2018年12月27日に、名古屋大学の豊田講堂でWPIサイエンスシンポジウムが開かれました。
ノーベル賞受賞者の天野浩先生をはじめ、伊丹健一郎先生など著名な方々がご講演されることもあり、
高校生を中心に多くの人が集まり大盛況となりました。
WPIサイエンスシンポジウムって?
そもそもWPIとは一体何かご存知ですか?
WPIとは「世界トップレベルの研究拠点プログラム」のことであり、
「世界最高水準の研究」
「融合領域の創出」
「国際的な研究環境の実現」
「組織の改革」
の4つをミッションとしています。
現在、WPIに採択された研究拠点は国内に13ヶ所あり、選ばれた拠点は国からの集中的な支援を受けられ、国際水準の研究環境と生活環境の整備が目指されています。
そしてその内の1つ、「トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)」は名古屋大学にあり、化学・生物・理論科学が融合した最先端の研究が行われています。凄い。
そして、今回のようなシンポジウムでは、WPIに採択された研究拠点が一堂に会し、それぞれの研究成果をブースで分かりやすく説明してくれるほか、世界トップレベルの研究者の講演が催されます。
幅広いサイエンスの最先端を感じられるので、進路で迷っている人はこのようなイベントに参加すると進路選択の参考になるのではないでしょうか。
それでは、当日の様子をお伝えします。
朝から白熱、ブースディスカッション
開会は10時30分からなのですが、10時の段階で会場には多くの来場者の姿がありました。
各研究拠点での、研究成果が紹介されていることもあり、多くの人が複数のブースで話を聞いていました。
私も研究者を目指す以上、他人ごとではありません。彼らに交じり、色々な分野の人の話を聞きました。私の専門の生物以外にも数学や物理、高分子化学の人もいて、異分野融合の価値を感じます。
貴重な講演
開会も近くなり会場に入ると、学生優先の席が設けられており、多くの学生が先のブースでもらった研究所のパンフレットを読みながら、始まるのを心待ちにしていました。
今回のシンポジウムでは、「sli.do」というサービスが利用され、匿名で質問を集められるようになっており、時間がなかったり、大勢の前で質問するのが苦手であったりしても質問ができるようになっていました。
こちらから「sli.do」にアクセスし、コード「wpi7」を入れてもらうと当日の質問が見られますので、興味のある方はご覧ください。
一人目は未来材料・システム研究所未来エレクトロニクス集積研究センター長の天野浩先生です。
青色LEDのお話から研究者支援の現状と天野先生自身の研究理念などまで、どんな分野の人にとってもためになる話だったのではないでしょうか。
特に卓越大学院の話では、博士課程に進む学生への教育を厚くし、卒業後に社会で必要とされる人材を養成することが紹介され、社会への応用に重きを置く研究方針が語られました。
講演後には挙手による会場からの質疑応答もあり、高校生からの鋭い質問が飛びました。
また、「sli.do」でもリアルタイムに多くの質問が集まり、後日ホームページで返答が頂けるそうです。聞きたくても聞けない人への配慮が素晴らしいですね。
二人目はトランスフォーマティブ生命分子研究所長の伊丹健一郎先生です。
「美しい形の分子には機能が宿る!」という理念を話され、先の天野先生とは打って変わり基礎研究の大切さ・面白さが伝えられました。科学を発展させたいという思いは同じでも、研究方針の異なる人の話が短時間で聞けるのは非常に面白いです。しかも、そのどちらも世界の第一線で活躍される研究者なのですから。
伊丹健一郎先生
学部4年生が制作したという伊丹研究室のプロモーションビデオが流されたときは、後ろの席の高校生から「俺めっちゃ名大行きたくなった!!」との声が聞こえ、会場全体が静かな熱気に包まれました。
昼休憩・・・?
お昼になり、昼食休憩なのですが、再びブースでの研究紹介・質問が活発になりました。
せっかくなので、何人かの学生に話を聞いてみましょう。
滝高校の1年生二人組は、ブースで受け取った研究成果の資料を読み二人で話し合っていました。
二人は自然科学部の部員で、学校の進路の案内から今日のイベントの話を聞き、参加したそうです。
Q.一番気になった研究は何ですか?
「トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)の体内時計の研究です。」
ITbMでは体内時計を調節する仕組み、時差ぼけ緩和の薬の研究が行われています。
「宇宙の時差ぼけってご存知ですか?宇宙での時差ぼけが今後大きな問題になると思ってまして、その解消ができると思うのですよ!」
彼らに言われて初めて知ったのですが、宇宙では人間の24時間のリズムが崩れてしまい睡眠障害を起こすのだそうです。近い将来、宇宙旅行が実現した時に、快適に過ごせないのは大きな問題になるでしょう。私も勉強がまだまだ足りません。
時習館高校からきた1年生グループは、ブースの目の前で、聞いた内容について話し合っていました。
皆科学部に所属しており、現在は「消臭」の研究をしているそうです。
Q.一番気になった研究は何ですか?
「ITbMのカーボンの研究が気になりました。」
Q.どうして?
「将来、カーボンの研究をして、スマホなどの電子機器を安価に製造できるようにし、発展途上国の人みんなにいきわたる様にしたいからです!」
高校生の段階でやりたいことが定まっており、力強い意志を感じました。
夢がかなうといいですね!
そんな彼らでも大学生になる悩みを聞くと、サークルはどんなものがあるのか、バイトは何がおすすめか、学部でのコースって何が違うのかといった疑問がありました。
NU-Cheers!ではそんな質問に答えるべく色んな学部の先輩たちが記事を書いてます。
良ければ参考にしてくださいね!
まだまだ終わらない!
後半に入ると、
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構の河西春郎先生と
金沢大学ナノ生命科学研究所の松本邦夫先生のご講演がありました。
河西先生は、脳神経の複雑な話を分かりやすくユニークに伝えておられ、
松本先生は、異分野融合によりがん研究がどう進んだか、異分野融合の重要性をお話しされました。
その後、会場参加型のパネルディスカッションが行われました。
会場に先ほど講演された3名が現れ、スライドには小学生や高校時代の写真が出されました。
それが、どなたの昔の写真か当てるゲームの始まりです。
皆元気に正解と思う色紙を掲げます
しかし、話される言語は英語です。WPIの施設内では公用語は英語となっており、その空気を感じてもらうためとのことです。突然の英語での進行に戸惑いながらも、頑張って聞き取ろうと必死になる参加者が多数でした。
それでも、トップレベルの先生たちの学生時代の苦手な教科や失敗談など意外な一面が見られると、会場は笑いに包まれ盛り上がりました。
河西先生は英語が苦手だったと言いながらも、その苦労話を英語でされました。なんたる矛盾!いいえ、努力されたのでしょう。英語が苦手な人への励みになりますね。
また、「研究者を目指すなら海外に行くべきか」という質問については、御三方から意見が寄せられ、まとめますと、
「海外に行くことを目的としないようにし、そこでどうするかが大切。
不自由を味わうために短期でもいいから行くのはあり。そうすることで、日本で困っている外国人の気持ちがわかり優しくできるから。」
とのことでした。
どなたも海外での研究経験があるそうで、目標をもって海外経験を積むことが大事ということですね。
WPIに採択されている拠点では特に世界トップレベルの研究が行われています。
名古屋大学のITbMには、農学部、理学部、工学部からかかわることができるので、自分の興味を持った研究がされているかチェックしてみてはいかがですか?
Profile
所属:工学部化学・生物工学科4年生
出身地:愛知県
出身校:愛知県立一宮高等学校