No.56 和氣 弘明 教授
Researchers'
未来材料・システム研究所
No.7 天野 浩 教授
学生当時を振り返ると、浜松から名古屋に来て、初めて下宿して、自分で電気代やガス代を払って、自炊して、銭湯に行って、原付を買って…と初めてづくしの毎日で、一つ一つの出来事が刺激的で楽しかったことを思い出します。人生にとって、「大学生」という期間は、社会の一員として自立するために様々な経験を積むことができる珠玉の時だと思います。
窒化ガリウム(GaN)という同じ材料を今でも研究対象としています。GaNは、ただ青く光るだけではなく、トランジスタに応用すると、従来の材料と比べて非常に効率よく直流から交流に変換したり、たくさんの情報を一気に送ったり受けたりすることができることが分かっています。化石燃料を無駄使いすることなく、かつ、今よりもっと便利な社会インフラの構築を目指して研究を進めています。
高校生の時は数学が好きだったので、理学部数学科に憧れた時期もありました。しかし、受験が近づくと、現実の社会により近い学問であることや、中学生時代アマチュア無線をやっていたこともあり、進む道を工学部電気系学科へ変更しました。
4年生の時から始めた青色LEDの研究は、全てが楽しかったです。それまでも大学のカリキュラムの中で実験は行っていましたが、与えられたもの、結果が分かっているものばかりでした。それに比べ、青色LEDの研究は、全てが初めてのことばかりで新鮮でした。特に、結晶を作る装置の組み立てが楽しかったです。現在、国立研究開発法人物質・材料研究機構理事で、私の1年先輩の小出康夫さんと一緒に作ったのですが、足りない部品を他の研究室からもらったり、石英やグラファイトの加工を自分でやったり、加熱用コイルも自分たちで工夫して作ったり……と思い出すと、今でも当時に戻りたいくらいです。市販の高価な装置を使っている研究室を見学させてもらって、その良いところを自分たちの装置に取りこもうとワクワクしながら試したこともありました。作製した結晶は白く濁っており、指導教員から、「君の作る結晶はすりガラスのようだねえ」と言われていましたが、それも顕微鏡で見てみると、いろいろな形をしており、面白くてたまらなかったです。
研究室ではバランスボールに乗ることも。
引っ越したばかりの新オフィスのラウンジでくつろぐ。
どの先生の講義だったか忘れてしまったのですが、学部1年生の時の工学序論で、工学部の“工”の字の意味を語っていただいたときですね。「工学というのは一(ひと)と一(ひと)とを結ぶ学問なのだよ」と言われて初めて学問の意味に気が付いた、と感じています。高校生の時までは、勉強することの意味が理解できず、中途半端なまま過ごしていたのですが、その講義を境に勉強することがとても好きになり、世界が変わって見えるようになりました。
読みたい本、読むべき本は年齢とともに変わりますよね。当時は、ブルーバックスを良く読んでいましたが、今、勧めるとしたら、スティーブン・R・コヴィーさんの『7つの習慣』です。サバティカルで3か月間、米国のサンディア国立研究所にお邪魔したとき、受入先のHanさんから勧められた本です。忙しくて、多くのことを並行してこなさなければならないとき、何が最優先事項かを考えることから始まって、自分は何のために生きるのか、目標を実現するために普段からどのように生活しなければならないか、ということを考えるきっかけになりました。
たくさんありますが、一つ選ぶとしたら、海外に行っておけばよかったと思います。生活にゆとりがなかったので、学部、修士課程在学中は海外に行った経験がありませんでした。今、考えると、世の中には、日本とは違ういろいろな世界があることを、もっと早く知っておけばよかったと強く思います。
皆さんの未来には無限の可能性が広がっています。その可能性を掴むかどうかは、皆さんの不断の努力や挑戦する気持ち次第です。私自身も研究をする際に、人より早く、たくさんの失敗を経験することによって、他の人がやっていなかったことにたどり着けることができたと思っています。失敗が経験できる場こそ大学なのだと思います。是非、皆さんも、やりたいことにどんどん挑戦して、たくさん失敗を経験して、多くのことを学んでください。
氏名(ふりがな) 天野 浩(あまの ひろし)
所属 未来材料・システム研究所
職名 教授(未来材料・システム研究所附属未来エレクトロニクス集積研究センター長)
略歴・趣味
1988年3月名古屋大学大学院工学研究科博士課程後期課程単位修得退学、同年4月工学部助手、1992年4月名城大学理工学部講師、助教授、教授を経て、2010年4月名古屋大学大学院工学研究科教授、2015年10月より現職。趣味はジョギング。
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