こんにちは。医学部6年になりました佐井です。今年の名古屋は梅雨らしい雨があまりなかったような気もしますが、そろそろ梅雨明けでしょうか?だいぶ暑くなってきましたね。今回は、「これからの日本の医療のありかた」について、老年内科や、地域医療とプライマリケアの講義や実習を通じて学んだことを書いていきます。
高齢化が進む日本の社会
現在、65歳以上の高齢者人口は、3,392万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は26.7%となっています(平成28年版高齢社会白書より)。病院実習をしていても、70代前半ですら「若いな」という印象を受けるくらいに、高齢の患者さんが外来や病棟に数多くみえます。
その一方で、医療機関において死亡する人の割合が年々増加しており、昭和51年には自宅で死亡する人の割合を上回っています。「畳の上で死にたい」とは言いますが、実際には病院のベッドで最期の時を迎える人のほうが多いというのが今の日本の現状です。
(赤:医療機関で死亡する者の割合 青:自宅で死亡する者の割合)
今、日本の医療は転換の時期を迎えています。これまでは、どんな患者さんでも、ひとまず入院させ、治療を施し、退院できる人は家へ帰し、そうでなければ病院でお看取りするということができていました。しかし、もっと高齢化が進んでくると、病床数には限りがありますから、今まで通りというのは難しくなってきます。
そこで、現在重視されているのが、患者さんが必要とする医療に合わせて、それぞれ適切な段階の病院に振り分けるということです。急な病気や怪我などで緊急に治療が必要な状態のときには急性期病院へ、治療が一段落して今度はリハビリというときにはリハビリ専門の病院へ、さらにその次のステージはかかりつけの医師に任せるといったようにです。患者さんとしては、「最後まで同じ先生に診てほしい。」と思われるかもしれませんが、これからはひとりの患者さんを各段階専門の医療者たちが協力して支えていくように変わっていくでしょう。
在宅医療と多職種連携
それに伴って最近提唱されているのが多職種連携です。突然ですが、医療職と聞いてみなさんどれくらいの職業が思い浮かぶでしょうか?名古屋大学卒業後に取得できるものだけでも、医師、看護師、保健師、助産師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士といった資格がありますが、これに加えて、歯科医師、薬剤師、言語聴覚士、介護職、医療ソーシャルワーカーなど患者さんのケアにあたる仕事がたくさんあります。そして、それぞれの分野で研究が進み新たな知見が得られたことで、同じ医療職といえど、互いに高い専門性をもっています。数十年前は、すべて医師が主導して管理するという体制だったようですが、今では、それぞれの職種が対等に話し合い、自分の専門性を活かして、最適な医療を提供していくよう変わってきています。
名古屋大学では、実際に仕事を始める前の学生のうちから互いに理解を深めるためにInterprofessional Education=IPEを取り入れており、医学科、保健学科、名城大学薬学部の学生が協同して課題にあたる実習もありました。
まとめ
なかなか難しい問題でまとまりのない話になってしまいましたが、経済的そして人的な医療資源をどのように分配すればよいのかというのは重要な問題です。病気のしくみや治しかた以外にも、医学部ではこんなことを考えているよというのが伝われば幸いです。
最後に高齢者体験の実習の写真を載せておきます。これだけ狭い視野で動きにくいと大変だろうなと感じました。
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Profile
所属:医学部医学科6年生
出身地:愛知県