2026.06.22
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「先生と行く!大絶滅展 解説ツアー」開催レポート(理学部・地球惑星科学科)
皆さん、こんにちは!環境学研究科博士後期課程3年の松山です。今回は、理学部地球惑星科学科の学生・教職員を対象に開催された「先生と行く!大絶滅展 解説ツアー」についてご紹介します。2026年6月11日、理学部地球惑星科学科・大学院環境学研究科地球環境科学専攻(地球惑星科学系)では、学科の交流企画として、名古屋市科学館(FUJIなごや科学館)にて「先生と行く!大絶滅展 解説ツアー」を開催しました。
本企画は、同館で開催されていた特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」を、地球史や古生物学を専門とする先生の解説とともに見学し、地球上で繰り返されてきた大量絶滅と、その後の生命進化について理解を深めることを目的としたものです。また、普段の勉学・研究の場を離れ、展示を一緒に見て回ることを通じて、地球惑星科学科の学生・教職員が所属や学年を越えて交流する機会をつくることも、本企画の重要な目的の一つでした。
解説ツアーの概要
科学館の特別展は、初めて見る人にも分かりやすく工夫されています。しかし、展示されている化石や復元模型の背景には、「なぜこの生物は絶滅したのか」「この化石から何が分かるのか」「研究者の間ではどのような議論が続いているのか」といった、展示パネルだけでは紹介しきれない多くの物語があります。
そこで、地球科学を勉強する学生だけが参加する今回の企画では、自由に展示を見るだけではなく、古生物学や地球史を研究する先生方の解説付きで一緒に会場を巡る解説ツアーを実施しました。化石の見どころや大量絶滅が起きた原因、展示がつくられるまでの裏話などを、その場で直接聞くことができる特別な見学会になりました。
企画の実施にあたっては、大路樹生氏(名古屋市科学館館長・本学名誉教授)と木田梨沙子氏(名古屋市科学館学芸員・本学大学院環境学研究科博士学生)に、会場との調整や当日の運営など、多大なご協力をいただきました。科学館と大学の双方に関わる方々のご支援により、普段の見学では聞くことのできない、専門家ならではの解説を楽しめるツアーを実現することができました。
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特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」
地球上に生命が誕生してから約40億年の間、生物は常に連続的に進化してきたわけではありません。その長い歴史の中では、地球環境の急激な変化によって、多数の生物種が比較的短期間に失われる「大量絶滅」が繰り返されてきました。なかでも、特に規模の大きかった五つの大量絶滅は「ビッグファイブ」と呼ばれています。本展は、オルドビス紀末、デボン紀後期、ペルム紀末、三畳紀末、白亜紀末に生じた五つの大量絶滅を軸として、化石、岩石、復元模型、映像などを用いながら、絶滅の原因と生命進化への影響を紹介するものでした。
展示は、単に「どの生物が絶滅したのか」を並べるのではなく、火山活動、気候変動、海洋環境の変化、小惑星衝突など、地球内部と地球表層、さらには地球外からの作用が、どのように生命圏へ影響したのかを時代ごとにたどる構成となっていました。本展は、古生物学だけでなく、火山学、古気候学、古海洋学などの観点から、五つの絶滅事変を一つの原因だけで説明するのではなく、多角的な証拠に基づいて検討する姿勢が、展示の随所に表れていました。
また、恐竜や大型哺乳類といった知名度の高い生物だけではなく、絶滅後の生態系の回復を考えるうえで重要な植物化石や小型哺乳類、分類上の謎を残す生物なども取り上げられていました。このような幅広い展示により、来館者は「絶滅の瞬間」だけでなく、その前後に続く環境変化や生態系の再編までを、一連の歴史として理解できるようになっていました。
会場では、球形映像展示「大絶滅スフィア」や、火山活動を体感的に理解するための模型のほか、ダンクルオステウス、ディメトロドン、ウタツサウルス、クリオロフォサウルス、ティラノサウルスなど、各時代を代表する生物の標本や復元骨格が並んでいました。近年、独特な復元模型がインターネット上で大きな注目を集めたサカバンバスピスの展示もあり、古生物学になじみのない参加者にとっても、親しみやすい入口が随所に設けられていました。迫力のある大型標本に加え、絶滅境界を記録した岩石や比較的小さな化石も展示されており、生命史における大事件が、地層や標本に残された限られた証拠から復元されていることを実感できる内容でした。
午前中のプレ企画――常設展示から学ぶ全地球史
午前10時からはプレ企画として、科学館2階の地球科学関連の常設展示を見学しました。解説を担当してくださったのは、高橋聡氏(本学准教授)と熊谷博之氏(本学教授)です。常設展示を順に巡りながら、地球の形成から生命の誕生と進化、日本列島の成立、地震・火山活動に至るまで、幅広い内容についてご説明いただきました。
特に印象的だったのは、展示物そのものの説明にとどまらず、それぞれの知見が「どのような研究によって明らかにされてきたのか」という研究史まで含めて紹介されたことです。全地球史を解明するために国内で実施されてきた大型研究プロジェクト、地層や岩石、化石の分析から過去の地球環境を読み解く方法、観測・分析技術の発展によって更新されてきた地球観など、研究の積み重ねについて丁寧に解説していただきました。
地球科学を専門とする参加者にとっても、自らの研究分野を、より長い時間軸や広い空間スケールの中で捉え直す機会となりました。専門分野が異なれば、同じ展示を見ても注目する点は大きく異なります。お二人の先生による解説を聞くことで、常設展示は単なる知識の紹介ではなく、現在進行形の研究成果を社会へ伝える場でもあることを改めて認識しました。
午後のギャラリートーク――展示の表側と裏側を知る
午後1時30分からは特別展会場へ移動し、大路樹生氏、高橋聡氏、一田昌宏氏(豊橋市自然史博物館学芸員)の三名によるギャラリートークが行われました。三名はいずれも古生物を専門とする研究者であり、実際に本展の展示制作や標本提供にも関わっていました。そのため、展示パネルに記載された内容だけでなく、標本が選定された理由、復元に際して検討された点、研究者の間で議論が続いている問題、展示が完成するまでの過程など、多岐にわたるお話を伺うことができました。
解説では、見た目の迫力に目を奪われやすい大型生物だけでなく、小型の化石や岩石にも注意が向けられました。大量絶滅の原因を議論するためには、生物化石だけでなく、地層の年代、火山活動の痕跡、海洋の酸化還元状態、炭素循環や気候の変化など、複数の証拠を統合する必要があります。このことは、古生物学が生物の形態や分類だけを扱う分野ではなく、層序学、堆積学、地球化学、火山学、古気候学などと密接に結び付いた、総合的な地球科学であることを示しています。
午後3時30分からは、大路氏と高橋氏によるプチセミナーが行われました。展示会場で個々の標本を見ながら得た知識を、生命史と地球環境変動という、より大きな文脈の中で整理する時間となりました。大量絶滅は、多くの生物が失われる出来事である一方、生態系に空白を生み、その後に新たな生物群が進出し、多様化する契機にもなってきました。絶滅と進化は対立する現象ではなく、地球史の中で密接に結び付いているという視点は、本展全体を貫く重要なメッセージでした。
おわりに
今回の企画を通して強く感じたのは、専門家と一緒に展示を見ることで、科学館の楽しみ方が大きく広がるということです。大きな化石や復元模型を見るだけでも迫力がありますが、「この化石はどのような地層から見つかったのか」「どのように年代を調べたのか」「なぜこの姿に復元されたのか」といった話を聞くと、一つ一つの標本が、地球と生命の歴史を読み解くための大切な証拠として見えてきます。
また、科学には、すでに分かっていることだけでなく、まだ答えが出ていない問題もたくさんあります。今回の解説では、研究者の間で現在も議論されていることや、化石から過去の生物を復元する際の難しさについても紹介されました。科学館の展示は「完成した答え」を並べたものではなく、研究によって新しい発見が加わり、少しずつ更新されていくものなのだと実感しました。「生物」「岩石」「地震」「火山」「海洋」「気候」は、一見すると別々のテーマに見えるかもしれません。しかし、どれも一つの地球で起こっている現象であり、互いに密接につながっています。さまざまな視点から地球全体を考えられることが、地球科学の大きな面白さだと感じています。
名古屋大学理学部地球惑星科学科では、このような地球科学の幅広い分野を学ぶことができます。また、先生と学生の距離が近く、講義や研究室だけでなく、科学館や野外で先生や専門家と一緒に学ぶ機会があることも魅力の一つです。教科書で知識を覚えるだけではなく、実際の標本や地層、自然現象に触れながら考える「生きた学び」が待っています。
地球や生命の歴史に興味がある方、地震や火山、岩石、化石、海洋、気候、惑星などについてもっと知りたい方は、ぜひ私たちと一緒に地球惑星科学を学んでみませんか?
オープンキャンパスでは、高校生の皆さんに向けた学科紹介も予定されています。
名古屋大学でどのような授業や研究が行われているのか、ぜひ一度、実際に見に来てください!
Profile
所属:環境学研究科 博士後期課程3年
出身地:愛知県
出身校:名古屋市立向陽高等学校