2026.08.31
- 大学生活全般
大学院入試の志望理由書の書き方
大学院入試では、志望理由書やそれに近い書類の提出を求められることがあります。
いざ書こうとすると、「何を書けばよいのか分からない」「研究室への興味はあるけれど、文章にすると薄くなる」と悩む人も多いと思います。
私は、志望理由書は単に熱意を伝えるための文章ではなく、なぜ大学院に進むのか、なぜその分野や研究室を選ぶのかを、自分の経験とつなげて説明するための文章だと考えています。
今回は、大学院受験を考えている方に向けて、志望理由書を書くときに整理しておきたいことをまとめます。面接での答え方は次の記事で扱うため、ここでは文章を書くための考え方に絞ります。
なぜ大学院に進むのかを考える
最初に整理したいのは、そもそもなぜ大学院に進みたいのかという点です。研究を続けたい、専門性を高めたい、将来取り組みたい仕事につながる知識を身につけたいなど、理由は人によって異なります。
大切なのは、最初のきっかけが立派かどうかではありません。「なぜもう少し深く学びたいと思ったのか」「どのような経験からそう考えるようになったのか」を振り返ることです。
私自身も、最初から明確な将来像があったわけではありません。学部で研究に触れ、データを整理し、その結果から意味を考える経験を重ねる中で、研究をより深く学びたいと考えるようになりました。こうした自分の変化を振り返ると、志望理由の土台が見えてきます。
なぜその分野なのかを具体化する
次に考えたいのは、なぜその分野を選ぶのかという点です。
「生命科学に興味があります」「AIに興味があります」と書くだけでは、関心の具体的な中身までは伝わりにくいです。そこで、「何に興味があるのか」だけでなく、「その対象のどの部分に興味があるのか」「どのような方法で取り組みたいのか」まで考えてみることが重要です。
私の場合であれば、画像や数値などのデータから、生物学的な特徴を捉えることに関心があります。単に画像解析や機械学習そのものに興味があるのではなく、人の目だけでは捉えにくい特徴をデータから見つけ、研究上の評価につなげられる点に面白さを感じています。
なぜその研究室なのかを考える
志望理由書では、なぜその研究室を選ぶのかも重要です。同じ分野を扱っていても、研究室によって研究テーマや使用する技術、研究の進め方は異なります。そのため、「興味のある分野を扱っているから」だけでなく、その研究室で学びたい理由を考える必要があります。
ここで避けたいのは、研究室のホームページに書かれている内容をそのまま言い換えることです。研究テーマを確認したうえで、自分の興味やこれまでの経験とどこでつながるのかを考えることが大切です。
たとえば、「再生医療に興味があるため志望します」で終わるのではなく、これまでの学習や研究を通じてどのような課題に関心を持ち、その研究室のどのテーマや手法に魅力を感じたのかまで書けると、志望理由に一貫性が出てきます。
学部時代の経験と大学院でやりたいことをつなげる
志望理由書では、これまでの経験と大学院でやりたいことをつなげることも大切です。学部時代の研究テーマと、大学院で希望するテーマが完全に一致している必要はありません。重要なのは、これまで何を経験し、そこから何を学び、次に何を深めたいと思ったのかを説明することです。
研究では、思った通りの結果が出ないことや、データのばらつきに悩むこともあります。私も解析を進める中で、条件や評価方法によって結果の見え方が変わることを経験しました。そのたびに、どの条件をそろえるべきか、どの指標を使うべきかを考える必要がありました。こうした経験は、成果そのもの以上に、自分が何を考えるようになったのかを示す材料になります。志望理由書では、成功した経験だけでなく、うまくいかなかった経験から何を考え、次に何を学びたいと思ったのかを書くこともできます。
将来の進路との関係を整理する
大学院で学ぶことが、将来どのようにつながるのかも整理しておくとよいと思います。ただし、大きな夢や明確な職業名を無理に書く必要はありません。将来の進路がまだ決まっていなくても、「現時点ではこの方向に関心があり、そのために大学院でこの力を身につけたい」と説明することはできます。
たとえば、製薬企業などで研究開発に関わりたいのであれば、大学院での研究を通じてどのような専門性や問題解決力を身につけたいのかを考えられます。将来像を断定することよりも、「これまでの経験」「大学院で学びたいこと」「その先に関心のある方向」が自然につながっていることの方が重要です。
まずは文章ではなく材料を出してみる
志望理由書を書き始めるとき、最初から完成した文章を作ろうとすると手が止まりやすくなります。まずは、「なぜ大学院に進みたいのか」「なぜこの分野なのか」「なぜこの研究室なのか」「これまでの経験とどうつながるのか」「大学院で何を身につけたいのか」「将来どのような方向に進みたいのか」を、それぞれ短い言葉で書き出してみるのがおすすめです。この段階では、きれいな文章にする必要はありません。先に材料を出し、その後で順番を整理して文章につなげた方が、自分の考えを確認しやすくなります。
書いた後に確認したいこと
一度文章にした後は、「この大学院や研究室でなくても成立する内容になっていないか」を確認してみるとよいと思います。大学名や研究室名だけを別のものに置き換えても成立してしまう文章であれば、その研究室を選ぶ理由や、自分自身の経験が十分に入っていない可能性があります。また、「これまでの経験から大学院でやりたいことへ自然につながっているか」も確認してみてください。読み手が途中の理由を補わなくても、自分の考えの流れを理解できる文章になっていることが大切です。
志望理由書は、特別な言葉を使ったり、自分を大きく見せたりする必要はありません。自分の経験と考えを具体的に整理し、無理なくつなげる方が、結果として伝わりやすい文章になります。
おわりに
志望理由書を書くことは、自分をよく見せるためだけの作業ではありません。なぜ大学院に進みたいのか、そこで何を学びたいのかを、自分自身で整理する機会でもあります。最初から完璧な志望理由を作る必要はありません。まずは、大学院に進みたい理由、その分野に関心を持った理由、その研究室を選ぶ理由を、自分の経験と結びつけて書き出してみてください。その後に、「これまでの経験から大学院でやりたいことへ自然につながっているか」「この研究室を選ぶ理由が具体的に書けているか」を確認すると、文章はかなり整理しやすくなります。
また、志望理由書を作る過程で、自分の考えが曖昧な部分や、もう少し調べる必要がある部分も見えてきます。この整理は、書類を完成させるためだけではなく、その後の面接で自分の考えを説明するときの土台にもなります。次の記事では、大学院入試の面接に向けて、どのような準備をしておくとよいのかを考えていきます。
Profile
所属:創薬科学研究科 修士2年
出身地:愛知県
出身校:愛知県立岡崎高等学校