2026.08.18
私が名古屋大学理学部物理学科を選んだ理由
こんにちは。名古屋大学大学院理学研究科修士1年の成瀬です。今回は、私が名古屋大学理学部物理学科を選んだ理由をお伝えします。
大学や学部を選ぶ理由は人それぞれだと思います。将来の職業から逆算する人もいれば、得意科目や大学の雰囲気を重視する人もいるでしょう。私の場合、出発点にあったのは「宇宙についてもっと知りたい」という思いでした。
とはいえ、高校生の頃から研究テーマや将来の進路を決めていたわけではありません。最初は、宇宙に関わる勉強ができたら面白そうだ、という漠然とした憧れです。そこから大学や研究室を調べるうちに、天文学を本格的に学ぶには物理学の知識が欠かせないこと、そして名古屋大学には自分が興味を持った研究に取り組める環境があることを知りました。こうして私は、理学部物理学科で天文学を学ぶことを目指しました。
1.子どもの頃から積み重なった宇宙への憧れ
私が宇宙に興味を持ったきっかけは、一つの出来事というより、子どもの頃から少しずつ積み重なってきたものです。図鑑やテレビ番組で惑星や銀河を見るたびに、普段の生活とは桁違いに大きな時間と空間が広がっていることに惹かれていました。
地球から見える星の光は、何年、何百年、ときには何万年も前にその星を出発したものです。夜空を眺めることは、遠い宇宙を見ると同時に、宇宙の過去を見ることでもあります。また、星にも誕生と終わりがあり、そう考えると夜空の光の一つ一つが、ただの点ではなく長い歴史を持つ天体として感じられました。
宇宙には、まだ分かっていないことが数多くあります。人間が直接行けない場所で起きている現象を、地球に届くわずかな光や電波から推測する。その過程に、強いロマンを感じていました。
高校生になる頃には、宇宙を「眺めるのが好き」というだけでなく、「なぜその現象が起きるのかを知りたい」と考えるようになりました。ブラックホールや超新星爆発、星の誕生について調べると、どれも物理法則で説明されていることが分かります。宇宙への興味は、次第に物理学そのものへの興味につながっていきました。
2.天文学を学ぶために物理学科へ
天文学を学べる大学を調べると、多くは理学部の物理学科で研究が行われていると知りました。
天文学というと、望遠鏡で星を見る学問という印象を持つ人もいるかもしれません。もちろん観測は重要ですが、観測しただけでは宇宙で何が起きているのかは分かりません。天体から届く光や電波を測定し、そのデータを力学や電磁気学、熱力学、量子力学などを使って解釈することで、初めて天体の温度や密度、運動を議論できます。
また、人間の目に見える可視光だけが宇宙からの情報ではありません。電波、赤外線、紫外線、X線などを観測することで、目には見えない低温のガスや塵、高温のプラズマ、激しい爆発現象を調べられます。見えないものを装置で捉え、物理法則からその正体を考えるところに、天文学の面白さがあります。
物理学科に進んでも、毎日宇宙の話だけを学べるわけではありません。力学や電磁気学の計算に苦戦することもあり、実験やプログラミングなど入学前には想像していなかった勉強もあります。それでも、こうした基礎が後から研究につながったとき、「このために学んでいたのか」と実感できます。私は、宇宙を知りたいという好奇心を憧れのままで終わらせず、自分の力で現象を説明できるところまで深めたいと思い、物理学を土台から学べる理学部物理学科を選びました。
3.名古屋大学を選んだ理由
物理学科のある大学は全国に数多くあります。その中で名古屋大学を選んだ一番の理由は、自分が入りたいと思える天文学の研究室があったからです。
高校生の頃、私は星がどのように生まれるのかに興味を持ち、その研究をしている大学や研究室を調べました。星は、宇宙空間に漂うガスが集まり、密度が高くなることで生まれます。しかし、その過程を直接見ることはできません。さまざまな場所を観測し、異なる段階にある天体を比べながら、星形成の流れを考えていきます。
名古屋大学には、電波を使って星間ガスや星形成を研究している研究室があり、観測だけでなく、望遠鏡や受信機の開発にも取り組んでいました。自分たちの望遠鏡で観測し、自分たちで得たデータから宇宙の謎に迫るという進め方に、強く魅力を感じました。
天文学の研究は、宇宙の画像を眺めるだけではありません。どの天体をどの波長で観測するかを考え、装置を調整し、膨大なデータを処理して、ようやく科学的な結果にたどり着きます。装置開発からデータ解析、物理的な考察までを一貫して行える環境は、とても魅力的でした。
大学選びでは偏差値や知名度も気になりますが、学びたい分野がある程度決まっている人には、どのような研究室があり、何を研究しているのかまで調べることをおすすめします。同じ物理学科でも、得意とする分野や持っている観測装置は大学ごとに異なるからです。私は調べるうちに、ここなら興味のあった星形成を実際の観測データで研究できると感じ、それが志望の決め手になりました。
4.現在の研究につながった選択
現在、私は電波天文学を専攻し、星が生まれる最初期の過程を研究しています。具体的には、宇宙空間に広がる水素原子のガスが冷えて集まり、水素分子のガスへ変わっていく過程を、観測データから調べています。
星は最初から星の形で生まれるわけではありません。薄いガスが集まって冷え、密度を増し、やがて分子雲と呼ばれる雲をつくり、その内部でさらに収縮して星が誕生します。しかし、原子のガスがどのように冷たい分子のガスへ変わるのかは、まだ十分に解明されていません。
研究では、電波望遠鏡のデータを計算機で解析し、ガスの速度や温度、空間分布を調べます。画面に表示されるのは、一見すると色のついた地図や複雑なグラフです。しかし、その一つ一つが何百光年も離れた宇宙の情報です。データに特徴を見つけ、それがどんな物理現象を表すのかを考える時間には、高校生の頃に感じた「遠い宇宙をわずかな手掛かりから理解する」という天文学の魅力が詰まっています。
もちろん、研究がいつも順調に進むわけではありません。それでも、自分で問いを立て、データで確かめながら少しずつ未知に近づく経験は、研究ならではだと思います。
また、大学に入って、天文学は一人で完結する学問ではないと知りました。望遠鏡を動かす人、装置を開発する人、解析する人、理論を考える人が協力して一つの成果をつくります。異なる専門を持つ人との議論から、自分だけでは思いつかない見方に出会えることもあります。
最後に
進路を決める時点で、将来研究したいテーマまで決まっている必要はありません。私も高校生の頃、今の研究内容を具体的に理解していたわけではなく、「宇宙についてもっと知りたい」という素朴な興味から調べ始めました。
大切なのは、自分が何に心を動かされたのかを手掛かりに、少しずつ具体的な選択肢を調べることだと思います。宇宙に興味があるなら、大学でどのような天文学の研究が行われ、その研究にどのような物理学が必要なのかを調べてみてください。研究室のウェブサイトを見たり、オープンキャンパスに参加したりすると、大学で学ぶ自分の姿を想像しやすくなります。
Profile
所属:理学研究科 理学専攻 物理化学領域 修士1年
出身地:岐阜県
出身校:岐阜県立大垣北高等学校