2026.10.30
- 大学生活全般
日本史学研究室ってどんなところ?
皆さんこんにちは!文学部日本史学専攻3年の石橋です。前回の記事よりご無沙汰しています。10月も終わりが近づき段々と冬の足音が聞こえてくる季節柄ですがいかがお過ごしでしょうか。
今回は受験生や文学部1年生に向けて私が所属している日本史学研究室がどんなところなのか掘り下げてご紹介したいと思います。名大文学部は計22の専攻があり単に文学部といっても文献をひたすら読み漁るものもあればフィールドワークに主軸をおくもの、ディスカッションを重視するもの、実験分析に至るまで幅広い領域をカバーしています。
その中で私が日本史学を専攻しようと思ったきっかけや3年間どんなことを学んでいくのかお伝えできたらと思います。受験生はもちろん分属決めが近づき専攻に迷っている1年生の皆さんにも参考にして頂けたら嬉しいです。
日本史学を専攻した動機
私は幼い頃から歴史に興味があり教養番組や本によく触れていました。昔の人々はある状況にどう対処していたのか、今と比較しての相違点や出来事の因果関係、そして大局的な流れに面白さを感じていました(もう一つの趣味である漢字がよく出てくるというのも大きいですが)。
高校生になり受験を見据えやはり大学ではより深く歴史を知りたいと思い勉強を始めました。高校の日本史では通史がメインであり特定のジャンルに特化した記述はあまり見られず、その中で芽生えた疑問を大学で深めたいと考えるようになりました。
また『日本書紀』、『吾妻鏡』、『大日本史』といった事実の根拠となった史料や出来事が起きた場所、象徴となった建造物など参考書を読んでいるだけでは実感できない実物に触れることでその背景や状況に思いを馳せることができると感じフィールドワークや史料読解を重視する名大文学部日本史学研究室に進むことを決めました。
入学後、分属後のギャップ
名大文学部では1年生の12月ごろに専攻が決まる分属があります。考古学や文化人類学など他にも興味が湧いた分野もありましたがやはり日本史学に進むことは決めていました。考古学が物質的資料を扱うのに比して日本史学は文献史料を基本とする性格でアプローチの仕方が異なり、私は文字を読みたい派且つ近世近代に関心があったので日本史学を選びました。
秋学期には古代中世近世近代の4人の先生が交代で授業をする日本史概論が開講されておりその専門性の高さと研究の視点に驚きさらに惹き込まれました。2年生になり同じ研究室の同級生たちと話すとお互い好きで専攻しているだけあって深い話ができ自分にはない知識で刺激し合っている感覚で居心地が良いと感じていました。
一方で専門的な授業が増えてくるにつれて自分の中で疑問が生じました。「自分は日本史の何が好きなのか」ということです。顧みると通史という長期的スパンの流れや知識に興味があり、より細かい部分を学びたいと感じていたが大学の授業ではあまり興味のない事柄の知識だったり、史料がなく間接的なことしか分からないといったもどかしさだったりが多く、本当は新しく何かを解明したり応用したりする「研究」には興味がないのではないか、単に知識が欲しいのなら大学である必要があるのだろうかというギャップに悩んだ時期もありました。
しかし演習を進める中でそこまで重要視していなかった事項が他の領域でも適用できる考え方や方法論と繋がっていたりある史料を読み解くにしても着目する視点によって得られる事実が異なるということだったりを知り他人とは違う独自の見方で物事を追究することが研究の醍醐味だと感じるようになり、思ってもみなかった新たな関心を喚起させる場としてもむしろ大学でしか経験できない価値だと思うに至りました。
なので皆さんに伝えたいのはどの分野でも言えますが、専門的な知識を得てそれを応用していくことも大事ですが大学で学ぶ価値は自分と違う考え方を持つ他人と意見を交わし世界に対する視野を広げることにこそあると感じます。
↑くずし字演習で用いる用例辞典
日本史学専攻の3年間
ここからは分属後どのような流れで卒業までの3年間を過ごしていくかお話していきます。先ほどの日本史概論は1年生では初めての専門科目ですが概論なのでそれぞれの先生が自分の研究分野について軽く紹介する形が多いです。ここで大学で学ぶ日本史がどんなものかを体験することになります。
2年生の春学期には日本史史料学入門演習Iと日本史論文入門演習の2つがあります。前者は古代の歴史書(私の代は『続日本紀』を扱いました)を読みそれぞれの担当部分について発表を行います。後者は近世近代の論文を読み、論点の整理や発展を通じて論文を読む訓練を行います。
演習では主に読み下しをし語句を正確に解説して内容を解釈、史料が書かれた背景や論点の抽出を発表します。2年生にとってはかなり重い内容で初めは困惑しますが私はこの段階でこうした機会があったのは後々発表が多くなる時に良い経験になったと感じます。
秋学期には日本史史料学入門演習IIと日本史史料学概説I・IIが開講されます。入門演習IIでは中世近世文書に現れるくずし字の解読を行います。初めは何も分からずなぜこんなくずし方でこの字になるのか心が折れそうでしたが意外と読むうちにパターン化されていて全授業が終わる頃には半分くらいの字を当てることができました。量を読めば分かるようになるので心配なく。概説では歴史史料の特徴、文書の様式を踏まえ文字以外からも情報を引き出す方法を学びます。
3年生になると専攻の授業が大半を占めます。春学期の講義では史料学概説Ⅳ、日本史講義I ~Ⅲがあります。概説Ⅳでは近代史料を扱いますが近代という時代の特質上本や雑誌だけでなく写真や映像、オーラルヒストリーといった多様な史料が存在し研究に用いる際の取り扱いについて学びます。
講義では古代中世近世の先生の研究内容に根差した内容を学びます。古代宮都の構造や禅宗、近世天皇の葬送と初めて知る事実が多く興味深かったです。秋学期には史料学概説Ⅲ、講義Ⅳがあります。前者は近世の村方文書に注目し読解に必要な知識を学び、後者では象徴天皇制についての考察を深めていきます。
演習では春・秋学期にI ~Ⅳが開講され興味に応じて最低2つ取得する必要があります。ちなみに特定の時代に振り分けられることはないので卒論を書く段階までは研究する時代を絞る必要はありません。なので私は古代から近代まで幅広く授業をとっています。この他にも授業の一環として寺社での史料調査やフィールドワーク、学芸員課程である博物館実習、定期的に院生を交えた勉強会や現地調査などが開催されています。
また年1回研究室旅行として歴史的史料のある場所へ巡見するイベントがあり他学年や院生の人たちと交流できる数少ない機会になっています。そのため学内で史料と向き合うだけでなく現地で実物と向き合う時間が多く用意されているのが魅力だと思います。
そして4年生には卒論執筆が始まります。3月あたりに卒論テーマについて院生や先生方からアドバイスを頂く機会があり5月には中間構想発表会があります。ここで先生方から指摘や助言を頂き内容をブラッシュアップし年末の卒論締切に向けて執筆していきます。
卒論を書く時には数多くの論文を読み必要に応じて現地調査や国会図書館へ赴き同級生たちと相談や指摘をし合いまとめていくので結束力が強まります。また卒業後の進路についてそのまま院進する人もいますが別大学からの進学が多く学部生の大半は一般企業や公務員に就職します。日本史学に関わりのある職に就く人は意外と少ない印象です。
↑博物館実習で訪れた平城宮跡 復元された大極殿
おわりに
今回は私の経験を交えて日本史学研究室についてご紹介してきました。高校までの暗記学習とは違い大学で学ぶ日本史は史料の扱い方や読解の方法論、論への批判的目線を涵養し常に疑問を持って取り組むことが求められるんだという違いを知っていただければと思います。
文学部の中でも毎年多くの分属希望が集まる人気の研究室で賑やかにやっていますので興味を持った方は是非ともお待ちしております!ご精読ありがとうございました。
Profile
所属:文学部 日本史学専攻3年
出身地:静岡県
出身校:飛鳥未来きずな高等学校