名大生ボイス

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大学生活全般

2015.12.19

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野依記念物質科学研究館 ケミストリーギャラリーを見学しました。

 

今回は野依記念物質科学研究館2階のケミストリーギャラリーを見学しました。この施設は2001年に「キラル触媒による不斉反応の研究」でノーベル化学賞を受賞した野依良治博士の研究活動や生い立ちを紹介したもので2003年12月に建設されました。展示室にはセミナーに活用するワークショップルームや化学における発見、創造をテーマとした企画展示スペース、野依博士の研究活動や研究姿勢、哲学を紹介するスペース、化学の歴史を紹介するスペースがあります。

 

ここで、野依博士のノーベル化学賞受賞について触れておきたいと思います。野依博士は生物の持つ酵素にしかできなかった有機化合物の微妙な作り分けを人工的に可能にした不斉合成触媒の研究が高く評価されたことで、ノーベル賞を受賞しました。自然界には光学異性体(キラル)といって、構成する原子の数や種類が同じでも右手と左手の関係のようにその並び方の違いで性質が異なる分子が存在します。例えば、調味料に使われるグルタミン酸ナトリウムはD-グルタミン酸ナトリウムとL-グルタミン酸ナトリウムという2つの立体構造を持ち、2つの化合物は光学異性体の関係にあります。そのため、構成する原子や種類が等しくても、一方はうま味成分が働くが、もう一方ではうま味成分が機能せず、調味料に適さないという性質を持っています。こうしたキラルは人工的に合成し、2つの物質を巧みにつくり分けることが困難でした。そこで、野依博士は2つの分子のうち、有用な分子だけ人工的に作ることはできないかと考えました。野依博士は当時ハーバード大学でE・J・コーリー氏のもとで研究を行っており、このコーリー氏は有機合成分野を専門に研究活動を行っていました。ハーバード大学での経験をきっかけに野依博士は有機化合物の触媒的不斉合成の研究に取り組むようになりました。研究の中で野依博士は金属が炭素などの有機化合物に結合した有機金属化合物に注目し、独自の分子触媒である不斉合成の可能性を世界で初めて提示しました。その後、世界最高の効率を持つ分子触媒の開発に成功し、2001年にノーベル賞受賞に至りました。野依博士が開発した触媒は自然界の酵素よりもはるかに小型でかつ2つの分子のうち、片方だけを高い効率で作り出せるという特徴を持っていました。

 

野依博士が開発した技術は現在、様々な場面で利用されています。例えば、薬品、香料、食品への応用、人工甘味料のアスパルテーム、抗生物質、アミノ酸、ビタミンの合成、新薬の開発に使われています。

 

Profile

所属:経済学部2年生

出身地:埼玉県