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大学文書資料室

No.6 堀田 慎一郎 特任助教

My Best Word:大学は社会の要請を生み出すのが本来の姿である

 

Q:「My Best Word」を選ばれた理由は?

大学文書資料室が編集した小冊子『歴代総長と名大史』(名古屋大学発行、平成26年)では、歴代の総長等が、主に任期中に述べた言葉を1人1つずつ選んで挙げました。その中でも、早川幸男第9代総長が平成元年3月の卒業式で述べたこの言葉が特に印象に残っています。

 

Q:先生はどのような研究をされているのですか?

アーカイブズ学と日本近現代史です。アーカイブズ学(記録史料学)は、「日本アーカイブズ学会」が設立されたのが平成16年であることからも分かるように新しい学問です。旧来の史料学や古文書学と重なる部分も多いのですが、今この瞬間にも生み出されている現在の組織の活動を記録した文書をアーカイブズ(記録史料)として、確実かつ効率的に後世に残して行く方法を考える、これまでの日本では軽視されてきた新しい領域をも含んでいます。日本近現代史については、名古屋大学の歴史のほか、『愛知県史』などの自治体史の編さんに携わりながら、この地域の歴史も研究しています。

 

Q:この研究によって可能になることは?

いささか抽象的ですが、歴史資料を通じて、過去・現在・未来の社会をつなぐことです。残された歴史資料を適切に保存し、それを使って過去の歴史を明らかにし、さらに現在作成されようとしている記録をアーカイブズとして適切に残して、未来の人々が現在の社会について科学的に検証できるようにする。この一連のサイクルが持続的に繰り返されるシステムができてこそ、社会は確実かつ健全に文化を受け継いでいくことができるのだと思います。

 

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名古屋帝国大学の創立に際しての地元の政治家の役割の一端を示す、

澁澤元治初代総長の小山松寿衆議院議長宛て書簡

(昭和16年5月30日付、国立国会図書館憲政資料室寄託)

 

Q:研究を始めたきっかけは?

アーカイブズ学については、平成16年に大学文書資料室で勤務するようになってから始めました。同じ年に日本アーカイブズ学会が設立されるなど、日本でもアーカイブズ学が注目されつつありました。さらに、平成21年に公文書管理法、平成25年に特定秘密保護法が制定され、最近も一連の騒動が起こるなど、公文書管理とアーカイブズの問題は日本の大きな課題になっています。その中で私は、日本の基幹的総合大学のアーカイブズ機関に勤務し、それと関連して大学の公文書管理の最前線で業務をしておられる職員の方々と日常的に接する機会があります。名大の取り組みを、アーカイブズ学に照らし合わせながら学術的に考察し、学内外に幅広く発信していくには、この上ない環境にいるのではないかと思い至りました。

 

Q:研究が面白い!と思った瞬間はどんな時ですか?

新しい史実、特に、それまでの通説をくつがえす手がかりとなるような史実、あるいはこれまで謎とされてきた問題の一端に触れる史実を、史料から発見した時です。

 

Q:くじけそうになったときは?

くじけそうになってそれを克服したというより、くじけてくじけてここまで来たように思います。強いて言えば、決してやけにはならないということでしょうか。

 

Q:「ちょっと名大史」執筆の際の裏話など、今だから言えるここだけの話を聞かせてください。

取り上げるテーマは、名大史に関係があれば何でもよいわけではなく、平易な文章で説明ができて、なおかつ写真等も載せて視覚的にも楽しめるものを心がけています。決してテーマが有り余っているわけではないのです。学内外から寄せられた新しい話題や史料を、そのすぐ翌月に発行される『名大トピックス』に掲載したこともあります。どんな些細なことでもかまいませんので、名大史に関する情報なら何でも大学文書資料室にご一報ください。

 

Q:今後の目標は?意気込みも含めてお願いします。

目標とは少し違うかもしれませんが、現在設立に向けて検討が進んでいる東海国立大学機構の公文書やアーカイブズはどのように管理運用されるのか、日本初のケースなだけに、業務上の問題としてはもちろんですが、学術的にもとても関心があります。

 

氏名(ふりがな) 堀田 慎一郎(ほった しんいちろう)

所属  大学文書資料室

職名  特任助教

 

略歴・趣味

愛知県豊橋市出身。1993年名古屋大学文学部卒業、2000年名古屋大学大学院文学研究科博士課程(後期課程)修了(歴史学博士)。2004年名古屋大学大学文書資料室助手、2013年から同室特任助教。『名大トピックス』巻末の「ちょっと名大史」の著者。趣味は、長年やっているわりには強くなりませんが、将棋(藤井聡太七段ごめんなさい、同世代でもある羽生善治永世七冠の大ファン)です。

 

 

【関連情報】

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