名大生ボイス

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大学生活全般

2025.05.29

  • 大学生活全般

「研究」ってなに?大学は勉強する場所じゃないの?と感じているあなたへ

こんにちは。名古屋大学大学院創薬科学研究科 修士1年の小林です。高校生や大学1年生の方で、「大学って勉強する場所でしょ?」、「研究って正直よくわからない」と思っている人も多いんじゃないでしょうか。僕自身、高校生のときは大学=授業を受ける場所というイメージしかなく、研究室や卒論、実験なんて実際に何をするのか、具体的なイメージは持てませんでした。大学に入ってからわかったのは、大学、特に理系の学部では研究こそが本質的な学びの場だということです。「研究がどういうものなのか」、「どう始まるのか」を知っておくと、大学生活の見通しが立てやすくなり、大学選びにも役立ちます。
今回は、「研究ってなに?」という疑問に対して、体験を交えてやさしく解説します。

 

「研究」はいつから始まるの?

理系学部に進学すると、多くの場合3~4年生で研究室に配属され、研究生活がスタートします。とはいえ、いきなり専門的な研究が始まるわけではありません。それまでに学んだ基礎科目(物理・化学・生物・数学など)を土台にして、「この細胞はどうやって環境変化に反応しているのか?」、「この物質はどうやって光を発するのか?」、「もっと効率よくエネルギーを作る方法はないか?」といった誰も答えを知らない問いに、自分で仮説を立て、実験や調査を重ねて答えを探っていきます。

このプロセスには、以下のようなステップがあります。

 •研究テーマを決める(何について探究するか)
 •実験・解析を計画する(どうやって調べるかを考える)
 •実際にやってみる(測定・観察・実験など)
 •得られたデータをまとめて考察する
 •学会や論文、卒業研究として発表する

 

このように、研究は単なる勉強の続きではなく、知識を活かして誰も知らない世界に踏み出すチャレンジでもあります。最初は失敗も多く分からないことだらけですが、自分の手で新しいことを発見する体験は、授業では味わえないワクワクがあります。教科書に書かれていないことを、自分が最初に知るかもしれないというのが研究の醍醐味です。

 

なぜ研究室選びが大事なのか?

研究室によって、取り扱うテーマやアプローチの仕方は大きく異なります。同じ「生物系」でも、分子生物学が中心のラボ、動植物の生態を扱うフィールド系のラボ、AIやデータサイエンスを使って研究するラボ、もっと実験寄りで手を動かすことを重視するラボなど、いろんな種類があります。さらに、研究スタイルや指導方針、先輩や教授との距離感、研究室の雰囲気などもさまざまです。配属される研究室によって、日々の過ごし方や進路、さらには大学生活全体の満足度が大きく左右されると言っても過言ではありません。

 

どうやって研究室を選べばいいの?

配属前の研究室訪問で、教授や大学院生の話を聞いたり、研究室の雰囲気を体験したりします。僕自身も配属前に複数の研究室を訪問しました。その中で、「研究テーマが面白そうだ」とか、「この先生の話がわかりやすく、熱意が伝わってきた」とか、そんな直感も含めて研究室を選びました。

 

他にも、こんな観点で選ぶ人が多いです。

 •自分の興味がある分野か?
 •教授や先輩の人柄・雰囲気は合いそうか?
 •将来のキャリア(企業就職・大学院進学など)と研究内容がどうつながるか?
 •研究室の忙しさや自由度はどうか?

 

「研究テーマ」はどうやって決まるの?

いざ研究室に配属されても、すぐに「はい、あなたの研究はこれです!」とテーマが与えられるわけではありません。多くの研究室では最初に研究の土台づくりの期間が設けられます。この期間は次のような基礎的なスキルを身につけることを目的として設定されています。

 •実験機器の扱い方(ピペットや遠心分離機などの使い方)
 •ソフトウェアやプログラミングの基礎
 •データ整理やノートの取り方
 •簡単な実験プロトコルの実践

これが大体1〜3ヶ月ほど続き、研究室のルールや雰囲気に少しずつ慣れていきます。

 

ある程度の準備が整ったところで、いよいよ「自分の研究テーマ」を決めていきます。決め方は研究室によって少し違いがありますが、以下のようなパターンが多いです。
① 教授がいくつかのテーマ候補を提示してくれる
例:「このタンパク質の機能を調べる研究」、「この装置の最適化実験」など。
② 学生がその中から興味のあるものを選び、ディスカッションしながら内容を調整
最初はざっくりとしたテーマだったとしても、指導教員と話し合いながら「じゃあこの実験から始めてみようか」といった具体的なステップに落とし込んでいきます。
③ 自分でテーマの背景を調べ、目的や仮説を自分の言葉で言語化していく
まさに「自分の研究」としてのスタートライン。ここから文献を読んだり、既存研究を参考にしたりしながら、テーマの方向性をより深く理解していきます。

 

「こんな難しそうなこと、自分にできるのかな?」

初めてテーマを提示されたとき、多くの人がそう感じます。僕自身も、「え、これって学生一人でやるの?」と戸惑いましたが、少しずつできることが増えてきました。文献を読んで「授業でやったやつだ!」とつながったり、自分の実験データに変化が出ると「お、面白いかも」と感じられたり。最初は不安でもやがて自分だけの問いと向き合う時間が、研究を自分ごととして感じられるようになります。

 

「研究テーマ」は、自分を知るための問いでもある

与えられたテーマであっても、掘り下げていく過程で「何に面白さを感じるのか」、「どんな考え方が得意か」など、自分を知るための体験になっていきます。テーマを決めるときは、「興味が持てそうか?」、「やってみたいと思えるか?」という直感を大事にしてみてください。

 

研究テーマは「人生の選択肢」とつながっている
ここで、指導教員の先生からいただいた印象的な言葉を紹介させてください。

研究室やテーマを選ぶときには、ただ“興味”だけではなく、自分の将来や人生のビジョンも一緒に考えてみるといいよ

研究室やテーマの選び方は、その後のキャリアに直結します。製薬企業で働きたいなら、データ解析だけでなく薬理や細胞の知識も必要ですし、化粧品開発に関心があるなら、皮膚科学や応用化学に触れられる研究室が向いているかもしれません。AIやデータサイエンスの道に進みたいなら、実験よりもプログラミングや統計分析を深く学べる環境が合っています。今すぐ明確な未来像が描けなくても大丈夫です。どんな風に社会と関わりたいかといった小さな問いを持つだけでも、選択の軸が少しずつ見えてきます。

 

自分の未来に、研究を重ねてみる

日々の課題や実験で忙しく、自分の将来について考える余裕はなかなか取れないかもしれませんが、「この先どう生きたいんだろう?」という自分への問いが、研究テーマ選択に深みを与えてくれるはずです。どうか、自分の人生と向き合う瞬間を大切にしながら、研究という新しい世界に飛び込んでいってください。

 

結局、勉強と研究は何が違うの?

勉強:誰かがすでに知っていることを学ぶ
研究:まだ誰も知らないことを、自分が明らかにする
大学1〜2年生までは主にインプット中心の勉強ですが、研究に入るとアウトプット型の学びにシフトしていきます。これが研究の面白いところであり、戸惑うポイントでもあります。答えが用意されていないからこそ、自分なりに考え、仮説を立てて、検証する力が求められるようになるのです。

 

研究って大変?やりがいはある?

正直に言うとしんどい時もあります。データがうまく取れない、何をやってもうまくいかない、何週間も同じミスを繰り返す……。そんな日々が続きますが、その壁を一つひとつ越えていく中で、「ちょっとずつ分かってくる感じ」が得られます。それは教科書の中では味わえない、手触りのある学びです。

 

まとめ

大学という場所を思い浮かべたとき、授業や講義、キャンパスライフを真っ先に思い浮かべる人も多いかもしれません。でも、特に理系の学部において、学びの最終形となるのが「研究」です。この未知に挑む経験が、大学でしか得られない貴重な学びだと思います。高校生のうちから「大学ではどんな研究が行われているんだろう?」と関心を持ってみてください。「こんな研究ができるからこの大学に行きたい!」と気持ちが明確になると、進学の意義もより深くなります。
この記事が、「研究って面白そうかも」、「大学は知識を作る場所なんだ」と知るきっかけになったらとても嬉しいです。拙い文章ではございますが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Profile

所属:創薬科学研究科博士前期課程1年生

出身地:愛知県

出身校:愛知県立岡崎高等学校