名大生ボイス

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大学生活全般

2025.05.20

  • 大学生活全般

高校?大学?大学院?自分はどこまで学ぶのがいいんだろう?

20250523k.jpegこんにちは。名古屋大学大学院創薬科学研究科 修士1年の小林です。大学生活を送っているとふと浮かんでくるのが、「この先、自分はどこまで学ぶべきなんだろう?」という問い。高校卒業後すぐに働く道もあれば、大学へ進んで4年間学ぶ選択もある。さらに大学院に進んで研究に取り組む人もいれば、学びとは距離を置いて社会へ出る人もいます。進学するのか、就職するのか。この問いは、“いつ働くか”を決めるというよりも、“どこまで学びながら自分を育てていきたいか”を考えることに近いのかもしれません。
「就職」はゴールではなく、その人なりの“今までの選択の積み重ね”が導くひとつの通過点。今回は、そんな進路選択に対して、私自身の経験や周囲の実例を交えながら、いくつかのヒントを届けられたらと思います。

 

どこで「区切るか」は自分で決めていい

最近では、卒業後に旅や経験を通して“自分と向き合う時間”を取る人もいます。大切なのは自分にとって納得できるかどうかで、誰かの正解があなたの正解になるとは限りません。「みんなそうしているから」、「就活の時期だから」という空気に流されることなく、自分で考えて選んでください。

 

高卒での就職

高校を卒業してすぐに働き始めるという選択は、決してイレギュラーではありません。専門職や地元の企業、公務員など、明確なキャリアプランを持っている人にとっては、自然で現実的なルートです。最大の魅力は若いうちから実践の中で経験を積めることです。同い年の人たちが大学で座学をしている間に仕事のスキルを高めていけ、場合によっては20代前半で指導役を任されることもあります。ただ一方でやっぱり進学したいと感じたときに、もう一度学びの場に戻るには、環境や資金面、時間のやりくりなど、いくつかの壁が立ちはだかることもあります。今の自分の興味や価値観をよく見つめ、後悔しない選択をしてください。

 

大学卒での就職

学部生は「新卒一括採用」という制度のもと、大学3~4年に就活し、卒業と同時に企業に入社します。多くの企業がこの流れに合わせて研修制度や育成枠を用意しているため、社会に出る第一歩として安定感があります。私のまわりでも、研究よりも社会経験を積みたいと、大学卒業と同時に就職する友人が多くいました。彼らは就職して経験を積み、社会人としての成長を実感できているようです。就活市場が「新卒カード」を中心に回っている今の日本では、学部卒での就職が最も企業側の受け入れ体制が整っているタイミングでもあります。
ただ一方で、理系や一部の専門分野(AI、バイオ、情報工学など)では、「学部卒では専門性が不十分」、「より深い知識やスキルが必要」とされる場面も増えてきました。特に技術職や研究開発職を目指す場合は、修士課程への進学がスタートラインとされることも少なくありません。

 

大学院(修士)進学

私は現在この「修士課程進学」という道を歩んでいます。「もっと深く学びたい」、「研究にしっかり取り組みたい」という思いから、学部卒業後に名古屋大学の大学院へ進学しました。今はAIを活用して細胞画像を解析する研究を進めており、新しい技術や知見に触れながら、実験とデータ解析に向き合う毎日です。
修士課程の2年間は、ただ専門性を磨くだけの時間ではありません。研究だけでなく、国内外の学会への参加、企業のインターンシップ、留学プログラムへの応募など、学部時代よりも行動範囲が格段に広がり、視野が一気に開けたような感覚があります。自分のテーマに本気で向き合う非常に濃密な日々です。「自分の研究はどんな業界で活かせるか」、「どんな職種が向いていそうか」と、自分の将来像がだんだん具体的になってきて、社会に出る前に自分を見つめ直す機会にもなっていると感じています。
ただし、当然ながらデメリットや注意点もあります。学部卒より就職が2年遅れるのが気になる人もいるかもしれません。また、すべての企業が修士進学を高評価してくれるとは限らず、即戦力としての能力を強く求められる場合もあります。大学院に行くことで選択肢が増えるのではなく、「求められるレベルが上がる」側面もある、ということは知っておいてほしいです。
だからこそ、修士進学を考えるときは「なんとなく」ではなく、「自分が将来どんな働き方をしたいのか」、「何を強みにして社会に出たいのか」を意識しておくことが大切です。大学院進学は、逃げ道や保険ではなく、もう少し学んで可能性を広げたいと思う人にとっては、刺激的で有意義な時間なのです。

 

博士課程という道

博士課程に進むというのは、学生を続けることではなく、研究を人生の軸として据え、誰も知らない新しい知識をこの世界に生み出そうとする、ある意味「覚悟の選択」です。博士課程では、ひとつの研究テーマに3〜5年、場合によってはそれ以上の年月をかけて向き合い続けます。結果が出ない時期や、思うように論文が書けない苦しさ、孤独感、周囲からの理解のなさ……。そういった厳しさに耐えながらも、自ら問いを立て、検証し、世界に新たな価値を提示していくのが博士課程です。
博士課程修了後は大学・研究機関などアカデミアの道を志す人が大半です。近年では企業のR&D(研究開発)部門、データサイエンスや先端技術のフィールド、政策立案やコンサルティングなど、博士ならではの知的な引き出しを活かせる道も少しずつ広がってきています。
ただし現実問題として、日本ではまだ「博士=オーバースペック」、「扱いづらい」といった企業側の偏見が残っているのも事実です。特に一般企業への就職を考える場合、「なぜ修士でなく博士まで行ったのか?」という問いに、論理的かつ情熱をもって語れる必要があります。博士課程に進む人には、「研究が好き」という気持ちだけでなく、それを生き方としてどう社会と接続させていくか、という視点が必要になります

 

就職=ゴールではない。「どう生きたいか」を中心に

就職はあくまでスタート地点で、その後も私たちは働きながら悩み、迷い、変化し続けます。だからこそ、どこでいつ働き始めるかよりも、その選択が自分のこれからとどうつながっているかを考えることが大切だと思うのです。
働くという行為は、「どんなふうに生きたいか」、「何にエネルギーを使いたいか」という想いの延長線上にあるべきです。就活を「内定を取るゲーム」のように捉えると、「とにかく早く決めないと」、「周りはもう動いてるのに自分だけ……」と、焦りや不安に飲まれてしまうこともあるでしょう。そんなときこそいったん立ち止まって、「自分は、どう生きていきたいんだろう?」、「何を大切にしていたいんだろう?」、「10年後、どんな毎日を過ごしていたい?」と問いかけてみてください。答えがすぐに見つからなくても、就職を人生の手段として捉え直すことで、進む方向や選び方が少しずつ見えてくるかもしれません。どのタイミングで社会に出るにせよ、「これは自分が選んだ道だ」と思えることが大切です。

 

おわりに

「あなたが選んだ道が、あなたの正解になっていく」と思っています。人と比べる必要はありません。これからの大学生活の中で、思いがけない出会いや興味が芽生えて、進みたい方向が見えてくることは、きっと何度もあります。自分らしい道を自分のペースで歩んでいけるように、心から応援しています。拙い文章ではございますが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Profile

所属:創薬科学研究科博士前期課程1年生

出身地:愛知県

出身校:愛知県立岡崎高等学校