2026.08.26
- 大学生活全般
大学は将来を決める場所?大学院生になって見えた進路と学び
こんにちは。名古屋大学大学院理学研究科修士1年の成瀬です。
前回は、私がなぜ名古屋大学理学部物理学科を選んだのかについて書きました。今回はその少し先の話として、大学に入った後の進路について考えてみたいと思います。
高校生の頃、私は「大学に入ったら物理や天文学を勉強する」というところまでは考えていましたが、その先についてはほとんど想像できていませんでした。大学院へ進むのか、就職するのか。大学院へ進んだとして、その後も研究を続けるのか。それとも研究とは異なる仕事に就くのか。
実際に大学生活を送り大学院生になってみると、大学の先には思っていた以上に多くの道があることに気づきました。そして、大学は単に専門知識を身につけるだけの場所ではなく、自分が何に興味を持ち、どのように生きたいのかを考える時間でもあると感じています。
大学卒業後の進路は一つではない
大学に入る前は、「大学で専門を学んだら、その専門に関係する仕事に就く」というイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
理学部物理学科では、学部で学んだ内容をさらに深めたいと考えて大学院へ進む人が多くいます。私もその一人です。学部4年生で研究室に所属し、実際に研究を始めてみると、1年間だけでは分からないことや、もっと調べたいことが次々に出てきました。そのため大学院に進み、引き続き研究に取り組むことを選びました。
一方で、学部を卒業して就職する人もいます。また大学院には進むものの、学部とは異なる大学や研究分野を選ぶ人もいます。これまで学んだ内容を活かして専門性を深める人もいれば、「別のことをやってみたい」と考えて新しい分野へ進む人もいます。大学では、高校生の頃には存在すら知らなかった分野に出会うことがあります。講義や研究室見学、先生や先輩との会話をきっかけに興味の方向が変わることもあります。大学院進学は、それまでの専門を延長するだけでなく、自分の興味に合わせて進路を組み替える機会でもあるのだと思います。
高校生の段階で、その先の進路まで完璧に決めておく必要はありません。むしろ、大学で実際に学びながら、自分に合う道を探していくことの方が自然なのだと思います。
大学院の先にもさまざまな道がある
では、大学院まで進んだら、その後は研究者になるのでしょうか。もちろん、その道を選ぶ人もいます。博士課程へ進んで大学で研究を続ける人もいれば、国立天文台のような研究機関で研究や望遠鏡・観測装置の開発に携わる人もいます。しかし、大学院を卒業した人の全員が研究者になるわけではありません。研究で身につけた専門知識を活かし、メーカーやIT、データ分析などの分野で働く人もいます。物理学そのものを直接使わなくても、プログラミングや統計処理、データから仮説を検証する力を活かせる仕事は数多くあります。
さらに、専門とはほとんど関係のない業界へ進む人もいます。大学院まで研究したのだから、その分野の仕事に就かなければ「もったいない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、研究を通して得るものは専門知識だけではありません。私自身も大学院で研究を続けながら、自分が社会に出てどのような仕事をしたいのかを考えるようになりました。研究は面白い一方で、研究生活を経験したからこそ、自分がどんな環境で働きたいのか、どんな課題に向き合いたいのか、どのような形で社会に関わりたいのかを考える機会も増えました。
大学院に進んだからといって、将来が研究職だけに限定されるわけではありません。専門を深く学んだからこそ、それを直接使う道と、そこで得た考え方や技術を別の場所で使う道の両方が見えてくるのだと思います。
では、大学では何を学ぶのか
こう考えると、「将来その専門を使わない可能性があるなら、大学で専門を学ぶ意味は何だろう」と思うかもしれません。私も大学院生になってから、このことを以前より考えるようになりました。もちろん大学では知識を学びます。物理学科であれば、力学や電磁気学、量子力学、統計力学などを学びます。研究室に入れば、より専門的な知識や実験、観測、プログラミングなども身につけます。ただ、大学で得られるものはそれだけではないと思います。
研究では、教科書の問題のように答えが用意されているわけではありません。自分で問いを立て、必要な情報を集め、仮説を考え、データを使って確かめます。予想した結果が出なければ、どこに問題があるのかを考え、方法を変えて再び試します。私自身、研究で時間をかけて進めた解析を大きく見直したことがあります。それまで積み上げた結果の多くが使えなくなり、研究の進め方を改めて考え直す必要がありました。それでも先行研究を読み直し、指導教員や他の研究者と議論しながら原因を整理し、解析方法を一つずつ見直しました。最終的には新たな結果を得て、学会発表にもつなげることができました。
この経験から学んだのは、単に「諦めずに頑張る」ことではありません。うまくいかないときに原因を分けて考えること、自分の考えに固執せず別の視点を取り入れること、必要であればそれまでの方針を捨ててやり直すことの大切さです。知らないことに出会ったときにどう調べるのか。複雑な問題をどう分けて考えるのか。自分の考えをどう人に伝えるのか。間違っていたときにどう修正するのか。大学は専門知識を得る場所であると同時に、こうした「考え方」を身につける場所でもあるのだと思います。
大学生活は勉強だけではない
ここまで研究や進路について書いてきましたが、大学生活を振り返ると、勉強や研究だけが大切だったとは思いません。友人と旅行をしたり、サークル活動をしたり、アルバイトをしたり、何となく集まって話したり。そうした時間も大学生活の大きな一部です。大学は、高校までと比べて自分で使える時間が大きく増えます。その分、何をするかも自分で決める必要があります。専門の勉強に打ち込むのもよいですし、サークルに夢中になるのもよいと思います。アルバイトを通じて大学とは違う世界を知ることもできます。長期休暇に旅行へ行ったり、それまでやったことのないことに挑戦したりするのも大学生だからこそできる経験です。
私自身も、勉強や研究以外の活動を通してさまざまな考え方を持つ人と出会いました。教室や研究室の中だけにいると気づけなかった自分の得意・不得意や、何をしているときに楽しいと感じるのかが見えてきたこともあります。一見すると将来に直接つながらない経験が、後になって進路を考える材料になることもあります。だからこそ、大学では「将来のためになることだけをしなければ」と考えすぎなくてもよいと思います。興味のあることを学び、いろいろな人に出会い、ときには思い切り遊ぶ。その中で、自分が何を面白いと思い、何を大切にしたいのかを知ることも重要です。
最後に
高校生の頃の私は、宇宙についてもっと知りたいという気持ちから物理学科を選びました。そのときは、大学院に進んだ自分や、その先の進路についてここまで具体的に考えていたわけではありません。大学に入り、物理を学び、研究を始める中で、自分の興味も将来についての考え方も少しずつ変わってきました。大学は、入学したときに決めた道をそのまま進み続ける場所ではないのだと思います。学んだ結果、もっと深く研究したいと思えば大学院へ進めばよい。別の分野に興味を持てば方向を変えてもよい。社会に出て働いてみたいと思えば就職する道もあります。大学院で研究した後に、全く違う業界へ飛び込むことだってできます。
大切なのは、最初から完璧な進路を決めることではなく、その時々で興味を持ったことに向き合いながら、自分の選択肢を増やしていくことだと思います。大学で何を学ぶかはもちろん重要です。しかし、それと同じくらい、「自分は何に興味を持つのか」「どんなことをしているときが楽しいのか」「将来どんな形で社会と関わりたいのか」を考えられることにも、大学へ行く意味があるのではないでしょうか。
そして、その答えを探している間も、大学生活そのものを楽しむことを忘れないでほしいと思います。
Profile
所属:理学研究科 理学専攻 物理科学領域 修士1年
出身地:岐阜県
出身校:岐阜県立大垣北高等学校