みなさん、こんにちは。名古屋大学工学部3年生の小林です。大学1年生の皆さんは、入学から半年が経ちだいぶ生活に慣れてきた頃でしょうか。後期から学生実験が始まり、初めての実験レポートを書くことにドキドキしている方もいるのではないかと思います。実験レポートはただの課題ではなく、学びを深めるための大切なツールであり、将来の卒論などを書く練習にもなります。今回は、実験レポートの基本的な書き方や気をつけること、そして高評価を得るためのコツをお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
⚫︎実験レポートとは?
なぜ実験の後にはレポートを書かなければいけないのでしょうか。科学の世界では“実験”は行って終わりではなく、その手段と結果をまとめ、発表までして初めて終わりになります。実験をしている時は楽しいけど、後でレポートを書くのはめんどくさくて嫌だという人も多いと思います。しかし研究という観点で見ると、「意味のある結果を見つけ、発表するために実験を行う」ということが、レポートや論文執筆のために実験をする順序なのです。理系学生は実験レポートを書くことが多々あると思いますが、まずはレポートの重要性を理解しておきましょう。実験レポートは
「目的」や「操作(方法)」、「結果」、「考察」が基本的な構成になります。この構成に沿って、どのように記述していけば良いかを紹介します!
⚫︎目的
まず、最初に書くのが実験の目的です。なぜこの実験を行うのか、どのようなことを学びたいのかを明確にします。授業としてやらなければいけないからやっていて、目的なんて考えていないという人ももしかしたらいるかもしれません。学生実験は新しい実験ではなく、すでに理論的に分かっている安全な実験ばかりですが、実験して確認することは科学の世界ではとても重要なのです。そのため、どんな実験にも確かめる意図や、何かを学んでほしいという先生の気持ちが詰まっています。「この実験で学生が理解できるか、難しすぎず楽しめるか」と学生のことを考えて設計し、内容についてのフィードバックを求める先生もいます。それほど考えられているものなので、しっかりとその意義、目的を汲み取り、レポートの最初に記述することが大切です。ここで先生の意図と一致する目的を書くことができれば、「しっかりと理解して実験しているな」と思っていただけるはずです。また、目的は“簡潔に”説明することが重要です。レポートの最初に目的だけで何ページも書いてあったら、先生も読む気がなくなりますよね。必要最小限で実験の意義やねらいをまとめましょう。
⚫︎操作
ここでは実験の手順を詳細に、具体的に記述します。手順は具体的になるべく時系列に合わせて整頓しますが、箇条書きにはせず連続した文章になるようにしましょう。この際、できれば写真や図、表を使って視覚的にわかりやすくすると良いでしょう。複雑な機械の操作などは文章より写真や図を使うと良いです。この際に重要なのは、使用した器具や試薬、実験の流れを具体的に書くことで、他の人が再現できるようにすることです。この”再現性“が実験では大切なことの一つです。ただ「こうした」と書くだけではなく、何をどのように使ったのか、試薬の量はどの程度かなどを詳しく書くことで、他の人が全く同じ操作を再現できます。他人が再現できない実験手順はいくらでも嘘をでっち上げられることになり、実験として価値を持ちません。また、実験中に注意した点や工夫した点も記載すると、より良い印象を与えることができます。
⚫︎結果
実験結果の部分では、得られたデータを整理して示します。多くの場合、結果は数値で出てくると思いますが、ただ数値を記載して終わりではなく、グラフや表を使って一目で結果が分かる状態に整頓しましょう。また、似ているデータや対照群のデータなどはグラフを重ねたり、隣に並べたりして比較できるようにするのも良いです。そして、データを羅列したら結果について考察しましょう(考察は次の項でまとめます)。結果のセクションで大切なことは、視覚化を行うことと、正確な結果を記述することです。有効数字を意識しながら正確な値を出しましょう。もし、実験が思うように進まず、失敗して想定と違う結果が得られても、データを改竄してはいけません。実験において結果の改竄は最もやってはいけないことで、そのせいで評価が下がったり単位が出なかったりするかもしれません。想定と違う結果が出ることは悪いことではありません。
例えば化学反応の実験では、理論上では100 g得られるはずが80 gしか得られないことは多々あります。これは想定とは違う化学反応(副反応)が起こったり、重さを測っている際に風で物質が飛んでしまったり、さまざまな要因で誤差が生じているためです。ずれた理由については、「考察」の項で詳しく考察すれば良いのです。理論と違う結果が出ても評価は下がりません。むしろその理由を考察できれば評価が上がるため、違う結果が出たら悲しむよりも「考察できることが増えた!」と喜びましょう!
⚫︎考察
次はレポートで最も大切な考察です。ここでは実験結果を基に自分の分析と考えを述べます。なぜその結果になったのか、結果が期待通りであったかどうか、実験結果の誤差の原因や問題点は何だったのかをしっかり分析しましょう。実験の結果が自分の予想と違えば、原因を探究しなければなりません。理論と全く同じ実験値を得るのはほとんど不可能なので、考察する必要がないということはありません。もし考察していくうちに、今回の実験の問題点や失敗した点が見つかれば、対策案を書くことも忘れないでください。次に同じ実験をするならば、どのように改善するべきか、操作をどのように変えると誤差は減らせるのかなどについて提案しましょう。ここまでできるとより高評価を取れるはずです!
また、理論値とのずれだけでなく、実験結果で得られたデータの意味についても考察します。例えば、対照群のデータを比較して、この操作をした時はこのような影響が生まれ、値やグラフが違ってくる、という因果関係について考えましょう。
例えば、30 ℃と70 ℃の水に砂糖を溶かす実験では、70 ℃の水の方がより多く溶けます。これは、温度が高いと水分子の運動エネルギーが増し、より積極的に砂糖分子に作用するようになり、砂糖分子が分子間相互作用も比較的弱く親水性なのも相まって溶解度が上がり、その結果、70℃の水の方が溶ける量が増えることになります。このように、値の変化と現象を理論立てて組み合わせることで、優れた考察が出来るようになります。自分でこのような考察をいくつもするのは大変なので、似た研究の論文や書籍を探し、先行研究や他の研究との比較も含めると良いと思います。参考にした文献は必ず参考文献に記載しなければなりませんが、先人の知恵を借りると自分が悩んでいた答えがあっさり見つかるかもしれません。
⚫︎課題
実験レポートによっては課題が出されることがあります。考察は人によって内容が変わりますが、全員に必ず考察してほしい時に、先生は課題としてそれを出しているのだと思います。課題になる内容はその実験において核となるような、知っていなければならないものなので、絶対に理解して回答しましょう。多くの場合、教科書や参考書にヒントか答えがあります。そうではない場合でも、図書館で調べれば見つかるはずです。先行研究も多くあるはずなので、論文を調べて引用しても良いと思います。今はインターネットで簡単に論文探しができるため、私もWEBで探すことが多いのですが、読む力が高まり早く課題が終わると感じています。
⚫︎参考文献
参考文献の項目では、使用した文献や資料をリストアップして、情報の出所を明確にします。参考文献に記載せずに内容を勝手に引用すると著作権侵害や盗用になってしまうので、教科書や参考書でも必ず記載しましょう。先生に指定されていればその方法で、指定がなければ世間一般に用いられているルールを使うことをオススメします。APAスタイルという引用方法がよく使われているので参考にしてください。
〜高評価を狙うためのポイント〜
ここからは実験レポートで高評価を得るためのポイントについて述べていきます。高評価を狙うポイントはいくつかあります。
⚫︎構成(フォーマット)に必ず従う
各段落が論理的に繋がっているか確認し、読みやすい文章を心がけましょう。「目的」「操作」「結果」「考察」「課題」「参考文献」のフォーマットを極力守りましょう。他の構成で書きたい気持ちが湧くかもしれませんが、先生が慣れ親しんでいるこの構成が、結局のところ最も上手くレポートをまとめられると思っています。誤字脱字や文法ミスには注意し、冗長ではない文章を心がけることで、全体の印象が良くなります。先生も人間なので、誤字や周りくどい言い回しが多い文章はレポートとして読みたくないでしょう。なるべく簡潔に、そしてミスなく書くようにしてください。
⚫︎明確な表現を使おう
特に操作や結果の説明では、曖昧な表現を避け、具体的な数値や観察結果を使うようにしましょう。なんとなく伝わればいいという気持ちではなく、明確に書く意識が大切です。考察では自分の意見を述べるだけでなく、それを裏付ける他の研究やデータと照らし合わせることで、より論理的な文章にできます。論理的で一貫した表現を心がけると、良い評価を取りやすくなると思います。
⚫︎評価が返ってきたら見直して修正
2回目以降に実験レポートを書く際には、常に前回の反省と改善を意識しましょう。初めて書く時は、うまくいかないことも多いですが、恐れずに取り組むことが大切です。そして、もし修正の指示やアドバイスをもらったらすぐに従い、次回から同じミスはしないようにしましょう。多くの場合、レポートは点数がついて返ってきます。返却後にはどの部分が良かったのか、どの部分が改善できるのかを考えましょう。点数だけでレポートについてのコメントがなかった場合は、担当教員にフィードバックを求めることも非常に有効です。こうしたプロセスを繰り返していくことで、必ず質の良いレポートを作れるようになります!
⚫︎まとめ
今回は実験レポートの書き方について述べてきました。実験レポートは、(特に理系の)大学生活において避けては通れない壁です。最初は難しいかもしれませんが、基本を理解しポイントを押さえれば必ず上達します。あなたの努力が、きっと素晴らしい結果につながるはずです。みなさんの成長を応援しています!拙い文章ではございますが、最後までお読みいただきありがとうございました。
Profile
所属:工学部化学生命工学科3年生
出身地:愛知県
出身校:愛知県立岡崎高等学校