、各専攻によって雰囲気が全く違っていてとても面白いです。具体的な授業内容としては、自由意志や政治哲学、『マハーバーラタ』、古代ギリシアの美しい死などを扱いました。私の受講した年は、インド哲学と中国哲学は先生と研究室の都合上同じ教授から複数回にわたり授業を受けました。しかし両方とも回によって内容が結構違い、面白かったです。私の印象に特に残っているのは、『マハーバーラタ』の授業です。全18巻にもわたり聖書の4倍の長さがあると言われているマハーバーラタの概要を教授の面白おかしい話とともに学びました。高校時代世界史の授業で出てきた叙事詩だったので概要だけでも知ることができてよかったです。想像していたよりも奇想天外な物語でした。

 

人文学入門Ⅲ

人文学入門Ⅲは、主に歴史について学ぶ歴史学・人類学コースの学びができます。歴史学・人類学コースには、日本史学、東洋史学、西洋史学、美学美術史学、考古学、文化人類学があります。研究室によって、専門とする地域や時代、研究対象が異なるので、どのコースで学ぶかが重要になってきます。歴史学・人類学コースの特徴として、相対的にかもしれませんが文学部の中では比較的男子が多いイメージがあります。具体的な授業内容としては、日本の天皇制、クレオパトラの歴史的意義、名古屋大学構内遺跡の発掘調査についてなどがありました。高校までに受講した日本史や世界史とは違い、暗記をすることはなく、なぜそのような戦いが起きたのか、など、その出来事の背景を深く学べて、今まで自分が受けてきた歴史の授業と大学での歴史の授業の違いに気づかされました。

 

人文学入門Ⅳ

人文学入門Ⅳでは、環境行動学コースの学びができます。環境行動学コースには、心理学、社会学、地理学があります。統計を使ったり、実験をしたりと文学部の中でも理系に近い内容を学ぶことができるコースです。同じ社会学でも、ワークライフバランスについてであったり、災害についてであったり、様々なものがあります。同じように心理学、地理学においても様々な観点からの学びができるので、分属を決めていたとしても、その後どのような学びが可能なのかを知る機会にもなります。この授業は高校までの授業ではあまり触れられていない分野だったので、とても興味深かったです。

 

日本文化事情と異文化理解

日本文化事情

日本文化事情は、1年の後期の前半(秋Ⅰ期)に受けられる科目です。2年から取ることができる「人間と倫理」と、「日本文化事情」プラス「異文化理解」が基盤基礎科目なので、どちらかを履修する必要があります。「日本文化事情」を取ると、文学部1年の後期の全休は無くなってしまうので、月曜日を全休(授業が1コマもないこと)にしたい場合は2年生のときの「人間と倫理」をとることをオススメします。私は月曜日の5限に基礎セミナーがあったため、全休は諦めて日本文化事情を取りました。今年は日本文化の中でも特に日本語についての学びをしました。どの名前が多いのか、若者言葉について、方言についてなどさまざまな日本語の側面を学ぶことができます。私は地元が東海地方ではないので東海地方の方言を学んだ際は、「確かにこの表現は地元では使わないけれど名古屋に来てから言っている人をよく聞くな」といった気づきができました。歴史的な縦のアプローチ、地域的な横のアプローチ、どちらもできて日本語に対する興味がわきました。なので日本語や言語に興味がある方にはとてもオススメしたい科目です。評価は中間レポートと期末レポート、出席点でした。

 

異文化理解

日本文化事情が後期の前半までで終わってしまうので、後期の後半(秋Ⅱ期)は異文化理解を受講します。異文化理解ではさまざまな専攻の先生がたから異文化理解について学ぶことができます。今年は文化人類学、英語学、日本史学、哲学などの先生がたから異文化理解について学びます。アフリカのある部族の文化を学ぶといういかにも異文化なものから、日本史、日本国内での異文化まで学ぶことができます。異文化だからと言って国外だけではないということを学べた科目でした。特に印象に残っているのは英語学の授業です。英語の語源について学んだ授業だったのですが、英語が思っていたよりもたくさんの言語から影響を受けて成立している言語だと気づかされました。

 

以上が1年生のうちから受講できる文学部の専門科目です。文学部だからといっていわゆる"文学"だけではない学びができることが伝わったでしょうか。幅広く「人間」について様々なことが学べる名古屋大学文学部でみなさんのことをお待ちしています。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

Profile

所属:文学部2年生

出身地:栃木県

出身校:栃木県立佐野高等学校