名大生ボイス

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2018.11.23

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名大で最も重要な学術講義、『名古屋大学レクチャー2018』に参加しました!

 

 

 

 

2018年11月23日に、名古屋大学の最も重要な学術講義として位置づけられ一般に公開されている『名古屋大学レクチャ―2018』が開かれました。

 

今回の講演者は「ニュートリノ振動」を発見して2015年ノーベル物理学賞を受賞した梶田 隆章先生です!

 

また、梶田先生の講演に先立ち、名古屋大学大学院理学研究科長の杉山 直先生による解説講演も行われました。

 

 

 

 

名古屋大学レクチャ―とは?

 

 

名古屋大学レクチャ―は名古屋大学の最も重要な学術講義として位置づけられ、積極的に一般に公開されています。

今回の講演にも一般の来場者が多く見られ、中には小学生や中学生といった子どもたちの姿も見られました。

 

 

名古屋大学レクチャ―は今回で14回目となり、毎回世界トップレベルの研究者が招聘され、名古屋大学総長がホストとして、名古屋大学で最も栄誉がある名古屋大学レクチャーシップの称号を授与します。

 

 今回も、梶田先生には名古屋大学レクチャ―シップの表彰楯が贈呈されました。

 

楯には「聖人が現れ、平和で学問が尊重される世の中になる前兆」とされる伝説の生物「麒麟」がデザインされているそうです。

 

では、ここからは今回の講演の内容を簡単に紹介していきます。

 

 

 

解説講演「謎の粒子ニュートリノ」

 

 

梶田先生の講演の前に、名古屋大学大学院理学研究科長である杉山 直先生による解説講演が行われました。

杉山先生の専門は宇宙論なのですが、ニュートリノなどの素粒子を研究することが宇宙を理解することにつながるといいます。 

 

解説講演の内容を簡単に紹介させていただきます。

 

 

 

素粒子とは何か?

 

 

まずは素粒子とは何か、という基本的な疑問から考えましょう。

 

 

素粒子とは、物質を分解できる最小単位のことを指します。

 

例えば、私たちの身の回りにある酸素・窒素・炭素といった原子は、電子原子核に分解することができます。ここで、電子はそれ以上は分解できないため素粒子なのですが、原子核はさらに分解することができて、陽子中性子に分解されます。そして、陽子と中性子はさらに3つのクォークという粒子に分解することができ、このクォークが今のところそれ以上分解できない素粒子とされています。

 

 

素粒子は次の5種類に大別されます。

 

① 原子核を構成する粒子...クォークの仲間

② 電子の仲間

➂ ニュートリノの仲間

④ 力を媒介する粒子の仲間(ゲージ粒子)

➄ 質量を生み出す粒子(ヒッグス粒子)

 

中でも、クォーク・電子・ニュートリノの仲間にはそれぞれ3つの種類があり、これを「世代」と呼びます。

 

 

 

http://higgstan.com/standerd-model/ 

 

 

これらの素粒子は「標準模型」という理論によって支配されており、標準模型を用いれば、10-18,10-19(m)以上のスケールで物理現象を記述することができます。

 

 

 

さて、クォーク・電子の仲間は世代が大きいほど重いのですが、一方でニュートリノの仲間には長らく質量があるのかどうかすらわかっていませんでした

もちろん、現在はニュートリノには質量があることがわかっており、それを見つけたのが梶田先生なわけです。

 

では 次に、ニュートリノに質量があるということがどのようにして分かったのか、ニュートリノの発見の歴史から追って見ていきましょう。

 

 

ニュートリノ...目に見えないお化け粒子の発見

 

ニュートリノは、中性子が放射線を出す際の反応(ベータ崩壊)の中から発見されました。

 

そもそも放射線は19世紀末に、ベックレルがウランから、キュリー夫人がトリウム・ポロニウムから放射線が出ていることを発見しました。そして、ラザフォードが放射線には3つの種類があることを発見しました。

3種類の放射線はそれぞれアルファ線・ベータ線・ガンマ線と呼ばれ、その正体はそれぞれヘリウム原子核・電子・光子(高エネルギーの光)です。

そして粒子が放射線を出すときの反応を「放射性崩壊」と呼びます。

 

 

では、中性子がベータ崩壊する様子を考えます。ベータ崩壊とは、ベータ線(電子)を出す放射性崩壊です。

中性子がベータ崩壊すると、中性子はベータ線(電子)陽子に分かれます。

ここで、静止している中性子が2つの粒子に分裂するならば、分裂後の陽子と電子は互いに逆向きに飛んでいくことが想像されるでしょう(これを運動量保存則といいます)。

 

しかし、実際の反応では、陽子と電子は逆向きでなく、少しずれて斜めに飛んでいきます

 

 

1930年、こういったベータ崩壊の際の不思議な現象を見たパウリは、目に見えない第3の粒子が陽子と電子とともに放出されていると考えました。

そして、1934年にはフェルミがこの第3の粒子に「ニュートリノ」という名前を名付けました。

 

ここで、初めてニュートリノが登場したのです。

 

目に見えないはずのニュートリノですが、その後にニュートリノが衝突した他の粒子が動くのを見ることで、実際に観測されました。

 

 

 ニュートリノはどこから来るか

 

ニュートリノは目に見えず、ほとんどの物質をすり抜けるなどの性質を持つ不思議な粒子です。しかし、実はこの不思議粒子ニュートリノは、宇宙から絶えず降り注いでいます

 

地球に降り注いでいるニュートリノは、宇宙で起きている核反応で生まれたものです。

例えば、太陽などの恒星の内部や、超新星爆発、宇宙線と大気分子の衝突などによってニュートリノが生まれます。

 

ここで、超新星爆発とは、太陽の約10倍以上重い恒星が最期に起こす大爆発を言います。

超新星爆発が起こると、その星があった場所は数週間の間、非常に明るく輝くため、肉眼で見えない星が超新星爆発を起こした際には、あたかもその場に新たな星が生まれたかのように見えます。これが「超新星」という名の由来です。

 

1987年、400年ぶりに肉眼で見ることができる超新星爆発が大マゼラン銀河で起こりました。

この時生じたニュートリノを、梶田先生が師事していた小柴先生がカミオカンデにてとらえました。これによって、天体は確かにニュートリノを出していることが分かりました。

 

ニュートリノに質量はあるのか、ニュートリノ振動とは何なのか?

 

ニュートリノには3種類(3つの世代)があることが確定しており、世代順に電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノと呼ばれます。

 

そして、仮にニュートリノが質量を持っているならば、ニュートリノが飛来している間にニュートリノは種類を変え、3つの種類を行ったり来たりする(=振動)ことが示唆されました。

この、ニュートリノが他の種類に変わる現象がニュートリノ振動です。

 

 

質量があるならばニュートリノ振動が起こるということを理解するには、量子の世界を考えなければなりません。

 

 

前提として、量子の世界では、物質も光も、波と物質の二面性を持ちます。

波としての性質とは、干渉や回折といった性質を指します。

 

例えば、2重スリットに波(光)を通すと干渉が起こり、干渉縞が見られます。

同様に、物質であるはずの電子や中性子を2重スリットに通しても、干渉縞が見られます。

 

 

そして、やはりニュートリノも波としての性質を持っています。

 

では、ニュートリノを音(音波)に例えてみます。

音程(振動数)が近い音波が合わさると、「うなり」という現象が起こり、音波の大きさが大小するのはご存知でしょうか。

これと同じことが、ニュートリノの波で起こります。

 

もし、3種類のニュートリノがそれぞれ異なる質量を持っていた場合、複数のニュートリノの波の重ね合わせによって、波の音程(振動数)が変わり、「うなり」を生じます。

ニュートリノの波の大きさが大小するということは、ある種類のニュートリノの個数が多くなったり少なくなったりする(=ニュートリノ振動が起こる)ということに相当します。

 

従って、ニュートリノが質量を持つ場合は、ニュートリノ振動が起こります。

 

 

梶田先生は、宇宙線が大気と衝突することによって作り出されるミューニュートリノが、地球を貫通して進む間に、タウニュートリノという別の種類のニュートリノに変化することを発見しました。

 

ニュートリノの振動を見つけ、ニュートリノに質量があることを決定的にしたという業績により、梶田先生は2015年ノーベル物理学賞を受賞したのです。

 

 

 

名古屋大学レクチャ―『神岡でのニュートリノ研究をふりかえって』

 

 

 今回の講演は、ノーベル物理学賞受賞記念講演ということで、ノーベル物理学賞に繋がったスーパーカミオカンデによるニュートリノ振動の観測が主として話されました。

話された順に、講演の内容を紹介させていただきます。

 

 

はじめに

神岡での研究の始まり―カミオカンデ―

スーパーカミオカンデ

ニュートリノ振動の発見

もう1つのニュートリノ振動の発見

ニュートリノの質量と宇宙

超新星ニュートリノ再び

まとめ

 

 

はじめに

 

はじめに、梶田先生の自己紹介がありました。

 

 

梶田先生は、埼玉大学理学部物理学科を卒業しています。

意外なことに、大学時代は弓道ばかりしていたそうです。しかし、大学の物理の授業には面白いと思ったものもあり、物理の魅力にも惹かれたとのことでした。

 

梶田先生は3年の秋には大学院進学を決断し、それから勉強に励み、東京大学の小柴研究室に合格しました。

 

 

 

ちなみに、大学院入試の難易度は大学の入試とはまた異なるのですが(名大の大学院を受験する学生には、東大や京大の大学院を滑り止めで受験する者も多いそうです)、基本的に大学は自校の頭脳の流出を防ぐため、何らかの形で自校の学生を受かりやすくすることが多いようです。そのため、外部から受験して大学院入試に合格するのは難しいと言えます。

 

 

神岡での研究の始まり―カミオカンデ―

 

東京大学小柴研究室では、岐阜県飛騨市神岡町にある旧神岡鉱山の地下1000メートルに「カミオカンデ」という観測装置を建設し、カミオカンデによるデータを用いた研究を行っていました。

 

 そもそもの始まり

 

そもそもの始まりは、1970年代の新しい素粒子理論によって、原子核内にある陽子が約1030年(今の宇宙の年齢の100億倍の100億倍)の寿命で崩壊すると予言されたことにあります(とてつもなく長い寿命のため、実生活では陽子が壊れようが壊れまいが関係ありませんが、学問の上では重要なのです)。

 

この予言を受けて、世界中で陽子の崩壊を検出する実験が開始されました。その1つが日本で建設されたカミオカンデによる観測です。

 

 

カミオカンデは、縦横16メートル、3000トンの純水タンクの内壁に1000本の光検出器を取り付けたものです。純水中の陽子が崩壊された際に発せられる「チェレンコフ光」という光の観測を目的として建設されました。

このカミオカンデですが、もちろんどこかで売られているものではありません。カミオカンデは、1983年に梶田先生たち研究者によって建設されたのです。

 

 

 

講演では、ボートに乗ってタンクの内壁に光検出器を取り付けている際の写真が紹介されました。ボートを用いたのは素人が足場を建設することが危険だと判断したからだそうで、光検出器の取り付けは徐々に水を増やしていきながら進められました。

 

梶田先生は当時を振り返り、「大学時代までは第一線の研究は全く想像ができず、大学院で自分にも研究ができるのか自信は全くなかった。しかし、大学院時代、カミオカンデを作り上げていくことを本当に楽しく思った。このようなことが物理学の発展への貢献になると思うと、やりがいも強く感じた。そして研究の世界に惹かれ、本気で研究者を目指そうと思った。」と語りました。

 

さて、カミオカンデは1983年7月に実験を開始しました。しかし、陽子崩壊の信号をとらえることはできませんでした。

とはいえ、光検出器の性能は非常に良かったため、実験開始から数か月後に小柴先生は太陽ニュートリノを観測しようと提案しました。

 

 

ニュートリノの観測方法

 

ニュートリノは非常に小さい素粒子であり、電荷をもっていないために見ることはできません。しかし、ニュートリノは稀に純水中の水分子を構成する原子核に衝突することがあります。その際に、別の「電荷をもった」素粒子が発生し、それを光検出器でとらえることが可能であるため、カミオカンデで太陽ニュートリノを観測することができました。

 

 

なぜ太陽ニュートリノなのか

 

太陽ニュートリノは、その名の通り太陽で発生して太陽から飛んでくる電子ニュートリノのことを指します。ミューニュートリノやタウニュートリノは太陽では発生せず、飛んできません。太陽ニュートリノの存在は太陽で核融合が行われている証拠であり、1960年代末より世界中で太陽ニュートリノの観測が行われはじめました。

 

しかし、1960年代末に初めて観測が成功した際には理論値の約1/3の量しか観測できず、さらに、1980年代までは初めて観測に成功したR.Davis以外で太陽ニュートリノを観測できた研究者はいませんでした。

 

そこで、小柴先生は「もうちょっと頑張って(装置を改良して)カミオカンデで太陽ニュートリノを調べよう」と言ったわけです。

小柴先生は「もうちょっと」と言いますが、実際の装置の改良には、光検出器を全て1.2メートル内側に配置しなおすなどの作業が行われ、改良する側としては非常に大変であったといいます。

 

その後いろいろあって、1987年1月ごろからデータをとれるようになりました。

 

 

そのちょうど1か月後のことです。

1987年2月23日に、肉眼で見られる400年ぶりの超新星爆発が発生しました。

 

そして、その時にカミオカンデでは10個ほどのニュートリノが観測されていました。これが超新星爆発のメカニズムの解明となり、小柴先生の2002年ノーベル物理学賞受賞に繋がったのです。

 

 

 大気ニュートリノ

 

大気ニュートリノとは、宇宙線と大気の衝突から発生するニュートリノです。

カミオカンデの主目的であった陽子の崩壊を見つけるときに気を付けねばならないノイズが大気ニュートリノでした。

 

 

1986年ごろ、やはり陽子崩壊は見つかっていませんでしたが、ノイズ(大気ニュートリノ)に埋もれて陽子崩壊の信号がある可能性もありました。そこで、大気ニュートリノについてしっかり理解して、陽子崩壊の信号をしっかり見分ける必要がありました。

 

 

そのため、新しい解析プログラムが開発されました。

しかし、プログラムを開発してすぐには、予期しないプログラムミスがあることが多いです。

 

そこで、まずは過去のデータに含まれるノイズを解析したところ、予想よりもミューニュートリノの数がかなり少ないことが分かりました。

...これはどこかにプログラムミスがあるに違いない、ということで、1986年暮れころから、プログラムの間違い探しが開始されました。

 

 

大気ニュートリノ(ミューニュートリノ)の不足

 

間違い探しが開始されてから、1年間が経ちました。

が、プログラムミスが発見されることはありませんでした。

 

1年も探してミスが発見されないとなると、プログラムは正しく、それによって解析されたデータも正しいものであると考えられます。

そこで、この「電子ニュートリノは理論値と観測値がほぼ同じであるが、ミューニュートリノは理論値より観測値の方がかなり少ない」という現象は、人類がまだ知らない現象であるとして、論文にまとめることになりました。

 

 

梶田先生は当時を振り返り、「この論文は世界的には『カミオカンデは何を間違えたのだろう』というように評判が悪かったが、1年も間違い探しをしてきた身としては、このデータをすごく重要に感じ、この謎を解明することに専念することにした。謎を解き明かすわくわく感があり、研究者としてはこのころが一番楽しかった。」と語りました。

 

 

大気ニュートリノの不足はニュートリノ振動のせい?

 

もしニュートリノが質量を持っていれば、ニュートリノは飛来する間に種類を変えます。例えば、ミューニュートリノとタウニュートリノの間でニュートリノ振動が起こります。

このことは理論的には50年以上前に、名古屋大学の牧・中川・坂田博士の3名によって予言されていました。

 

 ニュートリノは地上から10~20kmの高さで発生します。しかし、20km程度の距離ではニュートリノ振動は起こらないかもしれません。

しかし、地球の反対側で発生し、地球を貫通して地面から飛んでくるニュートリノを観測すれば、ニュートリノ振動が起こっている可能性が高いです。

 

そこで、空からくるニュートリノと地面からくるニュートリノの数が違えば、ニュートリノ振動が起こっていると言えるはずです。

...しかし、3000トンのカミオカンデでは、これを観測するには小さすぎました。

そこで、新たに「スーパーカミオカンデ」が建設されることになったのです。

 

 スーパーカミオカンデ

 

カミオカンデは、縦横16メートル、3000トンの純水タンクの内壁に1000本の光検出器を取り付けたものでした。

 

一方、スーパーカミオカンデはカミオカンデの20倍の有効体積を持っており、縦横41メートル・39メートル、5万トンの純水タンクに1万1千本の光検出器が取り付けられたものです。

また、カミオカンデとは異なる点として、スーパーカミオカンデはニュートリノに関する研究に特化して作られたことが挙げられます。

 

スーパーカミオカンデは1995年に建設され、1996年に純水が注入されました。

 

 ニュートリノ振動の発見

 

スーパーカミオカンデを用いて、ミューニュートリノによるチェレンコフリングのデータを手分けして解析しました。

 

その結果、地球の反対側で生まれたミューニュートリノが地球内部を1万キロ進むうちに、そのうちの半数がタウニュートリノに変わっていたことが明らかになりました。

これは紛れもないニュートリノ振動の証拠であり、1998年ニュートリノ国際会議で発表されました。

 

なんと、この発表の翌日に、当時のクリントン大統領がマサチューセッツ工科大学卒業式にて、ニュートリノ振動の発見について触れてくださったそうです。

 

梶田先生は発表の次の日に大統領に触れてもらったことは光栄である、と語りました。

また、もし発見が今だったら今の大統領(トランプ大統領ですね)は何と言うだろうか、という冗談も交えておられました。

 

もう1つのニュートリノ振動の発見

 

さて、話は太陽ニュートリノに戻ります。

太陽ニュートリノが理論の1/3しか観測されないという問題があったわけですが、やはりカミオカンデで観測しても、理論よりも太陽ニュートリノは少なく観測されていました。

 

実は、20世紀の太陽ニュートリノ実験は、全て「電子」ニュートリノの不足を観測していました。足りない理由はもちろんニュートリノ振動だったわけですが、ニュートリノ振動の証拠が20世紀中に得られることはありませんでした。

 

 

しかし、2001年から2002年にかけて、SNO(サドベリー・ニュートリノ天文台)実験という、カナダの鉱山にて1000トンの純粋な「重水(重水素からなる水)」を用いた実験によって、太陽ニュートリノ問題は解決されました。

 

重水は電子ニュートリノの数だけでなく、全ての種類のニュートリノの数を観測することができます。

太陽で作られるニュートリノは必ず電子ニュートリノであるわけですが、全種類のニュートリノの合計が、太陽で作られているニュートリノの理論値に一致していたのです。

 

 

以上のニュートリノ振動の発見という功績により、2015年に、スーパーカミオカンデを用いて大気ニュートリノのニュートリノ振動を発見した梶田先生と、太陽ニュートリノのニュートリノ振動を発見したSNO実験の責任者であったアーサー・マクドナルド先生がノーベル物理学賞を共同受賞したのです。

 

 

さて、私たちは電子に質量があることを知っています。

クォークに質量があることも知っています。

 

では、なぜニュートリノに質量があることを、これほどまでに喜ぶのでしょうか。

 

 

ニュートリノの質量と宇宙

 

なぜニュートリノの質量が大切なのか

 

クォークや電子の仲間は、世代が増えるとより重くなります。

これらの世代と質量をグラフで表すとわかりますが、ニュートリノの質量は電子やクォークの仲間に比べて100億倍かそれ以上軽いのです。

 

その、あまりにも小さいニュートリノの質量が、私たちが素粒子の世界や宇宙をより深く理解する鍵であるかもしれません。

 

具体的には、なぜ宇宙は物質でできていて、反物質が存在しないか、という謎を解く鍵が、小さい質量を持ったニュートリノにある可能性があるのです。

 

 

3代目カミオカンデ、「ハイパーカミオカンデ」

 

現在、スーパーカミオカンデをさらに8倍大型化した、「ハイパーカミオカンデ」の建設が検討されています。

 

ハイパーカミオカンデは、宇宙の物質の起源の検証を目指し、ニュートリノ振動をより細かく観測することを目的とします。

具体的には、ニュートリノのニュートリノ振動と、反ニュートリノのニュートリノ振動に違いがあるかを調べることを目的としています。仮に、ニュートリノと反ニュートリノの間に差異が認められれば、現在の宇宙に反物質が存在しない理由...つまり、宇宙の物質の起源の解明につながるでしょう。

 

また、ハイパーカミオカンデは、カミオカンデの当初の目的であった陽子崩壊や、超新星爆発を観測することも目的としています。

 

 

超新星ニュートリノ再び

 

超新星爆発のメカニズムは長らく計算機で再現できていませんでしたが、近年になってようやく、超新星爆発をある程度シミュレーションで再現できるようになりました。

 

しかし、本当にシミュレーション通りか、多くのニュートリノを観測して確かめる必要があります。

 

例えば、オリオン座のベテルギウスという星はいびつな形状をしており、いつ超新星爆発をしてもおかしくないと言われています。このベテルギウスが超新星爆発したときのスーパーカミオカンデでの予想ニュートリノ反応数は2500万にも上ります。

 

また、ハイパーカミオカンデを用いてニュートリノを観測することで、超新星爆発の歴史を探ることが可能です。

というのも、過去の宇宙で、今まででも超新星爆発は何度も起こっています。過去の超新星ニュートリノを観測することで、超新星爆発の宇宙史を完成させることもできるということです。

 

 

ハイパーカミオカンデは、2020年からの建設開始を目指して準備が進んでいるということです。

 

 

まとめ

 

まとめとして、梶田先生は「いい先生・いい仲間・いい研究プロジェクトに恵まれた」と仰っていました。

 

また、「科学研究は素晴らしい。若い皆さんにも科学に興味を持ってもらい、科学研究に参加してもらえればと思う。」とのことです。

そして最後に、「若くない人には子供に科学の素晴らしさを伝えてほしい」とおどけていました(会場には一般の、大人の方々が多く見られました)。

 

 

 

 

 

 

 

 ****

 

そろそろセンター試験ですか。

 

この時期に受験生ってこのサイト読んでるんですか?

 

まぁ、世間では受験生は寝る間も惜しんで必死になって勉強しているのが当たり前だと思われているようですが、僕はそうは思いません。

 

別に試験前日に遊んでても受かる学生は受かります。

 

とりあえず、試験にはリラックスして臨んでください。

 

で、春には名大理学部で科学研究に参加してもらえればと思います。

Profile

所属:理学部物学科2年生

出身地:静岡県

出身校:静岡県立浜松南高校