名大生ボイス

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大学生活全般

2022.08.25

  • 大学生活全般

文理選択

220824tsukamoto.jpgこんにちは、名大工学部4年の塚本です。4年前期も終わり、いよいよ大学卒業が目前に迫ってきました。なかなか紆余曲折のある大学生活でしたが、無事卒業できることを祈ります。
さて、今回は、受験において大きな選択のうちの一つである「文理選択」について、大学生活を一通り終えそうなこのタイミングで紐解いていこうと思います。


この記事はこんな人におすすめです。
① 「とりあえず理系」にいこうと思っている。
② 大学で学びたい事が具体的に思いつかない。
③ 偏差値50-60の普通科の公立高校

反対に、このような人には役に立たないかもしれません。
① 将来の目標が具体的に決まっている。
② 学校のカリキュラムが、一般的な進度と大きく違う高校(中高一貫校や私立の高校に多い)
③ 文系と理系で受けられる授業の質が大きく違う高校(実質、理系 = 特進クラスになっている )
先に前置きしておくと、最終的にどちらが良いか、という結論は出しません。今回は、どのような観点で決めたら良いのか、よく挙げられる事を例に出し、それについて私なりに考察していく形で進めていこうと思います。
というのも、高校によって授業の進度も質も様々で、理系・文系の重みも違ってくるというのがあるからです。今回私は、「一般的なカリキュラムで進める公立高校出身の工学部生」という立場で色々考察しています。しかし、人によってはこれは違う!と思うところがあると思います。
これを読んで下さっている皆さんも、ぜひ、自分自身で答えを考えてみたり、周りにいる先生や先輩に聞いたりしながら議論を深めていってください。

 

数学が好きなので理系にする(科目で決める)

好きな科目を切り口に決めていく、というのは一般に良く使われている手だと思いますが、果たしてこれは良い決め方なのでしょうか。
とはいっても、そもそも大学で何を勉強するのか、サッパリわからない状態で「これがやりたい」と言えるのはごく稀なケースだと思います。
そうなると、結局は今取り組んでいる勉強の延長で考えるしかなくなってきます。ただ、大学の専門的な勉強は高校の延長にあるとはいえ、大学と高校の勉強は、その掘り下げ方の深さや習得すべき知識量が格段に違ってきます。
高校では数学が得意で、スルスルと解けていたものが、大学では授業すらついて行くのに必死、単位を取るのもギリギリというのはよくある話です。(恥ずかしながら筆者がまさにそうです。)
これには、授業の自由度が増して自己管理がより問われるようになるとか、範囲の多さ・難易度の高さから受験勉強中やテスト期間中のような勉強量が常に求められるようになるとか、色々原因は考えられますが、高校の延長で大学の専門を考えたことによるミスマッチが大きいのではないかなと思います。
正確に言えば大学の勉強は高校の勉強の延長になっていません。理系の科目に関しては、大学の化学の導入はどちらかと言えば高校物理でいう原子の範囲や熱力学の部分に近いし、物理なんかはほとんど数三みたいなものです。数学になれば定義や問い直しの連続でもはや哲学や何か違う国の言語を論述しているのではと思う程です。数学の問題がパズルゲームみたいで解くのが楽しいという人には、これらの正解が途方もないものを掘り下げていくのは結構しんどいものがあると思います。
あくまで一例であるのと、私の話ではありますが、むしろ実用性が高く、高校で使うような数学的思考を問われる、プログラミングやデータサイエンスと言った分野の方が惹かれるのではないかと思います。
こういった分野は実は文系からも学べる機会が多く、経済学部では数三をやったり統計をやったりします。文系の情報学部なんかもあったりします。
数学の出来る文系としてポジションを取りつつ、語学や史学を学んで幅広い知識をつけていくと言う道も結構いいんじゃないかなと思います。

 

反対に、理系にして良かった事と言えば、数三をしっかり噛み砕いて学ぶ機会を得たということが一番かなと思います。もちろん大学や社会人になって微分積分を学ぶ人もいますが、なかなかこの微分積分という概念は取っ付きにくいものがあると思います。
しかし、どんな理系の専門分野にもだいたいこの微分積分が絡んできて、高校からのベースがないとなかなか理解が難しいというのはあります。そもそも私が理系の専門分野は独学でも学べると述べていたのも、無意識の内に高校数学で培ったベースが活かされていたから出来たとも言えます。
理系的な専門分野のベースを作り、そこから派生する様々な学問を習得していくという意味では、やはり理系が適していると言えます。
これまで数学をベースに述べてきましたが、これは他の科目にも言えると思います。例えば英語にしても、英語が得意な理系としてポジションをとっていくのか、高校英語をベースにコミュニケーションの幅を広げ、そこから新たに学びを得ていくのか、得意科目をどう使っていくのが自分にとって一番しっくり来るのか、という観点で考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみによく言われていることでもありますが、苦手科目で考えるというのは私もお勧めしません。と言うのも、実は勉強量が足りないために点数が伸び悩んでいたが、受験で十分に勉強量が確保出来たために苦手科目が飛躍的に伸びた、今までの勉強法や塾を変えたら伸びた、など、高校の範囲に限って言えば、思っているより簡単に苦手科目は覆せるからです。
受験勉強は学問への理解というよりは、ノウハウ的な側面が強く、ノウハウさえ得てしまえば、英語が出来なくても共通テストで9割取るなんて事はザラです。
とはいえ、やはり自分に向かない分野はどうしても出てきてしまうので、苦手な科目はノウハウで補助しつつ、得意な科目をどう生かすかを軸に考えていくと良いかなと思います。

 

理系の方が就職がいいので理系にする

国公立に関して言えば、理系は何もしなくても企業が向こうから来るというのは案外間違ってはいないと思います。
ただ、何もしなくてもやってくるのは、自分の専門分野に関連する企業や、研究室と縁のある企業に限られていて、例えば自分の研究室があまり企業と関わりがなく、専門分野が合わない場合は詰みます。
研究室は思っているよりも結構適当に決まってしまうし、いくら調べて入ったとしても自分の専門分野が合わないことも珍しくありません。そうなった時に、一般的な就活をしない限り、大学を出て就職したとしても合わない環境に延々と居続けることになりますが、この理系就活というのが結構大変です。
今、就活はどんどん前倒しになってきていて、早い人は2年の後半、大体が3年の夏前には始めるという流れになってきています。しかしこの2年後半から3年というのは、1、2年で学ぶような一般教養を終え、専門的な基礎科目に取り組み出すという時期で、授業が最も詰まっている時期とも言えます。そんななか中途半端に就活しようものなら内定も単位も落とすことになりかねません。
もちろん理系というアドバンテージは今でも有効ですが、時間の無さから他の就活生より十分な準備が出来ず、そのアドバンテージを生かし切ることが難しいです。

 

更にネックなのが、それだけ授業に時間を割いていても、まだ研究に取り組むことは出来ないため、課外活動も出来なければ研究テーマもない、就活で話すことが何も無い、となりがちです。
就活の面接では学生時代に力を入れたことを中心に話を広げていきますが、最近は特にオンラインで幅広い活動の機会が得られるようになったこともあり、この学生時代に力を入れたことが凄まじくインフレしていると思います。能力面でも、もはや資格がどうこうといった話ではなく、実際に学生時代にプログラミングやデザインなどの専門的スキルを身につけて、既に仕事を得ている、半社会人的な学生もチラホラいます。 実際に選考が進む中で、実務に近いようなワークを進めて個々人の能力を見ていくというような企業も多く、そんな中で学歴1つで戦うというのはあまりにも心細いものです。
個人個人の特性や能力を重視していく、といった風潮が強くなってきている今、もはや理系、文系、学歴といった序列は意味をなさなくなってきています。
逆に考えると今は文系理系がフラットになってきているとも言えます。また、今は若年層の減少からか、全体として就職難よりも、人材不足の方が叫ばれています。新卒採用に関して言えばむしろ売り手市場、自分の得意なものを生かしてどう働いていくのか、一人一人の生き様が問われるような時代になって来ていると言えます。あくまで私の一意見ですが、今は就職やその先の事を考えて、と言うよりは、自分が今何をしたいのか、何を学びたいのか、自分の内面に目を向けて考えてみてはいかがかなと思います。

 

雰囲気で決める

最後にこの雰囲気で決める。何となく友達が多いから決めるといった観点ですが、一番愚策だと思われつつ、同時に意外と結構大事な観点だったりするのではないかなと思います。
一般に文系はコミュニケーション、理系は個人の能力が重視されがちなイメージがありますが、このイメージは高校を出て大学に入り、就職してからもずっと根っこにあるような気がします。
そもそも文系職は営業やマネジメント、通訳者や弁護士など、人と関わることを基盤とした職業が多く、そのためにコミュニケーションそのものである語学を学んだり、世界史や日本史などの人間の文化や歴史を学んだり、人と人との関わり方、社会のあり方を考えていく所に本質があります。そのため他者と協調しつつ自分を主張していくようなコミュニケーションのとり方が上手い人ほどのし上がっていく、と言うような文化はずっと続くと思います。
反対に、理系と言えば専門職が多く、口先の誤魔化しではなく、結果や知識量で語るような、いわゆる仕事人的な人が重宝される傾向にあると感じます。どんな仕事でも能力差が目に見えて分かりやすく、良くも悪くも実力主義的な風潮が続いていきます。
あくまでも理系・文系という大きな括りではありますが、文化が違えば、そこに集う人も違ってきます。もし、自分の周りにいる理系・文系で合わないようなタイプが居れば、その先も合わないと言った場面は出てきます。反対にその環境を心地よいと感じることが出来れば、そこに安心して身を置き続けるのが良いと思います。
自分の周りにいるどんな人が文系・理系を選択し、どんな道へ進もうとしているのか。周りの人からヒントを得て考えてみると意外と新しい発見があるかもしれません。

Profile

所属:工学部機械・航空宇宙工学科4年生

出身地:岐阜県

出身校:岐阜県立斐太高等学校