No.65 秋吉 一孝
Researchers'
No.65 秋吉 一孝
発明王として知られるトーマス・エジソンの「Failure teaches success.」や、20世紀最大の天才物理学者アルベルト・アインシュタインの「Failure is success in progress.」という言葉にもあるように、研究では思い通りの結果が得られることの方が少なく、多くの発見は失敗や予想外の結果から生まれます。私自身も数多くの失敗を経験してきましたが、そのたびに「なぜ失敗したのか」を考えることで、新しい知見や研究の方向性を見いだしてきました。研究では「失敗しないこと」よりも「失敗から学ぶこと」が重要です。失敗を恐れず挑戦し、その経験を次につなげることが研究の原動力だと思っています。
中学・高校時代から理科が好きでしたが、本格的に研究に興味を持ったのは大学で研究室に所属してからです。授業では既に分かっている知識を学びますが、研究では誰も答えを知らない未知の課題に挑戦します。特に、自分自身の手で未知の現象やデータを明らかにできることに魅力を感じました。初めて自分で実験計画を立てて得た結果が新しい知見につながる可能性を実感した時、大きな感動を覚えました。また、その発見が将来的に社会課題の解決に貢献する可能性にも魅力を感じ、研究の道を志しました。

本多・藤嶋賞受賞講演の際の写真です。
多くの方々に支えられて得られた成果であり、今後の研究への大きな励みとなりました。
主に「ナノ材料」を利用したエネルギー・環境材料の研究を行っています。ナノ材料は、バルク材料とは異なる光学的・電子的性質を示すことが特徴です。私は、半導体量子ドットや金属ナノ粒子と呼ばれる数ナノメートルサイズの微粒子を設計し、エネルギー変換材料の開発に取り組んでいます。特に量子ドットは、その基礎研究が2023年のノーベル化学賞の対象となった注目材料です。私たちは、従来の高毒性材料に代わる低毒性な多元素系量子ドットに着目し、太陽光発電や光触媒、バイオイメージングなどへの応用を目指しています。

自分の予想が当たった時も嬉しいですが、それ以上に面白いのは予想外の結果が出た時です。例えば、材料の組成を少し変えただけで吸収や発光特性が大きく変化したり、文献には報告されていない現象が観測されたりすると、「なぜだろう」と考えることが研究の醍醐味だと思います。仮説を立てて実験で検証し、その現象を理解できた時には大きな喜びを感じます。また、その成果を論文として発表できた時には大きな達成感があります。


私は、太陽光を高効率に電気へ変換できる次世代太陽電池材料の開発に取り組んでいます。太陽光発電は発電時にCO₂をほとんど排出しないため、脱炭素社会の実現に重要な役割を果たします。私たちが研究している量子ドットは、従来の太陽電池では十分に利用できなかった近赤外光まで吸収できることが特徴です。太陽光エネルギーの約半分を占める近赤外光を活用できれば、さらなる高効率化が期待されます。ただし、実用化には効率や耐久性、コストなどの課題も残されています。そのため、現在は基礎研究の段階ですが、将来的にはカーボンニュートラル社会を支える技術の一つになると期待しています。

「研究のアイデアは研究室で生まれる」と思われがちですが、実は居酒屋で生まれることもあります。私自身、現在共同研究をしている先生方の中には、学会の懇親会でたまたま隣の席になったことがきっかけで交流が始まり、その後共同研究へと発展した方もいます。研究成果は実験だけでなく、人との出会いや何気ない会話から生まれることも多く、こうした交流の場も研究には欠かせない大切な機会だと感じています。
休日は散歩をしたり、美味しいものを食べに行ったり、日本酒を楽しんだりしてリフレッシュしています。また、運動や食事にも気を配り、ChatGPTなども活用しながら健康管理を行っています。研究のアイデアは机に向かっている時だけでなく、散歩中などリラックスした時間にふと浮かぶことも多いため、気分転換の時間も大切にしています。


山崎川付近から撮影した桜とパロマ瑞穂スタジアムです。
季節の移ろいを感じながら散歩する時間が良い気分転換になっています。
今後は、ナノ材料の持つ未知の可能性をさらに追究し、エネルギー・環境問題の解決に貢献できる研究を進めていきたいと考えています。また、研究成果を生み出すだけでなく、学生たちが研究の楽しさを実感しながら成長できる環境づくりにも力を入れたいと思っています。研究は一人ではできません。多くの人との議論や協力によって新しい発見が生まれます。これからも好奇心を忘れず、失敗から学び、「なぜだろう」を大切にしながら研究に取り組んでいきたいと思います。
氏名(ふりがな) 秋吉 一孝(あきよし かずたか)
所属 名古屋大学大学院工学研究科 応用物質化学専攻 応用物理化学講座
職名 助教
略歴・趣味
2019 年東京大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。同年名古屋大学大学院
工学研究科ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)中核的研究機関研究員、2021 年同特任助教を経て、2023 年4 月より同助教。現在に至る。趣味は水泳、映画鑑賞、ゲーム。
・鳥本研究室(大学院工学研究科 応用物質化学専攻 応用物理化学講座)